2023年4月から特許庁への手続き期限を過ぎても救済されやすくなります(特許は21万円必要)|お知らせ|オンダ国際特許事務所

2023年4月から特許庁への手続き期限を過ぎても救済されやすくなります(特許は21万円必要)|お知らせ|オンダ国際特許事務所

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2023年4月から特許庁への手続き期限を過ぎても救済されやすくなります(特許は21万円必要)

 
1.はじめに

特許を含む知的財産の仕事は、何かと期限に厳しく、1日でも期限を逃すと一大事という印象が強いと思います。手続上のユーザーフレンドリーを目指す特許法条約への加盟に関連して、10年ほど前から、期限を過ぎても一定のハードルをクリアすれば救済される制度が導入されてきました。

しかしながら、救済のハードルはたいへん高く、救済されるのは大地震やコロナウイルス感染のような予期できない場合に限られ、日本の救済率は諸外国に比べて低くなっていました。

そこで、この4月から、特許庁へ支払う料金(以下、「庁料金」。特許は約21万円、実意商は数万円)を支払うことによって、救済のハードルが下げられることになりました。これまで庁料金は不要でしたが、「相当な注意」をしていたことの説明はたいへん難しいものでした。4月からは、庁料金を支払うことにはなるものの「故意ではない」ことの説明へと、説明のハードルが下がることになります。

期限厳守の重要性は今後も変わりませんが、万が一、期限を過ぎてしまった場合に、救済制度を使う場面も生じると思われますので、ご紹介いたします。

 

2.救済される手続の種類

では、どんな手続が救済されやすくなるのでしょうか。

以下の表にありますように、対象手続の範囲は特許・実用新案・意匠・商標にわたっています。多くの手続があるように見える一方で、表にない手続、例えば拒絶査定不服審判の請求や、異議申立の期限など、救済されやすくなっていない手続もありますので、救済される対象手続かどうか確認が必要です。

2023年4月から特許庁への手続き期限を過ぎても救済されやすくなります(特許は21万円必要) | 知財トピックス

産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会 ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方 報告書から抜粋

 

特許に着目すると、②国内優先権、④出願審査の請求、⑤特許年金の納付(倍額納付期限後)、がなじみある手続だと思います。さらに、②国内優先権がありますので、日本を自己指定しつつ優先権を主張するPCT出願も入っていることがわかります。

 

3.救済可能な期間

救出可能な期間は優先権か、優先権以外(出願審査請求や年金徒過など)か、の2パターンに分かれます。まず、種類が多いので、優先権以外を説明します。以下の図のように、期限が過ぎたことに気づいてから、2ヶ月以内に救済手続をすることができます。ただし、期限が過ぎたことを気づかなければ、いつまでも救済可能かというと、そうではありません。期限を過ぎてから1年以内(商標は半分の6ヶ月)、という打ち切りがあります。

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期間徒過後の救済規定に係る回復要件が「正当な理由があること」から「故意によるものでないこと」に緩和されます | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)から抜粋

 

一方、優先権の場合には、優先日から1年2ヶ月以内です。すなわち、通常は国内優先権を主張する出願を、基礎となる出願から1年以内に行います。この1年を過ぎてしまっても、2ヶ月以内であれば、国内優先権を伴う出願ができることになります。ここで注意していただきたいのは、優先権の場合、上の図とは異なっており、気づかなければ1年以内という猶予はありません。優先日から1年2ヶ月以内、これだけです。例えば、優先期限を過ぎてから3ヶ月後(つまり優先日から1年3ヶ月後)に国内優先権を主張する出願をしようとしても、もはや国内優先権を主張することはできません。優先権の場合、打ち切りが1年ではなく2ヶ月といえば考えやすいでしょうか。

日本の自己指定をしつつ優先権を主張するPCT出願も、同様に優先日から1年2ヶ月以内であれば、日本での国内優先権が救済されます。

 

4.救済のための手続

期限を過ぎてしまった場合に救済してもらうためには、回復理由書という書面を提出することになります。例えば、出願審査請求の期限を過ぎていることに気づいた場合、審査請求書と共に、回復理由書を提出します。一方だけでなく、両方を提出する必要があります。

そして回復理由書には、下記の右のサンプルのように、「(1)所定の期間内に手続をすることができなかった理由」と、「手続をすることができるようになった日」と、を記載します。「(1)所定の期間内に手続をすることができなかった理由」は、簡明(数行程度)に記載することとなっています。サンプルでは、「不注意により審査請求期限を失念」したと記載されています。すなわち、「(1)所定の期間内に手続をすることができなかった理由」として、期限を過ぎた原因と経緯とが記載されています。

また、「令和○年○月○日」が、「手続をすることができるようになった日」です。通常、期限を過ぎたことに気づいた日が、「手続をすることができるようになった日」となります。

また、「(2)手続をしなかったことが故意によるものでない」ことですが、これは「表明」(自分の考え・決意などを、はっきりあらわし示すこと。例「引退を表明する」(weblio辞書))ですので、故意でなかったことの明記でよいと思われます。

さらに、出願審査の請求の場合だけですが、「(3)出願審査の請求を遅延させることを目的とするものではなかった旨」を分かるように記載することになっています。

証拠書類の提出は必須とされていませんが、疑義がある場合、特許庁から証拠書類の提出を求められる場合があることになっています。

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期間徒過後の救済規定に係る回復要件が「正当な理由があること」から「故意によるものでないこと」に緩和されます | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp) から抜粋

 

5.庁費用

期限を守る意識が薄れないよう、救済には安くない庁費用を支払うことが必要になっています。

・特許   212,100円

・実用新案 21,800円

・意匠   24,500円

・商標   86,400円

です。各法域内では、どの手続でも同じ庁費用です。特許については、権利を取り直すために必要な庁費用と同等の額が想定されています、例えば審査請求料+出願手数料+初回特許年金でしょうか。

特許の約21万円の庁料金は、決して安くはありませんので、やはり期限厳守の重要性は今後も変わることがないでしょう。

 

6.救済の判断

手続のための書類(審査請求書、国内優先権を主張する出願、など)と、回復理由書の提出後、救済されるかどうかが判断されます。簡明(数行程度)にですが記載する必要があった、「(1)所定の期間内に手続をすることができなかった理由」が適切であるか、判断されることになります。

留意していただきたいのは、期限を過ぎてしまった理由が、出願人や特許事務所等において手続をしないと判断したことであった場合、救済されないおそれがあることです。

例えば、下記の場合には、救済されないおそれがあります。

【事例1】期間徒過後の社内の方針転換

【事例2】現地代理人の支払い遅延

【事例3】権利放棄決定後の他社からの照会

【事例4】金銭的事情による経営判断

【事例5】廃業後の後継者の就任による事業再開

【事例6】共有者との調整不足による手続徒過

【事例7】納付書の不備にかかる指令に対応せず手続却下された場合

いずれも、期限を過ぎる前に、手続をしないとの判断があった。つまり、故意によって手続をせずに期限を過ぎてしまった事例、と考えられます。このような場合、救済されないことに注意が必要です。

 

7.緩和の開始

救済されやすくなるのは、期限日が令和5年3月31日以降となる手続です。例えば出願審査請求の場合、期限日が令和5年3月31日以降の出願です。期限日が4月以降の出願はわかりやすいのですが、期限日が3月31日の出願も救済されやすくなっています。3月31日が期限日の場合、期限を過ぎたのは翌日の4月1日になるからです。少々複雑ですので、気になる場合には当所までお問い合わせください。

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期間徒過後の救済規定に係る回復要件が「正当な理由があること」から「故意によるものでないこと」に緩和されます | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp) から抜粋

 

 

参考URL;

期間徒過後の救済規定に係る回復要件が「正当な理由があること」から「故意によるものでないこと」に緩和されます | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

令和5年4月1日以降に優先期間を徒過した国際出願の優先権の回復(「故意ではない」基準)について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会 ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方

・特許庁ホーム> 制度・手続> 法令・施策> 法令・基準> 法令改正の解説> 令和3年法律改正関係>特許庁令和3年法律改正(令和3年法律第42号)解説書
第1章 特許権等の権利回復の要件の変更(PDF:510KB)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/2022/document/2022-42kaisetsu/05.pdf