日本弁理士会副会長報告 -漫画『閃きの番人』と広報戦略-|お知らせ|オンダ国際特許事務所

日本弁理士会副会長報告 -漫画『閃きの番人』と広報戦略-|お知らせ|オンダ国際特許事務所

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日本弁理士会副会長報告 -漫画『閃きの番人』と広報戦略-

(パテントメディア2018年5月発行第112号掲載)
弁理士 本田 淳

東京オフィス所属の本田淳です。平成29年度、すなわち2017年4月から2018年3月までの1年任期で、日本弁理士会(以下「弁理士会」)の副会長を務めさせていただきました。
副会長は8名であり、2年任期の渡邉敬介会長の1年目を支えました。AIやEVなどの第4次産業革命が進展し、産業構造も変化する中、弁理士会は知財の活用を図る上で様々な活動に取り組んでいますのでご紹介いたします。

1.知財広め隊

弁理士会では、従来の出願業務に留まらず知財コンサルを行う弁理士知財キャラバンに2015年度から取り組んでいますが、2017年度はさらに「知財広め隊」をスタートさせました。2年間で全国100箇所での開催を目指すもので、第1回の福島セミナーを皮切りに、ほぼ毎週、全国いずれかの都道府県で「知財広め隊」セミナーが行われています。2部構成で、第1部の知財講演会と、第2部の交流会とからなり、主に中小企業の経営者に知財の活用例を認識していただくとともに、地元の弁理士との交流の機会を提供するものです。1年目の2017年度はほぼ50箇所の目標を達成し、2年目も精力的に取り組んでいます(https://www.jpaa.or.jp/chizai_hirometai/)。

2.漫画「閃き(ひらめき)の番人」

多くの方に知財を活用していただくためには、知財を知ってもらう必要があり、広報活動にも力を入れています。2016年度はテレビ番組「PATやってみた!」(https://www.jpaa.or.jp/tv/)や、ラジオ番組に取り組んできましたが、2017年度はまた異なった媒体として漫画に取り組みました。「閃きの番人」というタイトルで、弁理士・西屋ジョージと新人弁理士・桐生眞理が、クライアントからの依頼を解決していく知的エンタテイメント漫画です(https://www.jpaa.or.jp/comic/)。
専門用語に注釈がありますので、知的財産について馴染みのない方でも楽しみながら弁理士及び弁理士の業務内容を知ることができます。
第1話の「公知と先使用権」編、第2話の「非弁行為と冒認出願」編、第3話の「商標と不正競争防止法」編が弁理士会WEBに掲載されていますので、PDFをダウンロードしてお楽しみいただけます。ぜひアンケートもご協力ください。
2018年度も引き続き取り組んで、第4話以降を鋭意作成中ですので、ご期待ください。

3.短中期的広報戦略

弁理士会は単年度会計であることから、広報活動も年度ごとに異なるものになりがちでした。そこで、少なくとも5年~6年にわたって一貫した広報の軸となるべく、短中期的広報戦略を策定しました。2018年度は戦略に基づく実行の1年目となります。
短中期的広報戦略を策定するに当たっては、会員弁理士の様々な要望・期待を把握するためのインナー調査とともに、社会における知財制度及び弁理士をとりまく環境を調査するアウター調査を行いました。
その結果、一般の方々にとって知財と特許庁の結びつきは比較的強いものの、知財と弁理士の結びつきは弱いこと、また「発明」や「商標」という言葉になじみがあっても、「知財」というワードはまだまだピンとこない方も多いことが分かりました。弁理士を使って知財を活用していただくためには、弁理士の業務内容を知っていただく必要がありますが、そのためにはまず名称の認知率を上げることが肝です。そこで3つのフェーズからなる短中期的広報戦略を策定し、弁理士の名称認知率の向上から、業務内容の認知向上へ向けて段階的に取り組む戦略を立てました。
2018年度は、まず、弁理士という名称を多くの方に知っていただくために、7月1日の「弁理士の日」に特設サイトを立ち上げるとともに、9月頃にイベントを行うことを計画しています。主にWEBを使い、そして実際に人々が集まるリアルなイベントを開催することで、注目を集めるべく、効果的・効率的な広報活動に取り組みます。
2019年は弁理士制度120周年です。そして2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されますので、これらにも関連付けて盛り上げていきます。

4.AIと弁理士

AIによって各種の仕事が代替されるのではないかというのは昨今、よく話題に上がります。その中で、弁理士会も記者の方々に集まっていただいて説明会を行い、Yahoo!ニュースに取り上げられました。『「AIで弁理士が失業」に異議「そんなに単純な仕事じゃない」』(2017年11月16日)は、多くのコメントが寄せられて注目を浴びました。

5.意匠委員会の活動

さて、副会長は分担して各委員会を担当いたしますが、私は実務系委員会として意匠委員会を担当させていただきました。ハーグ条約や各国での意匠制度について実務上の調査を行うとともに、意匠の活性化に向けた検討を行っております。
活動の一端は、パテント誌の記事からもご覧いただけます。例えば、「意匠分割出願の要件緩和(7条適法出願の分割)による意匠制度活性化」2016年度意匠委員会第1部会Aグループ、パテント誌2018年1月号は、弁理士会WEBからもご覧いただけます(https://www.jpaa.or.jp/info/monthly_patent/)。

6.東海支部21年目

名古屋と岐阜で計12年間過ごしたことから、支部は弁理士会東海支部を担当させていただきました。東海支部は、愛知、岐阜、三重、静岡、長野の5県の弁理士により組織される地域組織です。2017年度は東海支部開設21年目であり、2018年1月には、知的財産セミナー2018「オリジン起業と地域を支える知的財産」を定員600名の規模で行いました。東海地域に端を発し、長い歴史を経て、今や世界的企業に成長した二つのオリジン企業に生きた事例をお話しいただきました (http://www.jpaa-tokai.jp/topics/detail_487_0_0.html)。同様の規模のセミナーは毎年、東海支部で行っておりますので次回もご期待ください。また、東海支部では地域に根ざした各種のセミナーやイベントを行っておりますのでご活用ください (http://www.jpaa-tokai.jp/index.html)。

7.東海支部室の拡充

この15年間で3倍になった東海の弁理士数の増加に対応して、東海支部室は4月から増床しています。場所は名古屋伏見の名古屋商工会議所ビル8階であることに変わりませんが、入口扉も移動して雰囲気は大きく様変わりしました。東海支部は一層精力的に活動しています。

8.支部名称の変更案

弁理士会は全国で一つの単一組織であり、他士業によく見られる連合体組織とは異なっております。具体的には、都道府県毎に弁理士会があるのではなく、「日本弁理士会」という全国組織の会が一つあります。そのため、弁理士会の地域組織は「関東支部」「東海支部」のように「○○支部」を名乗っております。しかし、他士業では市町村単位が「○○支部」となることが多いようであり、一般の方々にわかりにくい面があるようです。そこで、弁理士会も「東海会」のように地域組織の名称を変更することを検討中です。

9.最後に

他にも、特許制度運用協議委員会では、対庁協議事項について年2回、会員アンケートを行い、特許庁の関係部門と協議しています。
知財訴訟委員会では、特定侵害訴訟や審決取消訴訟の訴訟代理権に関連して、証拠収集手続や、日本におけるパテントトロールの有無、無効理由の抗弁について調査研究してきました。
また、綱紀委員会、審査委員会、紛議調停委員会といった各種の審議機関では、弁理士の品位保持につとめています。
この原稿は副会長の任期中に執筆しており、皆様のお手元に届く頃には任期満了しておりますが、皆様の事業発展に知財を活用いただきますよう、弁理士及び弁理士会をよろしくお願い申し上げます。
当所会長の恩田博宣が弁理士会の副会長を務めたのは20年前ですが、弁理士会の会員数は当時の3倍、1万1千人になっています。20年前と比べると業務範囲の拡大や細分化など知財、そして弁理士を取り巻く状況は大きく変化しておりますが、産業の発展に尽くすという基本的なことは変わらないと感じます。このような責任ある役目へと送り出してくれた職場環境に感謝いたしますとともに、準備期間を含めて1年半にわたった副会長の経験を活かして、日本そして知財の発展のために日々の業務に一層励む所存ですのでよろしくお願い申し上げます。

(了)