POCKY(ポッキー)立体商標登録
弁理士 岡田 恭伸
みなさん、突然ですが、この写真を見て、なんだか分かりますか?

登録6951539号より引用
先日、江崎グリコ株式会社の「POCKY(ポッキー)」の形状が、日本で立体商標として登録されました。登録番号は第6951539号です。お菓子好きの私としては、これについて解説したいと思います。
まず、「立体商標」について説明します。商標というと文字やロゴを思い浮かべがちですが、商品の立体的な形状や容器の形そのものも、出所表示として機能し得る場合は、商標登録できます。
もっとも、形状は誰もが使う「ありふれたもの」になりやすく、「この形状ならこの製品!」と認識されにくいものです。そのため、実務的には、登録のハードルは非常に高いのが実情です。実際に、この商標出願も、一度は「商品の品質・役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」であるとして拒絶されています。
では、今回なぜ認められたかというと、これを見たら誰もが「ポッキー」と認識されること(「特別顕著性」といいます。)を特許庁に認めさせた点になります。この立証が非常に難しいのですが、この点について出願人は、上申書で主張しています。上申書はJ-PlatPatでも読むことができまして、私も目を通しましたが、出願人及び代理人の強い意志を感じるものであり、弁理士として非常に勉強になるものでした。
これを見たら誰もが「POCKY」と認識されることを立証する方法として、アンケートがあります。これは、冒頭で質問したように、単に上記の写真をみて「POCKY」を想起するか?というものです。アンケート結果では、なんと回答者の「91.6%」が、本願商標を目にしただけで「POCKY」を想起したとのことです。お菓子ではありませんが、シン・ゴジラの立体商標が認められたときには、同様のアンケートで64.4%ですから、非常に高いものと考えられます。上申書では、このアンケート結果を踏まえて、審査官の認定について「我が国の国民の認識と明らかに反するものと言わざるを得ない」という特許などでは見ることはないような主張が飛び交っていて、読んでいて面白かったです。
さらに、売上やシェアなども、特別顕著性を立証する材料になります。この点、単に売上やシェアなどを数字で説明するだけではなく、2020年に世界売上No.1としてギネス世界記録に認定されている点を主張して強烈なインパクトを与えているとともに、先に立体商標として登録された「たけのこの里」(第6419263号)や「きのこの山」(第6031305号)を引用しながら、「POCKY」の売上や国内シェアの凄さをアピールしています。
以上のことから、本件は登録となりました。私自身、「たけのこの里」や「きのこの山」のように特徴的な形状ではないから、厳しいのではないかと思っていましたが、上申書を読んでみると、これで特別顕著性がないとは言わせないと感じさせるすばらしいものでした。この上申書を通じて、出願人及び代理人からの「POCKYはすごいんだ!絶対に通すんだ!」という、並々ならぬ強い意志を感じました。書面に、これだけ強い意志を込めることはできるんだ、と非常に勉強になりました。私の今後の業務にも活かしていきたいと思います。