メタバース(仮想空間)内で使用される商標の指定商品・指定役務について|お知らせ|オンダ国際特許事務所

メタバース(仮想空間)内で使用される商標の指定商品・指定役務について|お知らせ|オンダ国際特許事務所

アクセス

メタバース(仮想空間)内で使用される商標の指定商品・指定役務について

2022年11月21日、「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議(第1回)」が開催されました。

・議事次第
 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kanmin_renkei/kaisai/dai1/gijisidai.html

・日経新聞記事

 仮想空間でも知財権保護へ法整備 政府、官民会議で検討
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA180FB0Y2A111C2000000/

議論は始まったばかりであり、商標権の効力がどの程度まで及ぶかについては未だ不透明です。しかしその一方で、メタバース内での使用を想定した(と思われる)商標の登録がすでに始まりつつあります。そこで今回は、それらの登録商標の指定商品・指定役務(以下、「指定商品等」といいます。)を例として、今後の出願に向けての検討ポイントをまとめてみようと思います。

2022年1月1日以降に設定登録された商標の内、指定商品等に「メタバース」又は「仮想」を含む商標は3139件ありました。以下は、各商標の指定商品等の一部です。

国際分類

指定商品・指定役務

第9類

メタバースコンテンツ操作用のコンピュータソフトウェア

メタバース用ゲームソフトウェア

メタバース用インターフェース

ダウンロード可能な画像(仮想空間で使用されるキャラクターのスキン、仮想空間で使用される仮想的な服・履き物・眼鏡・バッグ・リュック・軍装備品・アクセサリー・チャーム・武器迷彩・ステッカー・時計・トレーディングカード・エンブレム・スプレーを含む)

オンライン上の仮想空間で使用される仮想商品(デジタルコンテンツ)管理用の電子計算機用プログラム

現実空間のロボットを仮想空間においてシミュレートするためのコンピュータプログラム及びソフトウェア

ビデオゲーム及び娯楽用に作成された仮想環境で使用されるキャラクター・ヒーロー・軍団・部隊・武器・道具・建物・土地・乗物・被服・通貨・贈答品及び賞品の性質を持つ仮想商品に関するダウンロード可能なコンピュータソフトウェア

ダウンロード可能な仮想商品、すなわち電子ゲーム用の被服・髪形・ファッションアクセサリー及びアバター用アニメーションパッケージを特徴とするコンピュータプログラム

ダウンロード可能な仮想商品、すなわちオンライン仮想世界で使用する被服用品及びアクセサリーを特徴とするコンピュータプログラム

仮想商品、すなわち、オンライン上の仮想世界及びオンライン上で使用する飲料・食品・サプリメント・履物・被服・帽子・バッグ・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品の仮想商品を提供するためのダウンロード可能なコンピュータプログラム

第35類

 

メタバースその他のコンピュータネットワーク上の仮想空間における広告スペースの提供

仮想空間において行われる商業又は広告のための展示会・イベント・見本市・博覧会の企画・運営又は開催

仮想空間内で行われる電子商取引における商品の売買契約の媒介

仮想空間で使用するためのオンラインによるダウンロード可能な履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品の画像の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

オンライン上の仮想世界で使用される仮想商品としてのゴルフクラブ・ゴルフクラブヘッド・ゴルフクラブヘッドカバー及びバッグを含むゴルフ用品、シャツ・ジャケット・ショーツ及びパンツを含む被服、眼鏡、履物、キャップ・ハット・バイザーを含む帽子、バックパックを含むかばん類、アクセサリー、美術品、おもちゃを内容とするコンピュータソフトウェアのオンラインによる小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

仮想商品、すなわちオンラインの仮想世界で使用する仮想用品・家具・乗物・武器・工具・おもちゃ・感情表現及びジェスチャーの性質を持つアバター・キャラクター・仮想環境・仮想構造及び仮想アイテムを特徴とするダウンロード可能なコンピュータプログラムのオンラインによる小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

仮想世界においてビデオゲーム用の道具・武器・通貨・エモティコン(絵文字)・バッジ・画像・乗物・アイコン・スキンとして使用可能な電子ゲーム用プログラムの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

第36類

仮想空間内での商品の購入・役務の提供を受けるための前払い式電子仮想通貨の発行

仮想空間内における金融資産の取引に関する情報の提供

第39類

仮想現実技術を利用した仮想環境において旅行を疑似体験できる施設の提供及びこれらに関する指導・助言又は情報の提供

第41類

メタバース空間において英会話を教える技芸・スポーツ又は知識の教授

オンラインによるゲームの提供(仮想空間内で提供されるものを含む。)

仮想空間で使用するダウンロードできない仮想の履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品に関する映像データ又は画像データの提供

仮想空間内での観光体験イベントの興行の企画・運営又は開催

ダウンロードできない仮想商品、すなわち、娯楽目的で作成された仮想環境で使用するためのゴルフクラブ・ゴルフクラブヘッド・ゴルフクラブヘッドカバー及びバッグを含むゴルフ用品、シャツ・ジャケット・ショーツ・靴下・パンツ及びマスクを含む被服、眼鏡、履物、キャップ・ハット・バイザーを含む帽子、バックパックを含むあらゆる種類のバッグ、アクセサリー、美術品、おもちゃに係るオンラインによる画像及び映像の提供

仮想環境で使用するためのオンライン上のダウンロードできない仮想上の履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・かばん類・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ及びアクセサリーの提供に関する娯楽の提供

ユーザーがレクリエーション・レジャー・娯楽を目的として交流できる仮想環境における娯楽の提供

オンラインによる娯楽目的の仮想環境において使用するダウンロード不可能な仮想被服・ペット・アバター・武器の提供を内容とするオンラインゲームの提供

仮想環境においてプレーヤーが同時に交流することができるオンラインによる双方向型ゲームの提供

オンラインによる娯楽目的で制作された仮想環境で使用するダウンロード不可能なバーチャルキャラクターに係る音響・映像・静止画及び動画の提供

オンライン上の仮想世界及びオンライン上で使用する履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品を内容とする画像のオンラインによる提供(ダウンロードできないものに限る。)

第42類

仮想空間内での美容又は理容用コンピュータソフトウェアの提供

・登録分類は第9,35,36,39,41,42類に集中しています。特に第9類(ダウンロード可能なプログラム)と、第41類(ダウンロードできないプログラム)を指定する商標が多く見られました。例えばアバターが装着する服やカバン等の場合、そのデータが「購入してダウンロードする」ものであるなら第9類で保護、「サブスクリプションとして期間限定で使用するもの」であるなら第41類で保護、と考えると良いでしょう。

  • 「仮想」を含む指定商品等については、主に「仮想空間」「仮想世界」「仮想環境」の文言が用いられています。ただ、「仮想環境」とは、本来「仮想マシンを動かすコンピューターが物理的に備えている機能や周辺機器とは関係のない、仮想化したマシンに設定されている仕様のこと(「ASCII.jpデジタル用語辞典」より引用)」を意味するものです。上記の記載例の中には、本来の意味と異なる意味で使用している例が見られますので、「インターネット上に構築された奥行きと広がりのある場所」を意図する場合は、「メタバース」或いは「仮想空間」を用いた方が疑義が生じにくいと思われます。
  • 「仮想商品」については、その後に「すわなち」「として」などの言葉を添えて、内容を明確にしています。現時点では、仮想商品同士の類似関係が定かではないため、出願に際してはなるべく具体的に記載しておくのが良いでしょう。

メタバース内で使用される商標がどのように保護されるか、未だ定かではありませんが、商標出願の際は、なるべく広めに指定商品・指定役務を選択されることをお勧めします。

たとえば、現実世界の「靴」は、分類上、「第25類:履物」に属します。しかし、現行制度下では、「靴」と「靴を内容とする画像データ」とは商品類似であるため、原則として、「第25類:履物」についての商標権の効力は、「靴を内容とする画像データ」には及びません。そのため、メタバース内での使用に備えるなら、「第25類:履物」の他に、「第9類:メタバース内で使用する仮想の靴を内容としたダウンロード可能な画像データ」と、「第41類:メタバース内で使用する仮想の靴を内容とした画像データ(ダウンロードできないものに限る。)」についても登録を図ると良いでしょう。