女性活躍社会|お知らせ|オンダ国際特許事務所

女性活躍社会|お知らせ|オンダ国際特許事務所

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女性活躍社会

(パテントメディア 2021年5月発行第121号より)
会長 弁理士 恩田博宣

1.はじめに

オリンピック組織委員会会長森喜朗氏が、女性蔑視ととられる不適切発言で大会会長を辞任した後、女性活躍担当大臣の橋本聖子氏が会長に就任しました。女性活躍担当大臣からオリンピック組織委員会会長への横滑り、しかも彼女は7回連続オリンピック出場の実績(スケート4回、自転車3回)を持つ元アスリートですから、まさに適任といえるでしょう。テレビのニュース番組から流れる彼女の記者会見の様子からも、政治家としてすっかり成長した姿が見られ、非常に頼もしく思えます。活躍女性の典型といえるでしょう。

安倍政権では、女性活躍社会を目標にして、多くの施策が実行されました。2019年12月、当時の女性活躍担当大臣であった橋本聖子氏は自身の講演の中で、「この6年間で女性の就業者数は約290万人増加した。民間企業の女性管理職割合も着実に伸び、上場企業における女性役員数は7年間で3.4倍となり過去最高となった」と述べています。

エコノミストの投資判断においても、その会社がどのように女性を幹部に登用しているかを材料にするケースが増えています。

しかし、国際的に比較してみると、日本では管理職や女性役員の割合が、まだ低い状態が続いているのです。2021年3月に世界経済フォーラムが発表した、「ジェンダー・ギャップ2021」では、156か国中120位というのですから、かなり遅れています。

そこで本書においては、オンダ国際特許事務所における女性活躍の一端について紹介したいと思います。

 

2.筆者の事務所における女性活躍

株式会社オンダテクノは、平成29年度岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業に認定されるとともに、今年3月、「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)」、「ぎふし共育・女性活躍企業」にも認定されました。

女性活躍社会 | コラム

現在、全従業員に占める女性の割合はちょうど50%です。技術系実務部門では男性が圧倒的に多いのですが、技術系といえども国際関係の仕事をする部署となると、語学に強い女性の割合が40%になります。
女性の多い部署は意匠商標部門で86%、図面部85%、管理部門81%です。ちなみに、技術系国内部門では女性の割合は14%と女性は少なめです。女性管理職の割合は25%を超えています。

女性の活躍をできる限り支援すべく、まず、有給休暇を取りやすいようにしています。取得日数を管理し、少なすぎるときには取得を促します。時間単位での有給休暇も可能にしています。
また、育児、介護もしやすくするために、一定の条件のもとに時差出勤、時短勤務、在宅勤務の制度を設けています。
産休・育休制度は大いに利用されています。通常、1年で復帰するケースが多いのですが、託児所が見つからないようなケース等では、それ以上長くなることもあります。なお、最近では男性従業員が育休を取るケースも出ています。
特に理系女子所員は、育休後、原則元の部署に戻りますので、子育てによってキャリアを中断されることはないといえます。さらに、ある程度スキルが上がってくれば、在宅勤務が可能になるので、子育てのみならず要介護の家族があっても勤務可能となります。

オンダ国際特許事務所では、35年間QCサークル活動(改善活動)を行っていますが、所内発表会で金賞銀賞等上位の賞を獲得するのは、圧倒的に女性のグループが多いという事実もあります。
過去3年間で活動グループは延べ255グループでした。その間、金銀銅を受賞したグループは48グループありますが、そのうち39グループが女性グループと、81%にもなります。まさに女性の活躍ここにありといえます。
さらに、過去にJHS全国QC大会で金賞を得た2つのグループはいずれも女性のグループでした。今年の全国大会にも東海地区の予選を通過して出場しますが、これも女性のグループです。

 

3.どんな女性が活躍しているか

オンダ国際特許事務所で大活躍している女性3名に登場してもらいます。

 


Mさん(意匠商標本部 意匠部 弁理士)

入所以来の仕事の変遷と、現在の仕事

入所当時は総務部(管理部門)に配属され、特許出願や中間処理の管理業務を行っていました。1年後に意匠部門に異動となり、以後、長年にわたって意匠実務に携わっています。
2019年の組織変更により、意匠部門と商標部門が統合されて意匠商標本部が発足し、以降は本部長として、商標部門も合わせての管理にも関与するようになりました。

 

現在の仕事のやりがい

この仕事のやりがいは、デザインと法律の双方に関わることができる点だと感じています。
大学では法学を専攻していましたが、子供の頃は図工や美術の授業が一番好きでした。今でも、仕事とは関係なく、美術やデザイン、建築等にとても関心があります。意匠業務は、好きなことと学んだことの双方を活かせる仕事だと思っています。
また、新製品のデザインにいち早く接することができることや、デザインを通じて時代の空気を感じられることも、意匠の仕事の醍醐味ではないかと思います。

 

入所以来、一番嬉しかったこと、一番つらかったこと

一番を決めるのは難しいですが、普段の仕事の中で嬉しいと感じるのは、意見書や審判、面接審査を担当した件が無事登録となったときや、そのことでご依頼人様に喜んでいただけたときです。
また、当所で出願した意匠の実物(製品)を見かけたり、高評価のユーザーレビューを目にした時なども嬉しくなります。
最近のことでは、昨春、コロナ禍で緊急事態宣言が出されたとき、意匠法の改正時期と重なっていたこともあって、当所としては初めて、ウェブセミナーを開催しました。毎回、多くの方にご参加いただけたことが本当に嬉しく、閉塞的な雰囲気の中で、ウェブを通じて参加者の方と繋がりを持てたことで、とても元気づけられました。
つらかった(大変だった)ことは、私的なことですが、子供が小さい頃、毎朝、子供を送り届けてから、始業時間(正確には5分前)までに出勤するのが一苦労でした。
食事を急かすとバナナを喉に詰まらせる、靴を履いてくれない、靴を履いた後にトイレに行きたがる、車から降りるのを拒んでシートの下へと逃げ込む等々。スリリングな朝のひとときでした。

 

QCサークル活動に関する思い出

特に印象に残っているのは、意匠部に配属されてから6,7年目くらいのとき、「てくてくエンジェル」というサークル名で、国内意匠出願のフローの見直しを行った活動です。
当時、意匠部には二人の新人がいました(上記のサークル名は、新人2名のイメージで名づけたものです)。すでに、意匠出願に関する事務所独自のノウハウはありましたが、先輩から後輩への口頭伝承であったため、どうしても各論的になりがちで、サービスの全容が把握しづらく、業務指導する側も、される側もスムーズとはいえない状況でした。
そこで、ノウハウやフローを「見える化」する対策を打ちました。具体的には、出願前の面談で確認すべきことをまとめた「面談シート」や、出願戦略を説明するための「出願提案書」の雛形を作成し、それらを利用して意匠出願の準備を進めるプロセスを構築しました。
このような対策により、「オンダ意匠出願管理システム」ともいえるものが確立し、部内での情報共有がスムーズになるとともに、どの出願案件においても一定以上の品質を担保できるようになりました。同時に、望ましい意匠サービスのあり方が明確になったことで、経験の多寡にかかわらず、確信をもって業務を行えるようになったと思います。
「面談シート」や「出願提案書」は、度重なる改良を加えながら、今でも受け継がれています。
結果として、当所の意匠出願件数は、事務所単位ではベスト3以内を維持しています。

 

後輩の育成、子育てとの関係 

後輩の育成は主にOJTで行っています。数年にわたって案件を一緒に担当し、書類の内容や、スケジュールの立て方、接遇等についてチェックや助言を行います。この仕事では、イレギュラーな業務が多いため、入所から5年以上たっても、複数の目で仕事の内容を確認するようにしています。育成を通じて、教える側も、常に現場感覚を持ち続けることができます。
面白いと感じるのは、どの部員も、成長する過程において、必ずといってよいほど、特定のお客様から新しいご縁をいただき、短期間で非常に多くの出願のご依頼をいただいたり、難しいご相談を受けたりします。
一時的にオーバーワーク気味になることもありますが、真摯に取り組む中で、多くのことを学び、一回りも二回りも大きく成長していると感じます。そのお客様とのご縁がなかったら、今のMさんは無かったよね?というほどで、本当に有難く思っています。
後輩の育成と子育てとの関係は、あまり意識したことがありません。子育ての経験に関係なく、面倒見の良い人や、教えるのが得意な人はいるので、むしろ参考にさせてもらうことが多いと感じています。

 

最近の活動

この数年の活動としては、弁理士会の意匠委員会を通じて、審査基準の改訂等のプロセスに関与させていただくようになりました。
これまで法律や制度とは、誰かが作ったものを遵守するものだと考えていましたが、時代の変化に対応した、新しい仕組みを作っていく活動も大切だと実感しています。
委員会内の先輩方にご指導いただきながら、現場の声を立法サイドに伝えるとともに、新しい制度の内容や、よりよい活用法などについてユーザーの方々にお伝えしていきたいと考えています。

 


Tさん(業務支援本部 本部長)

時代の変化を楽しむ

新型コロナウィルスがオンダの事務部門にもたらしたもの、それは「事務の革命」でした。オンダに入所して26年、この1年は実に衝撃的で感動的な1年でした。

東京オフィスに次いで、大阪オフィス、岐阜本社が次々と在宅勤務を導入。事務部門の在宅勤務は無理だろうと、当初、多くの人に言われました。「完全ペーパレス化」の課題が立ちはだかったのです。ところが、特許事務の聖域ともいうべき、書類のチェック、特許庁への書類提出、これらを在宅で行える環境を整えるのに多くの時間はかかりませんでした。しかも、業務効率を落とさず事務対応を行うことを早い段階で実現したのです。次々に発生するデータ処理上の課題を解決、帳票の整備、部門間やりとりの手順変更を急ピッチで行う現場の動きは実に見事でした。各部門の底力を垣間見た数週間でした。当所の事務部門の売りの一つであるQC活動(業務改善活動)で培った業務改善力で、経験したことのない環境の大変化に見事に対応したのです。この先10年かかってもできなかったかもしれないことを、たった1年で実現したわけです。

その改善スピードは、今も止まることはありません。例えば、内外事務部門は、在宅時の困りごとを分析し、1日に250通も受信するEmailの紙配布、データ転送を止めてシステム内での配布に切り替えました。入力処理、その後の他者チェック、各担当の決定及び進捗管理までを可能にしたEmail管理システムをシステム開発部と協同で開発しました。外内事務部門は、書類の送付忘れ防止の仕組みを作り、包袋による管理を一切なくしました。

急激な環境の変化を味方につけて、オンダの事務部門の改革は一層加速しています。今後も時代の変化を楽しみながら、改革スピリットが根付いたオンダ国際特許事務所ならではの強みを活かして、お客様へ着実にサービスをお届けしたいと思います。

 

女性が働きやすい職場に

知財事務は、書類の確認ミスや、たった1つの数字の入力ミスさえ決して許されない大変神経を遣う仕事です。大きなプレッシャーの中、業務支援本部のメンバーは、責任感を強くもち、業務に対してとにかく誠実に、驚異の集中力を持って取り組んでいます。そんなメンバーにとって頑張り甲斐のある組織を、働きやすい環境を作りたい、そんな信念のもと自分に何ができるかを考える毎日です。

幸い当所は、仕事内容、評価の上で男女差はなく、女性が働きやすい環境が整っています。女性管理職比率25%、有給取得率70%、育児休業からの復帰率もほぼ100%で、岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業に認定されたことからも明らかです。しかしながら、女性は人生の様々なイベントに左右されることが多く、仕事と家庭、子育てや介護との両立のため、陰ながら相当の努力をして仕事を続けている人が多いのが現実です。私自身、17年前第1子を出産し職場復帰したころは残業が多く、平日は子どもと一緒に夕ご飯を食べたり、お風呂に入れる日はほとんどありませんでした。子どもが寝静まったころにそっと帰宅し、「ごめんね」とおでこにキスをする毎日でした。その頃の自分に後悔はしていませんが、大きくなった娘に「あの頃は言えなかったけど寂しかった」と言われたときは、さすがに反省をしました。自分の経験をベースに、女性が、子育ても家事も、そして仕事も楽しめる職場にしたい、そう思い続けてきました。女性の社会進出を後押しする社会の動きもあり、また経営層の理解もあって、今、オンダは本当に働きやすい職場となりました。今後も、女性ならではの視点で、職場環境の改善に努めていきたいと思います。

 

QCサークル活動が現場にもたらしたもの

国際管理部の外内グループへ異動した2006年、今から15年前の国際管理部は、かなりの激務で、ほとんどのメンバーは退社時刻が毎日21時を過ぎる有様でした。残業規制が厳しい現在では考えられない状況です。

通常業務でそんなですから、QCサークル活動のために全員が週1回1時間を割くなど論外、業務改善活動よりも1分でも早く帰りたいというのが全員の本音でした。前部門でQCサークル活動に力を入れてきた私としては、「忙しい職場こそ改善が必要だ。大変でもやり続ければ必ず仕事を楽にできる」そんな揺るぎない信念がありましたので、率先して活動を始めました。おそらく厄介な人が異動してきたな、そう思った人が大勢いたことでしょう。反対の声も耳にしながら、とにかく片っ端から業務改善に取り組み始めてしばらくすると、21時だった退社時刻が20時になっていることに気づきました。その頃、同グループの一人が、「QCっていいものですね。だってやればやっただけ仕事が楽になるんですから」そう言ったのです。涙が滲みました。やってきたことは間違っていなかった、そう思った瞬間でした。

1テーマ取り組むたびに、100万円、200万円の改善効果が生まれ、業務が瞬く間に整理され、ミスを防ぐ対策がなされました。勢いよく効率化が進むその様は実に痛快でした。それだけではなく、QCはグループの一体感を押し上げるのに一役買ってくれました。大きなテーマに取り組むたびに、メンバー全員で何かに没頭する楽しさ、アイデア追求の面白さを感じ始めたら、もうグループの勢いを止めるものは何もありませんでした。グループには活気が溢れ、お互いを尊重し合い、社内のどのグループにも負けない団結力がありました。このメンバーなら何が起きようと乗り越えられる、そんな自信がありました。外内グループは、社内QC発表会では常に金賞、銀賞を獲得、外部の大会でも大きな賞を次々といただきました。2010年には第3回JHS全日本選抜QCサークル全国大会で見事金賞を受賞。それから1年間は、全国あちこちの企業様や大会にご招待をいただき、毎月のように全国行脚が続きました。取材も何度か受けました。何とも楽しく貴重な経験をさせていただきました。今も外内グループは、先輩から後輩へ改善スピリットが脈々と受け継がれ、所内有数の改善力のあるグループとして健在です。

 

今後の抱負

今後、益々柔軟な発想力と変化への対応力が求められることでしょう。
本部長という責任あるポストには大きなプレッシャーを感じています。自分と向き合い反省することが多い毎日です。ただ私にあるものは、「人が好き」ということでしょうか。自分の力は限りあるものでも、部内には様々な経験や能力、面白い感性を持ったメンバーがたくさんいます。その多様な力を集結させて形にしていくことが私の役割でしょう。この変化の大きい時代を駆け抜ける強靭な組織であり続けるために。10人いれば10通りの感じ方があり、同じことを伝えても捉え方に差があって戸惑うこともあります。しかし、それも組織は人間の集団だからこそ。ベクトル合わせは必要ですが、多様性こそが現場の活力であり、エネルギーの拡大につながると感じています。

部員とは、気負わず等身大の自分で向き合うこと、それぞれの得意を活かすことを大切に、今後も大いに仕事を楽しみたいと思います。

 


Nさん(企画本部 総務部)

オンダ国際特許事務所への転職

大学を卒業して、化学メーカーの営業職として約7年仕事をしました。営業職は、職種の特性上、一日の拘束時間がどうしても長くなります。結婚後も帰宅時間が夜の10時をすぎるような状態がずっと続いておりましたので、家庭との両立を考えて、現在の事務所に転職をいたしました。

その頃は、インターネットは有りませんでしたので、オンダ国際特許事務所は、ある就職雑誌で発見しました。その広告には、今の時代では考えられないことですが、応募条件に、「女性、27歳頃まで」とありました。女性であることは一応条件を満たしていたのですが、肝心の年齢についてはオーバーしておりました。そこで電話を掛け、年齢について問い合わせをしたところ、特に問題はないとの回答をいただけましたので、応募をしました。

試験ののち最終面接では、現在の秘書が結婚退職をするのでその後を引き継いで欲しい、ということでした。
「あの、秘書経験は全く無いのですが大丈夫でしょうか」と聞きますと
「秘書検定2級あたりの本を買ってきて、秘書の仕事が大体どんなもんかわかってもらえればそんでええわ」と当時の所長が岐阜弁で回答されたのをいまでも覚えています。

さらに、「僕の秘書だけでは仕事が薄くて手が空くとあかんで、採用の仕事もやってもらうとええわ」
ということで、1996年1月からオンダ国際特許事務所で所長秘書と人事採用の仕事がスタートしました。

 

採用活動での苦い思い出

募集職種は特許技術者や調査などの技術系と、国内・国際事務の事務系の2種類に大きく分かれます。当時のオンダ国際特許事務所の所員構成をみると、技術系は全員男性、事務系はほんの数名の男性とあとはすべて女性でした。

確かに、理工系を専攻する学生さんの男女比率を考えると、技術系所員に女性が誰もいなくても自然かもしれません。特許技術者の仕事は力仕事ではないのだから、一人くらい女性の技術者がいてもいいのではないかと思っておりました。また、結婚を機に退職していく女性が多いことも気になりました。

今から20数年ほど前になるでしょうか。旧帝大の大学院で物理を専攻しているという女子学生がガイダンスに来てくれました。事務所や特許技術者の説明をすると、知財業界に興味を持ってくれ、その後応募がきたのです。

ガイダンスで話をした限りですが、彼女は頭の回転が早い上に、地に足のついたしっかりした考えを持っていて、ひと目で優秀な学生であることがわかりました。

初めての女性特許技術者誕生か?とかなり期待をして選考を見守っておりましたが、なんと、最初の書類選考の段階で不採用になってしまったのです。せめて試験をやって特許技術者としての素養をみてから判断して欲しいと思いましたが、これまで女性を技術者として採用した経験がない組織にはハードルが高いことだったのだと思います。最初から採用する気がないのに、次の選考段階である試験に来てもらうわけにはいきません。今でも苦い思い出です。不採用通知を出すのに随分逡巡したことを覚えています。

その後、その女子学生はアメリカに本社を置く、大手の通信会社に採用がきまったとご連絡をいただきました。

もしあの時、採用していたら、今頃弁理士になって活躍していたかもしれないと、過去の出来事にタラレバはありませんが、毎年新卒採用の時期になると彼女のことを思い出します。そして、ガイダンスで優秀な女子学生がいるとなんとしても採用したいという気持ちが強く働き、自然に会社の説明にも力が入ります。そして努力の甲斐あって少しずつ理工系女子からの応募を貰えるようになっていきました。

その後、紆余曲折はありましたが、女性の技術者は少しずつ増えていきました。採用する側の意識も時代とともに変わってきたのだと思います。現在技術系の所員のうち、26%は女性です。

そして技術系事務系に関係なく、結婚したほどんどの女性所員が子育てと仕事を両立しながら続けています。中には育児休業中に弁理士試験を受けて合格する所員もいます。私も育児休業をとった経験がありますが、小さな子供の世話は時間的にも体力的にも本当に大変で、24時間365日休み無くお世話をしなくてはいけません。そんな中、わずかの隙間時間をこじ開けるようにして勉強を続けた所員の努力は素晴らしいと思いましたし、そのような所員とご縁ができた事は事務所にとって幸せなことだと感じました。

また、若手の女性社員は先輩たちの頑張りを側で見ていて、「自分も頑張ってみよう」と思うのです。そういった良い風土がオンダ国際特許事務所に出来上がりつつあることはとても嬉しいことです。

そして、仕事の能力や結果に男女の性差は無く、すべて本人のやる気と努力によるものであると改めて感じています。

 

インターンシップセミナーの開催へ

採用担当として毎年様々な工夫と努力を続けてきましたが、人材の確保には随分と苦労をしました。

多くの理工系の学生にとって就職先はメーカー企業だと考え、弁理士や特許技術者を最初から目指す人は大変少なくごく僅かです。優秀な学生を紹介してもらいたいと、大学の教授にお願いに行きましても、中には初めて特許事務所のことを知った、という方もいらっしゃるくらいです。

そのくらいある意味マイナーな業界に、学生に興味を持ってもらうためには、かなりの労力を注ぐ必要があります。そのため、毎年採用シーズンになるとあちこちのガイダンスに参画して業界のことを知ってもらうことから始めます。

一生懸命説明して応募してもらい、選考まで進んでも、途中で辞退されることも多く、人材確保の難しさを身にしみて感じておりました。ここはやはりインターンシップセミナーを開催し、特許技術者の仕事を実際に体験してもらわないと学生の応募意欲は高まらないと思い、開催の準備を始めることにしました。

初めてのイベントを開催するには、開催の必要性を事務所に理解してもらわなくてはなりません。インターンシップがなぜ必要か、どのような内容にすれば学生は興味をもってくれるのか、いろいろ相談を持ちかけました。

しかし、やったことのない事を始めるというのは、費用対効果が予測できずなかなか腰が重いものです。

「守秘義務があるから」「難しいよね」と言われ続けましたが、根気よく説得を続けて、「この内容なら1 DAYでできるだろう」という資料の作成と講師の協力を取り付けることができました。すでに構想から2年が経っておりました。

初めてのインターンシップセミナーの開催以来、6年経ち、今では開催が当たり前になってきました。インターンシップセミナーを受講することで、理工系出身者の活躍の場は研究開発だけでなく、知財の世界にも存在し、しかもその活躍の仕方は、主役であることを知ってもらう良い機会になっています。

また、受講することで業界理解と応募意欲が高まり、最近の採用はほとんどがインターンシップ経由です。講師や他の所員の時間を沢山使ってしまいますが、未来の人材確保のため、少々強引にでも開催して良かったと思います。

 

事務所への恩返し

人材採用の手法は時代とともに変えていかなくてはいけません。効果的に変えていくためには、自分ひとりの考えだけでは独りよがりになりがちです。そのため、最近では事務所で推進しているQCサークル活動のテーマに人材採用の課題を乗せて、改善に取り組んでいます。QCサークル活動の良いところは、所員の皆で知恵を出し合って活動を進めていけるところです。今シーズンも若手所員の定着、離職防止や仕事のミスマッチ防止をテーマに活動をしています。オンダ国際特許事務所ではQCサークル活動に力を入れていますので、QCを通すと新しい制度も比較的スタートさせやすい事が分かりました。今回の活動を通して、これまでなかった人事制度も取り入れる予定です。この制度が上手く機能し、働く所員と事務所にとって少しでも良い方向にいくことを期待しています。

入所して20数年が立ち、社会人としてすでに折り返し地点はすっかり過ぎました。これからの時間はお世話になった事務所に優秀な人材を採用することで、少しでも恩返しができればと思っています。