企業訪問形式による知財教育研修プログラムのご紹介|パテントメディア|オンダ国際特許事務所

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企業訪問形式による知財教育研修プログラムのご紹介

2017年1月
営業企画部 部長 佐藤 隆

オンダ国際特許事務所(以下、オンダと略称)では年間約5テーマの無料セミナーを開催すると共に、20の標準プログラムからなる知財教育研修プログラムも個別提供しております。

この知財教育研修プログラムは、産業財産権全般の基礎から内国及び外国の特許・意匠・商標制度のほか、特許調査やパテントマップ・発明発掘・アイデア創出・ネーミングなど多岐に亘っております。いずれのプログラムも標準のテキストをご用意しておりますが、多くの場合はご依頼時期の話題事件やトピックを反映して内容や事例をカスタマイズいたします。

一昨年は、応用美術について著作物性を認めた事件(小誌No.104号の弁理士コラム参照)や、体脂肪計の意匠についての高額な賠償を認めた判決(最終的には和解)、極めつけは東京オリンピックの建物やエンブレムの問題など、デザインにまつわる事件が続きました。

良くも悪くも、デザインと知的財産権との関係について大いに関心の高まった年でした。その影響もあって、昨年はデザイン全般の保護についてのセミナーや商標に関するセミナーのご依頼を多数いただきました。本稿では、これらのセミナーのプログラム概要を、私見・雑感を交えてご紹介いたします。

1.デザイン保護セミナー

当所では、元々の標準プログラムにおいて、意匠法・商標法の基礎や戦略のほかに周辺法である著作権法・不正競争防止法の基礎を個別に解説するプログラムを用意しておりますが、デザイン全般への関心の高まりを受けて、これらの法域を横断的・総合的に紹介・解説するプログラムを追加作成しました。
これがデザイン保護セミナーです。

このセミナーでは、冒頭で企業活動と知的財産権との関係を簡単に解説し、知的財産権が『自社ビジネスを有利に展開するための矛となり、守るための盾になる』重要な資産であることを解説いたします。

次に知的財産権の種類・大枠を解説いたします。この解説に当たっては、ご依頼頂く会社様の各種名称(社名・略称・マークなど)や製品・デザインなどの具体的事例に基づいて各種知的財産権との関係を判り易く解説し、加えて多重的・多面的な保護の方法をご提案いたします。場合によっては、ご依頼頂く会社様とそのコンペチタとの権利取得状況の比較分析や対抗戦略のご提案なども行います。

次にその時々の話題の事件を採り上げて、知的財産権の総合的な活用の必要性をご説明いたします。昨年は、このプログラムのきっかけとなった3つの事件を解説いたしました。

ⅰ)例えば、東京オリピンックにまつわる事件では、競技場のデザインに関しては建築の著作物について、また問題となった初期のエンブレムについては著作権と商標について両者の関係・相違・注意点などを解説いたしました。例えば、近年はWebサイトを通じて様々な情報(デザイン)を入手することが可能ですが、Web上にある情報(デザイン)は、その真の所有者が定かでない場合が多いことから、安易な流用は自社を危機に陥れかねないとして注意喚起を促しました。

なお、この初期のエンブレムのデザインについては、種々の事情が考慮されて最終的には採用が見送られましたが、我々に著作権と商標権の交錯領域について多くの教訓を与えてくれました。

私見ですが、私はこの事件の始まった頃には、著作権を主張する劇場側と商標権のみを主張する大会組織委員会側との議論が噛み合っていないように感じました。こちらも独自創作で著作権侵害とはならないと、突っぱねればよいことの様に思います。しかし、後に冷静に考えてみると、この時の組織員会の対応は、国家レベルでの戦略的な対応であったように思います。著作権の対象や広狭は国によって判断が異なります。国を跨ぐ問題となりかねない本件において、こちらが確実に主張でき相手方の対応が不足している商標権問題のみを主張したのだと思うようになりました。相手方の土俵には乗らないという、戦いの基本を貫いたのかもしれません。

ⅱ)次に、体組成計の意匠にまつわる事件では、デザイン開発における調査や部分意匠・関連意匠を含む出願戦略の重要性を説明しました。また、市場の特殊性(本件の場合は原告・被告による寡占状態)によっては、高額な賠償リスクがあることも解説しました。

ⅲ)子供用椅子にまつわる事件については、応用美術と著作権・不正競争防止法・意匠権との関係について言及しました。諸外国での応用美術の著作物性の判断の相違や保護の困難さに加え、不正競争防止法における形態類似の範囲・限界についても触れました。
別紙1に示すように、この子供用椅子に関しては二つの事件が存在します。第一事件では、欧州では認められていた著作物性が我が国では否定されていました。そして、今回の第二事件の控訴審判決では、著作物性は認められたものの、特徴的形態が異なるとして著作権侵害は認められませんでした。
また、不正競争防止法(2条1項1号)に基づく請求については、第一・第二事件の何れも原告製品は特徴的形態を有するとして周知性・商品等表示性を認めましたが、第一事件の被告製品は類似すると認められたものの、第二事件の被告製品(6点)については類似とは認められませんでした。

この判決時には、『このような応用美術について著作権が認められるのであれば、あえて意匠登録せずとも保護期間の長い著作権での保護を考えれば充分ではないか』との意見が出たことがありました。

確かに、国によっては著作権の保護対象や保護範囲が広い場合もあることを考えると、そのような国においては著作権による保護を視野においても良いかとは思いますが、やはり著作権だけに頼るのには疑問があります。

なぜなら、そもそも著作物の対象・著作物性の認定が国によって異なる(現に上記事件でも争点となった)ことから、全てのデザイン創作が著作権で保護し得る訳ではないからです。

また、別紙2に示すように、相対的独占権である著作権において、疑義著作物が著作権侵害と言えるためには、先行著作に依拠すること(アクセスと結果の同一性)が要件となり、独自創作には権利が及ばないからです。また、上記事件のように、著作物によっては、その類似性の範囲が狭い場合もあります。上記事件において、もし原告(控訴人)製品について、意匠登録がなされていたら、第一及び第二事件の被告(被控訴人)製品の何れも意匠の範囲に属すると判断されたであろうと考えるのは、私だけではないと思います。

不正競争防止法による保護もまた、2条1項3号(いわゆるデッドコピー)の適用にあたっては、やはり先行の商品形態を模倣すること(アクセスと結果の同一性)が要件となって独自創作には及ばないし、加えて保護期間も最初に販売を開始した日から3年に限られ、保護期間が短いという問題点もあります。

さらに、不正競争防止法の2条1項1号或いは2号の適用にあたっては、商品等表示性が認められるためには、当該商品の周知性・著名性という決して低くはないハードルがあります。

以上を考えると、やはりデザインの保護においては、まずは絶対的独占権である意匠権による保護を考えることが正解であると考えます。特に、諸外国に比べ意匠の保護対象・保護範囲が広い我が国においては、なおさらと言えるでしょう。

なお、著作権・不正競争防止法による保護が無用であると言っているのではありません。当該デザインが著作物性を有しているのであれば著作権による保護を享受できるように、さらには不正競争防止法2条1項各号の主張ができるように、当該デザインの創作や公表(デザイン製品の販売を含む)記録を整えておくと良いと思います。

さらに、不正競争防止法2条1項1号、2号の適用については、当該デザインについて周知性・著名性が獲得できるような状況となるように、広告宣伝や営業努力をするなどの積極的戦略も考えられます。

ⅳ)少し古い事件になりますが、かつてアップル社のiMacについての不正競争防止法に基づく仮処分請求事件がありました。この事件では、債務者(ソーテック)製品は債権者(アップル)製品と商品等表示として類似するとして仮処分が認められましたが、後に両者の意匠は互いに非類似として登録されました。意匠の類似範囲より、不正競争防止法における商品等類似の範囲の方が広く認定されたのです。この事件では、iMacの意匠のデザインの独創性やテレビ広告のインパクトによって、商品等表示の類似範囲が広く認められたのかもしれません。
なお、この事件では、仮処分申請から約4週間で決定が下されるという異例の早さでした。その理由は判決における裁判所の付言をお読みいただくとして、デザインに関わる者に対し「クリーンなデザイン開発と事業実施前の各種権利についての総合的な検討・判断資料準備の必要性」を示唆するものとして意義深いものでした。
以上を総合的に考えると、意匠権・著作権・不正競争防止法の何れかだけに頼ることなく、総合的に活用することが重要であることがお判りいただけると思います。

ⅴ)なお、セミナーの本論部分は、ご依頼人の事業内容やご希望に合わせて、意匠権と商標権の双方若しくは何れかにウェイトを置いて解説します。
この場合も参加者に身近な問題として捉えていただけるように、必ずご依頼いただく会社様の出願状況や登録事例にカスタマイズして、さらにはコンペチタの事例や戦略を分析して、ご紹介します。時には自社の警告・被警告事件や訴訟事例などを紹介することで、知財部のみならず各事業部の参加者全員に危機意識を共有していただくようにしています。
意匠権については、意匠登録の対象や出願登録手続きの基礎的な内容から、関連意匠や部分意匠を活用した出願戦略、或いは小誌102,103号で紹介した意匠の特許的活用や特許出願から意匠への変更戦略(ハイブリッド知財戦略Ⓡ)などを豊富な事例と共に解説します。時には、座学だけではなく、実習を通じて出願戦略を学んでいただくオプションもあります。その他ご希望により登録対象が拡張された画像デザインや意匠の国際出願(ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく)について解説いたします。
商標権についても、商標とは何かに始まり、実務上重要となる類否判断や商標調査の方法、さらには代表的な拒絶理由とその対応方法などを事例と共に解説します。さらには、外国出願やネーミングなどの追加オプションもご用意しております。

2.商標セミナー((a)役員・事業部向け/(b)商標の使用方法)

オリンピックエンブレム問題を契機に数多くご依頼を受けましたのが、(a)役員・事業部様向けのセミナーと(b)商標の使用方法についてのセミナーでした。

(a)役員・事業部向け商標セミナー

このセミナーは、オンダが日頃からお客様にお薦めしているものですが、それは次に掲げるような理由からです。
特許・意匠については、ほとんどの企業様で知的財産部管轄となっていますが、こと商標となると必ずしも知的財産部の管轄ではなく総務部や広報企画部門などの管轄となっている場合が多く見受けられます。これは、商標など単なる名前にすぎず、商号登記などと同様に簡単な手続きですぐに登録できるものと誤解されていることが原因だと思います。特に、一般コンシューマ向けの商品の取り扱いが少ないBtoBの企業様においてこの傾向が顕著だと思います。

また、特許や意匠については、元々製造部門や担当役員も関心が高いので、知財部にスムーズに発明の届出がなされて時期を逸することなく出願・権利化を図れる体制となっている場合がほとんどです。また、新製品・技術の情報も新規性を喪失するほどにうかつに外部発表されるおそれも少ないと思います。

しかし、商標については上層部の理解不足により、意外な落とし穴にはまることがあります。例えば、新会社の設立や新規事業・新規分野への参入などは、経営陣・取締役会や経営企画部門などの上層部の機密マターであり、会社としての方向性が確定するまでは、知財部門にまでその関連情報が回付されないことがあります。これらの新規ビジネスには必ず商標登録の必要性が付随するのですが、外部発表目前に知財部門に情報が寄せられては、知財部門としても確実に権利確保することなど不可能です。また、事前に情報が寄せられればまだしも、知財部門に情報が寄せられることなく報道発表などされた日には目も当てられません。インターネットが普及した現在では、発表翌日には国内はもとよりビジネス展開国・模倣頻発国において他人に商標登録されるという事態を招きます。名称変更するにせよ、やむを得ず権利を買取るにせよ、無駄な時間と多大な費用の支出を強いられることになりかねません。

そこで、このセミナーでは、海外展開も視野に入れながら、何が商標となるのか、商標の取得にどれくらいの時間・費用を要するのか、出願・登録前の外部発表のリスクの3点に絞って解説することで、役員に対し商標権の重要性を理解していただくようにしています。
なお、オンダでは、内部の意見にはなかなか耳を貸さない役員でも、外部の専門家の意見は聞いていただける事例を経験しました。

(b)商標の使用方法についてのセミナー

ここ数年、大変多くご依頼をいただくセミナーです。
要は、登録商標を適正に使用することで、不使用取消しや不正使用による取消しのリスクを回避し、自社の商標権の保全を図りましょうというセミナーです。
実に当たり前の活動をお薦めするセミナーなのですが、意外と自社商標を適正に使用できていない企業様も多いものです。
その原因の一つには、上記のように知財部で商標管理がされていないために、権利内容を理解した全体的な商標管理がなされていない場合があります。また、そもそも適正使用の意味の理解不足により、商標が登録になったらどのような商品にでも使用できると誤解している場合もあります。

さらに、商標が付されるカタログやパンフレットの作成が知財部門以外で行われる場合、当該部門が暴走して登録商標の態様を勝手に変更して使用している場合もあります(当該商品について発言力のある営業部門や製造部門など)。

なお、事業部からの届出のままに出願・登録を図ってきたために、同一指定商品で異なる態様の商標が複数存在したり、逆にビジネスの展開に商標の登録が追い付いていない場合もあります。また、ビジネスの発展やグローバル化に伴い、保有している商標権の数が膨大となり、知財部門であっても管理しきれていない場合もあります。
セミナーでは、商標の適正な使用方法について、ご依頼人様の登録事例と実際の適正な使用例と不適切な使用例を紹介して具体的に理解していただくようにしています。

また、時には保有商標とご依頼人様のビジネスや提供商品・サービスとを対比して、現状の自社ビジネスに即した商標が過不足なくきちんと登録されているかのチェック・ご提案も行います(小誌107号の田口弁理士のコラム「ハウスマークの保護と商標管理について」参照)。

 さて、今回はデザインの保護に関連した知財教育研修プログラム(個別セミナー)の概要をご紹介いたしましたが、このほかにも一昨年から提供開始されたJ-PlatPatを活用して行う「特許調査セミナー」も大変好評いただいております。
今回ご紹介したプログラムを始め、各種セミナーの開催のご要望は、オンダ国際特許事務所の営業企画部までお問合せいただけましたら幸いです。