AIとの付き合い方|お知らせ|オンダ国際特許事務所

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AIとの付き合い方

(パテントメディア2017年1月発行第108号掲載)
弁理士 藤井稔也

近頃、人工知能(AI)という言葉をよく耳にします。現在のAIブームは、3度目のブームで第一次ブームだった1957年から数えると、半世紀以上経過していることになります(第二次ブームは1980年代)。第三次ブームでは、特にディープラーニングに注目が集まっています。ディープラーニングの画期的なところは、学習データからマシン側が自動的に特徴を抽出し学んでくれる点にあるそうです。

このように素晴らしい発展を遂げるAI、当然のごとく、知財の業界でもAIの利用が検討され始めています。本年度、特許庁は「人工知能技術を活用した特許行政事務の高度化・効率化実証的研究事業」を行うことを発表しています (https://www.jpo.go.jp/koubo/koubo/pdf/jinkou_chinou/01.pdf)。ここでは、AIが発明内容を理解し、先行技術を調べ、最終的に特許性を認めるかなどを判断できるかを検討することになっています。また、株式会社FRONTEOからはAIを駆使した人工知能による特許調査・分析システム「Lit i View PATENT EXPLORER」が既にリリースされております(http://www.kibit-platform.com/products/patent-explorer/)。

この先、知財の業界で、AIはどのように利用されていくのでしょう。特許事務所の業務に関連するところでは、特許調査分析システムの他に、明細書作成システムに応用されていくことが容易に予想できます。

「特許情報処理:言語処理的アプローチ(コロナ社、2012年12月28日初版第1刷発行)に特許書類の生成処理ついて説明があります。ここで紹介されている特許書類の生成処理で作成される特許明細書は、我々が日常作成する明細書と比較してまだまだのものですが、AIを利用した明細書作成システムにおいて、我々が日常作成する明細書に近い品質の明細書を作成できるようにすることを目指すことは明らかです。AIは日本のみならず世界中の特許文献やインターネットの情報を学習し、その結果、明細書作成システムに入力された発明提案書に記載された発明のAI明細書は、変形例などが多く挙げられた発明の外延が明確なものとなっていくのかもしれません。AI明細書が日本語などで不完全の部分を多く有しながらも、特許文献やインターネットによる学習の結果、多くの変形例が挙げられたものとなったときには、知財に携わる我々も、変形例の充実したAI明細書を上手く利用し、より良い明細書を作成していきたいものです。

昨今、AIのコンピュータに囲碁や将棋の名人が負けたことが話題になっていますが、これは、AIを強化学習させた結果、コンピュータが予想以上に上手く機能したためであり、相手はあくまで人間が利用する道具、コンピュータです。AIに負けた、AIに職を奪われるなどと悲観するのではなく、これからは、AIが得意とするところはAIに任せ、我々は、より良い仕事や生活をするため、道具としてのAIを上手く利用できるように、AIの利用方法、付き合い方などを勉強していく必要があるのでしょう。

(平成28年10月31日 記)