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知的財産トピックス

平成18年度特許法改正 出願分割、手続補正(シフト補正の禁止)について

2007.1

1.平成18年度法改正前から、例えば、請求項1に係る発明が新規性がない、あるいは公知技術の単なる組合せで特別な技術的特徴(ここで、「特別な技術的特徴」とは、「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴、(以下「STF」*注1 といいます。)」がない場合は、請求項2以降をくくる共通のSTFがないため、これらの請求項は発明の単一性(特許法第37条)違反として審査対象とされることなく、拒絶理由が通知されるような運用がなされています。

このような拒絶理由を受けた場合、これまでであれば、請求項1に新たなSTFとなる事項を付加する補正をすれば、請求項1に従属する請求項は、ほぼ自動的に発明の単一性を備え、審査の対象になり拒絶理由を解消することも可能でした。

しかし、このたびの改正法により平成19年4月1日以降の出願から、いわゆるシフト補正が禁止されます。この「シフト補正禁止」とは、「拒絶理由通知を受けた後は、審査の対象を技術的特徴の異なる別発明に変更するような補正を禁止する。(特許法第17条の2第4項等)*注2」ことをいいます。このことは新たなSTFを請求項に追加できないということになりますので、上述のようなSTFとなる事項が存在しない場合、もしクレームドラフティングが不適切なときには、これまでと異なりもはや補正では対応することができなくなる場合があります。この場合は出願分割で対応することになります。出願分割をすれば、その請求項は審査対象になりますが、当然新たにもう一件出願することになりますので出願の印紙代、出願費用、それに出願審査請求料が新たに必要になります。

上記の例は、代表的なケースですが、一方で、法改正に応じて審査基準などの特許庁の運用も大きく変わります。お客様の利益を最大限にするには、この運用を正しく理解して最も適切な明細書を作成し、ケースに応じた最適の対応をすることが重要です。
そこで、オンダ国際特許事務所は、このシフト補正禁止等の特許法改正に対して以下のような対策を提案します。

*注1 Special Technical Feature、発明の単一性をくくる特別な技術的特徴
*注2 特許庁改正法説明会より

2.オンダ国際特許事務所の対応

(1)STFを意識した発明の把握

(1)シフト補正対策は、まずは、正確な発明の単一性(特許法第37条)の理解から始まります。そして正確なSTFの把握が重要です。
そのためには、従来技術の正確な把握が重要で、十分な先行技術調査を行うことが必要です。この調査は開発段階で発明者の手で精査されることがもっとも望ましいのですが、時間的・人的余裕がないお客さまに対しては、ご依頼いただければ、有料とはなりますがお客さまに代わってSTFとして設定した技術的事項がSTFたりうるか否かの先行技術調査を行います。
なお、当所は多数のベテランの特許調査担当者が在籍する専門の調査部門(情報サービス部)がございますので、お客さまのあらゆるご要望に応じた調査が可能です。どうぞお気軽にご相談下さい。

(2)基本的には、一出願に含まれる発明は、発明の単一性を満たす範囲でなければなりません。従来のように、複数の発明を含めても審査されることはありません。そのためには、当所では、請求項に含まれるSTFを、積極的かつ具体的に意識してクレームドラフティングをします。

(3)発明のポイントは、出願したい発明が、権利行使をしたい発明、社内実施をする発明、権利化するかどうかを見極めたい発明、防衛的に開示すればよい発明のいずれなのかその目的によっても変わります。そのため、当所ではお客さまと、意思疎通を密とするインタビューを通じてSTFを意識しつつ発明のポイントを確認していきます。

(2)適切なアドバイス

(1)当所は、発明のご提案時に、発明届等に記載された先行技術を基にして発明の単一性について検討し、一出願が可能かどうか、あるいは、あらかじめ複数出願が必要か、出願時あるいは将来起こりうるメリット及びデメリットなどについてアドバイスします。

(2)当所では、出願審査請求前のタイミングでご相談頂けば、手続自体は有料にはなりますが、その発明の意義(自社実施技術の権利化か、他社実施の対策か、単なる防衛出願かなど)を考慮して、必要な先行技術調査、請求項の補正、予め行う分割出願についてお客さまの意思を確認しつつ、検討しアドバイスをします。

(3)明細書の具体的記載

(1)具体的には、これまでどおり第1クレームを広くして出願公開時の牽制効果を狙うこともできますが(いわゆるチャレンジクレーム)、審査時には拒絶理由を検討しながらSTFとなる事項が存在するようにクレームを絞り込む補正が必要になります。もちろん最初から絞り込みすぎたクレームは大きな発明の概念であっても権利範囲を小さくしてしまいます。このため、当所ではそのようなお客さまのご要望を考慮しながら適正な権利範囲のクレームにします。

(2)発明の単一性の判断基準は、従来よりむしろ緩和されています。(審査基準第2章4.2〜4.3)具体的には、特許請求の範囲の最初に記載された発明がSTFを有しない場合でも、直列的な従属クレーム(*注3)に関しては、順次STFが発見されるまで審査をします。一旦審査がされれば、審査されたすべての請求項がシフト補正の基準範囲になります。
そこで、当所では、権利化したい発明が適正に審査を受けられるようにクレームドラフティングにおいて請求項1に対して 直列的な従属クレームを特許請求の範囲に必要に応じて多段階に展開します。

*注3 「直列的な従属系列」とは、それぞれ前の請求項の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの一連の請求項(通常は引用形式)をいいます。例えば、請求項1「超電導コイルを冷媒に浸漬して冷却する超電導コイルの冷却方法」の「冷媒」に対して、請求項2では「前記冷媒は液体ヘリウムである請求項1に記載の超電導コイルの冷却方法」、請求項3が「さらに冷凍機を用いて超電導コイルを冷却する請求項2記載の超電導コイルの冷却方法」、そして請求項4は「銅板を介して冷凍機の冷却ステージと超電導コイルを熱的に接続した請求項3記載の超電導コイルと冷却方法」のように、それぞれ前の請求項の発明特定事項をすべて含み、カテゴリーが同一の関係が直列的な従属系列に該当します。(特許庁説明会、審査基準4.3 例1参照)

(3)さらに、当所では、分岐する(*注4)可能性のあるクレームの記載を上記特許庁の発明の単一性の審査の手法を鑑み、重要な発明は最初の直列的従属系列となるように若い番号の請求項に記載します。

*注4 「分岐する」とは、以下のような関係をいいます。例えば上記の例で、請求項5に「冷凍機の冷却ステージに超電導コイルを直接接触させた請求項3記載の超電導コイルの冷却方法」が記載されているとき、請求項1−2−3−4と、請求項1−2−3−5とは、それぞれ前の請求項の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの一群の請求項ですので直列的な従属関係です。しかし、請求項1〜3までは共通していますが、請求項4を含む系列と請求項5を含む系列に分かれています。このような関係を「分岐する」といいます。このような「分岐する」従属系列を含むときでも請求項1〜3までにSTFが発見されれば全体として発明の単一性はあるものとされます。しかしながら、もし審査の過程で請求項1〜請求項3のいずれにもSTFがないとされた場合に、請求項4と請求項5は、共通するSTFが存在しないため発明の単一性がなくなります。(特許庁説明会、同審査基準参照)このケースでは、請求項4の「銅板を介する」発明と、請求項5の「直接接触」させる発明とにおいて、請求項4の「銅板を介する」発明のみが最初の直列的従属系列として新規性・進歩性の審査がなされ、請求項5の「直接接触」させる発明は発明の単一性がないとして37条違反の拒絶理由が発せられます。この場合請求項5に係る発明は、出願分割しなければ審査されることはありません。
ここでは「直接接触」させる発明と「銅板を介する」発明とは、排他的な条件(構成)ですので、一方を他方に従属させることはできません。もし「直接接触」させる発明の方が「銅板を介する」発明と比べてより重要な発明の場合、請求項4と5を逆に入れ替えれば、「直接接触」させる発明の方が最初の直列的従属系列になり新規性・進歩性の審査がなされることになります。
当所では、このような発明の重要性の序列をインタビューを通じて確認し、それを明細書作成に反映させていきます。

(4)なお、当所では、これまでも新規事項追加の対策や権利範囲の明確化のためなどに明細書作成において「付記クレーム*注5」「別例*注6」「実施形態の効果の箇条書き*注7」などを積極的に記載して参りました。改正後は、さらに分割出願に円滑に対応すべく、構成のみならず、課題、目的、作用・効果についても必要に応じて記載していきます。

*注5 「付記クレーム」とは、当所独自の明細書作成ポリシーの一つで、特許請求の範囲には記載しないが、発明の詳細な説明に記載するクレーム形式の記述をいいます。この記載により出願時の費用を削減するとともに、審査時には新規事項追加を意識せずにクレームの補正を行うことができます。特に、実施形態より広い中間的な概念を抽出した付記クレームを記載しておくことにより、拒絶理由を通知された場合でも実施形態そのものの狭い権利範囲となることを防ぎます。また、そのまま分割出願のクレームとすることもできます。
*注6 「別例」も当所独自の明細書作成ポリシーの一つで、クレームの文言の隙間を埋めて権利範囲を明確にするとともに、この別例も、この記載を根拠に新規事項追加を意識せずに、クレームの補正を行うことができます。
*注7 「実施形態の効果の箇条書き」も当所独自の明細書作成ポリシーの一つで、請求項のみならず発明の詳細な説明に開示された概念の効果も明示するもので、補正や分割時に新たな請求項の効果の根拠とするものです。

(5)さらに付記クレームとして、拒絶理由通知に対応するため、請求項を補完するようなシフト補正とはならない内的付加による直列的な従属項となるべき技術的事項を付加的に記載します。

(6)そして、分割するにしろ、補正をするにしろ明細書の実施形態の記載が重要なのはもちろんですが、これからは分割出願のケースが増えてくるものと考え、当所ではこれまで以上に実施形態の記載を充実させます。具体的には、分割出願に備え、中間概念、技術的な要素ごとにも必要な課題、目的、作用・効果を記載します。

(4)その他

■分割出願に際しては、適切な時機(特許法第44条第1項各号)に行うとともに特許法第50条の2の規定基づく拒絶理由通知*注8を受けないように親出願等の拒絶理由を十分考慮するとともに、最も広い権利となるようなクレームドラフティングをします。

*注8 「特許法第50条の2」は、分割出願において最初の拒絶理由でありながら、親出願等の拒絶理由を引用して最後の拒絶理由と同様の限定的減縮の補正に制限する規定です。

■前提として、特許法第37条の規定を正しく理解することが必須です。当所では、過去の膨大な審査経験を基に特許庁における法第37条の取扱いを分析して、これを事務所共通の知識として明細書作成に活かします。この知識は随時所内勉強会で全担当者と共有し担当者のレベルを高めていきます。

■なお、これらの対策は特許庁での審査が実際に始まったら(通常は早くても再来年以降)、その運用の内容を早期に察知し、当所の対策に反映させていきたいと考えています。

以上

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