自社の商標が販売代理店によって商標登録されている場合の問題点|お知らせ|オンダ国際特許事務所

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自社の商標が販売代理店によって商標登録されている場合の問題点

本来、商標を使用する者は、自らの名義で商標を登録する必要があります。また、商品の販売を代理店に任せる場合は、なおさら、自ら商標権を取得し、代理店が安全に商標を使用できるよう環境を整えることが望ましいといえます。しかし、中には、商品の製造元が商標登録を行うよりも先に、製造元とは資本関係を有しない販売代理店が、自らの名義で、仕入れ商品の商標を登録しているケースがあります。
このような場合、将来的に、以下の問題が懸念されます。

①両者の関係が悪化した場合、商標権が販売代理店側に残ってしまう

→関係悪化に伴い代理店契約が解除されたとしても、契約書において特段の取り決めがない限り、販売代理店が取得した商標権は依然として販売代理店のものです。このような状況で商品の製造元が販売代理店の登録商標と同一又は類似する商標を使用しますと、製造元は、販売代理店の有する商標権を侵害することになってしまいます。

②製造元の新たな商標出願が、販売代理店の登録商標によって拒絶されてしまう

→審査上、製造元と販売代理店は全くの「他人」です。そのため、製造元が新たな商標を出願しても、その商標が販売代理店の登録商標と同一又は類似する場合は登録を受けることができません(※コンセント制度を導入している国では、同意書を提出することで登録を認められることがあります)。

③商標権侵害の問題が発生した際、販売代理店に対応を委ねざるを得ない

→迅速に侵害事件を解決したいと思っても、製造元は商標権者ではないため、直接的に介入することができません。侵害事件は販売代理店にとっても決して他人事ではないため、放置されることはないかもしれませんが、その社内体制によっては、対応が遅れがちになることもあり得ます。

④販売代理店の商標管理体制に不備があった場合、商標権を失ってしまう

→期限徒過により更新が間に合わなかった場合や、特許庁からの重要な通知(不使用取消審判や無効審判が請求された旨の通知等)に気付かなかった場合など、販売代理店側の管理不備が原因で商標権を失うことがあります。権利を喪失した後、再出願することは可能ですが、同一又は類似する商標がすでに出願・登録されていた場合には登録を受けることができません。

⑤販売代理店から製造元へ商標権を移転する際、多くのコストが発生する

→販売代理店が製造元の要請に応じて商標権を移転するとなった場合、権利移転に関する費用だけでなく、権利の取得および維持にかかった費用の負担を求められることが通例です。また、販売代理店が弁理士や弁護士に手続きを依頼していた場合は、その手数料相当分についても負担を求められる可能性が十分考えられます。

このように、製造元で登録すべき商標が販売代理店によって登録されることは、通常は望ましくありません。
販売代理店との契約内容によっては例外もありますが、原則的には製造元が商標登録を行い、必要に応じてライセンスを設定することが望ましいと考えます。また、既にこのような状況にある場合は、できるだけ早く、商標権を販売代理店から製造元へ移転するよう、交渉を開始されることをお勧めします。