ECサイトで商品を販売する際の「商標的」注意点|トピックス|オンダ国際特許事務所

ECサイトで商品を販売する際の「商標的」注意点|トピックス|オンダ国際特許事務所

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ECサイトで商品を販売する際の「商標的」注意点

EC市場は拡大の一途をたどっています。株式会社野村総合研究所の報告書「ITナビゲーター2020年版」によれば、国内のBtoC系EC市場規模は、2020年の時点で20.8兆円とされていますが、2025年には27.8兆円にまで達すると予測されています。すでに多くの事業者がAmazon,楽天,Yahoo!ショッピング,ZOZOTOWNなどのECサイトを通じて商品を販売していますが、「商標」の観点で注意すべき事がいくつかあります。

 

①正しい商品分野で商標登録を受けているか

商標権者は、指定商品について登録商標を使用する権利を有します。たとえば、「第25類:被服」を指定商品とする登録商標の場合、商標権者は、以下の商品について、独占的に商標を使用することができます。

「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,キャミソール,タンクトップ,ティーシャツ,和服,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温サポーター,マフラー,耳覆い,ナイトキャップ,帽子」

言い換えると、商標権者は、上記以外の商品については、登録商標を使用する権利を有していません。つまり、「スニーカー,パンプス,サンダル」や「ベルト」「カバン,ポーチ」「時計」「サングラス」「ハンカチ,タオル」など、「被服」に属さない商品については、独占的に商標を使用することができません。それどころか、それらの商品分野においてすでに他人の商標権が存在する場合には、商標権侵害の問題が発生するおそれさえあります。

ブランドの立ち上げ当初は「正しい商品分野」で商標登録を受けていたとしても、ブランドが成長しラインナップが広がった場合には、従来の商標権だけではカバーしきれなくなることが起こり得ます。ラインナップを増やす際には、必ず保有商標の指定商品をチェックし、不足があれば早めに商標登録出願を行って、モレが生じないようケアする必要があります。

 

②自社製品だけでなく、他社製品もカバーしているか

ECサイト内のショップの名称自体がブランドとなっている場合の注意点です。たとえば、ショップで取り扱う製品の内、「洋服,コート,セーター類」は自社製品、「スニーカー」「ベルト」「カバン」は他社製品であったとします。この場合、自社製品の「洋服,コート,セーター類」のみを指定商品として商標登録を受ければ良いと思いがちですが、同じ看板(=商標)の下で「スニーカー」「ベルト」「カバン」を販売するのであれば、たとえそれが他社製品であったとしても、指定商品に含める必要があります(商品ライフサイクルの都合で全てを網羅することが適当ではない場合は、特に重要度の高い商品に絞っても良いです。)。

 

③日本国内の商標登録だけで大丈夫か

実店舗の場合と異なり、ECサイトを通じて商品を販売する場合は、世界中の消費者にその商品の存在が知られることとなります。これはECサイトを利用する大きなメリットの一つです。しかし、日本の商標権の効力は、外国には及びません。そのため、自社のブランドが、いつの間にか、外国で何者かによって商標登録されていた、という事態が起こり得ます。

また、「先に使っていたのは自分なので、後で取り返せば良い。」と思われることがあるかもしれません。しかし、現実の問題として、そのような理由で取り返すことは極めて困難(ほぼ不可能)です。仮にそのような事情で無効審判を請求するとしても、手続きのために大変多くの費用を要します。商標出願は原則として「早い者勝ち」であるため、今後のビジネス展開が予想される国や地域においては、早めに商標登録出願を行うことが必要です。

 

④侵害警告を受けた際、販売を中止すれば済むとは限らない

ECサイトでは、商品の掲載・非公開を簡単に行うことができるため、商標権侵害の警告を受けた場合にも、「販売を中止してお詫びをすれば済むのではないか」という程度に気楽に考えられがちです。それで済むケースもあるかもしれませんが、本来、商標権者は、商標権侵害を行う者に対して、「差止請求」「損害賠償請求」「不当利得返還請求」「信用回復措置請求」「刑事責任の追及」を行うことが可能です。裁判には至らなかったとしても、警告事件への対応には数十万円を要するのが一般的です。くれぐれもご注意下さい。

 

上記の注意点は、必ずしも、ECサイトで商品を販売する場合に限ったものではありません。しかし、新たに実店舗を構えて対面販売を行う場合に比べ、ECサイトでは圧倒的低コストで商品を販売することができるため、その手軽さ・気軽さも相まって、権利取得や侵害回避に対する認識・注意が甘くなりがちです。以上、ご参考となれば幸いです。