最近、思うこと【弁理士コラム】|パテントメディア|オンダ国際特許事務所

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最近、思うこと【弁理士コラム】

2014年5月
弁理士 濱名哲也

1.特許のありかた

出願や中間業務に追われつつ、通勤時間等に特許のありかたについて考えたりします。
インターネット等の情報通信技術の発達、検索技術の発達により技術情報の取得が容易となり、また、TPP等の法的枠組みによる市場拡大に伴う技術開発競争参加者の増大等から、特許の重要性はますます高まっていると思います。しかし、特許の藪、トロール、グローバル化による経費増大等、特許に関する様々な問題がでています。特許が産業発達の阻害要因であるとの見解さえあります。それでも、世界全体でみると特許出願件数は増大する傾向にあるようです。これは、特許制度に問題があると感じつつも、特許の必要性を認識しているからだと思います。特許制度以外に、技術を保護する有効な法的枠組みがないのもその要因でしょう。

発明の経済的価値や技術的価値または投資費用に関わらず、全ての特許は法律上平等に扱われ、その効力は同じである点が特許制度の一つの魅力でもあり、様々な問題を生じさせる点でもあろうかと思います。

多大な資本を投じて基礎技術を開発したとしても実用化には何十年もかかる場合もあり、そういった場合には、その投資が十分に回収されることなく第三者に利用されることになります。技術開発は非常に速いですが、一方で社会が要求する技術レベルも非常に高いものとなっています。新規技術は、将来、社会に受け入れられるかどうかも分かりません。基礎からの技術開発は、開発スパンが非常に長くかつリスクを伴うものですが、このような基礎技術に対する特許保護は必ずしも十分ではないような気がします。

一方、後発者であっても有効な改良特許を取得すれば、この特許は先行者に有効に作用します。特許は、使い方によっては、後発者に有利に作用する側面があります。逆にいうと、特定の技術を一企業に独占させないように作用するため、特許制度により、自由競争が促進されているともいえます。
事業を行わない者が有する特許権もその効力は同じです。米国では、トロールが大分問題となっているようです。トロールが問題であるのは通常の交渉相手ではないからです。トロールが正当な権利を主張するのは問題ではありませんが、実際はそうでもないようです。

発明者のインセンティブを高めること及び発明保護の観点から、進歩性の基準を高めた第2特許というのがあればこれらがより促進されるのではないかと思ったりします。進歩性の判断基準が問題となりそうですが。

2.FRAND

アップルとサムソンとの係争では、FRAND宣言された特許の権利行使の可否が争点の一つになっています。
地裁は、FRAND宣言を行っている場合において誠実に交渉を行うべき信義則上の義務を果たしていない場合には、その特許権の行使は権利濫用にあたると判断されています。標準化技術における特許保護のありかたに大きな影響を与えかねない事案だけに大変興味があります。

3.意匠への出願変更について

意匠がデッドコピーへの対策になることや、意匠権の存続期間が設定登録から20年であることはよく知られていますが、特許から意匠への出願変更については制度上あることは知られていても、実際あまり使われていないように思われます。私自身、中間処理においてお客様にお勧めしたことはありません。最近、所内の判例研究会の勉強で意匠への変更も権利保護には有効な手段の一つだと感じましたので、ご紹介したいと思います。

ここで紹介するのは、角度調整金具事件(意匠権侵害差止請求事件)です。この事件は、権利者が、特許の分割出願を意匠に変更して登録された登録意匠に係る意匠権に基づいて差し止め請求をしたものであり、裁判においてこの差し止めが認められています。特許出願から数年後に分割した意匠が登録されたことから、意匠権の存続期間の満了日は、特許権の存続期間の満了日よりも数年遅くなっています。

ところで、特許からの意匠変更がどの程度認められるかといった点に不安を感じられる方もいらっしゃるかと思います。意匠出願では、原則として、六面図や斜視図または断面図が必要とされます。意匠への出願変更においては、明細書及び図面から意匠出願に係る意匠が特定可能であるかという点がポイントです。意匠への出願変更においては明細書の記載事項も参酌されるため、明細書に物品の特徴の記載があれば、これを根拠に図面を記載することも可能です。例えば、「鉄鋼材から成る長尺状引抜き材を,所定の長さに切断して、形成される。」といった記載があれば、図面には一方向からみた斜視図しか記載されていなかったとしても、上記記載から金太郎あめ構造のものであることが明らかであることから他方向からみた構造も描画できることになり、意匠への出願変更が認められることになります。

従来にない外観を呈する物(部品等)であれば、本来、当初から意匠出願することが好ましいのですが、構造に特徴があれば通常は特許出願されます。しかし先行技術が見つかる場合もあります。こういった場合に、中間段階または査定時において意匠への変更も中間対応の一手段として考慮にいれるとよいのではないかと思います。登録査定のときでも、場合によっては出願分割しこれを意匠へ出願変更するのもよいでしょう。

注意すべき点として、変更に係る意匠出願を基礎とする外国出願においてこの出願が原出願から6か月以内であったとしてもパリ優先権が使えない国もあることを挙げておきます。