日々是好日|お知らせ|オンダ国際特許事務所

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日々是好日

(パテントメディア2011年5月発行第91号掲載)
弁理士 正木美穂子

今年で入所9年目となる弁理士の正木と申します。意匠商標部に所属し、現在は専ら意匠出願に関する業務に従事しています。また、意匠関係の「英語要員」として、外内出願(外国のお客様の日本出願)や内外出願(日本のお客様の外国出願)をサポートさせて頂く中、現地代理人の窓口となる機会も頻繁にあります。そんな意匠担当者が過ごす一週間を虚実ない交ぜにご紹介したいと思います。

某月某日 月曜日 <何の前触れもなく・・・>

月曜日は週末に受信した大量メールのチェックから始まります。事務所の海外用代表アドレス宛のメールが転送されてくるので、受信件数はおよそ300件くらいでしょうか。重要なメールがスパムメールに埋もれてしまわないよう、送信者とタイトルをチェックしながら注意深く探し出します。
と、その中に“VERY URGENT”に続く“Design”の文字を発見。おそるおそるメールを開くと、米国の代理人から本日が優先権期限となる緊急出願の依頼です――穏やかな朝はもはやここまで。出願人名や物品名等、出願に必須の情報が揃っていることを確認した上で、まずは受領確認の返信をしておきます。残りのメールをチェックする一方、頭の中では抱えている仕事の優先順位に大変動が起きています。
さて、日本の意匠制度においては、意匠図面として完全に整合のとれた六面図を提出しなければなりません。ところが、本件は添付図面を概観するだけでも、図面間に明らかな不整合が見受けられ、おまけに側面図と底面図が不足しています。このまま提出したら、「出願意匠が具体的でない」という拒絶理由を受けることになってしまうでしょう。
国によって図面に関する厳格さが異なるので、比較的緩やかな国の出願を基礎として、比較的厳しいとされる日本で出願を行うときは、往々にしてこのような問題が生じます。
とはいえ、現地との時差は14時間、米国東海岸は現在、日曜日の午後7時です。現地に問い合わせることは不可能なので、手元にある材料でよりよい出願ができるよう、精一杯知恵をしぼります。
日本出願の図枠内に収まるよう、各図の寸法をフォトショップで調整し、拒絶理由の原因となりそうな明白な不整合には、合理的に判断できる限度において応急処置的な修正を施します。本来であれば、修正した図面を現地代理人に確認してもらいたいところですが、時差の関係でそれは叶いません。当所が代理人として最もリスクが少ないと考える状態で出願するより他ないのです。
今回は底面図が不足していたのですが、単純な形状だったので、平面図のコピーを反転して即席底面図を準備ができたのは幸いでした。側面図の不足は「意匠の説明」で各斜視図に言及すれば解消できるでしょう。
結果、それなりに整った一組の図面が何とか完成しました。特許庁への送信が終わると、必ず当日中に現地代理人に出願完了の速報を入れます。
特許事務所として出願完了は当たり前のことですが、地理的、法律的、及び言語的なギャップを超えて一つの仕事が遂行された満足感、そして、つながる世界の一端で自分の役目を果たせたのだなあ・・・という静かな充実感を覚えることのできた一日でした。

某月某日 火曜日 <登録意匠に癒される?>

昨日の緊急出願で進行中の仕事が全体的に遅れ気味です。でも今日の残業できっと挽回できるでしょう。
珍しく電話やメールが少なく、まとまった時間がとれたので、懸案だった意匠調査に着手しました。調査対象は「菓子等」を中心とする製造食品分野です。調査対象期間における同分野での登録数はおよそ500件以上に上り、全件の代表図を一覧できるよう意匠マップも作成しました。
それにしても、趣向を凝らした和洋菓子が並ぶ意匠マップは、仕事とはいえ、意匠担当者の心をなんて癒してくれることでしょうか!

某月某日 水曜日 <新規性を失ったり、秘密にしたり・・・>

出願書類の作成・チェックを行っていたところ、ちょうど該当案件のお客様から、「困ったことに、出願対象の製品が先週リリースされてしまいました!」とのご連絡が舞い込みました。このようなケースは意匠では決して珍しいことではありません。そして、出願前にお早目にご連絡いただければ、新規性喪失の例外適用によって救済可能です。この救済の幅広さが意匠出願の利点の一つといえるでしょう。
他方、先願主義だから出願は急ぐけれども、当面は登録意匠を秘密にしておきたい!というケースもあります。そういう場合は秘密意匠です。こういった特有の制度を種々活用できる点も意匠出願の面白さだと思っています。

某月某日 木曜日 <トライアングルの周長>

午前中は、ひたすら内外出願のオフィスアクションの検討に時間を費やし、英語漬けとなりましたが、どうにか本日中にお客様にコメントを発送することができそうです。現地代理人の誠実な仕事ぶりにも感謝。
近年、BRICs諸国への意匠出願が増加していますが、欧米やアジアの国々に比べて、ロシアやブラジルの制度に関する情報がまだまだ不足しており、中間対応策の提案にも時間を要しています。今後の検討課題です。
午後は、私事都合により昼食後2時間の外出届けを出しています。前日から仕事を前倒しして進めてきたお陰で、無事に中抜けして子どもの授業参観に顔を出せそうです・・・・・・。
午後1時半になると、事務所から自宅を経由して小学校へ向かいます。この3つの地点からなるトライアングルを一周しても車で15分以内。それぞれが近距離内にあるため、2時間後には何事もなかったかのように事務所に戻っています。業務に支障を来たさない範囲でこのような両立ができるのは、とても恵まれたことだと実感しています。
ところで、学校で知り合いのお母さんに「何関係のお仕事?」などと聞かれたときは少し注意して答えています。噛み砕いて説明したつもりで、うっかり「デザインに関する云々・・・」と答えたところ、「おしゃれな感じの仕事?」とあらぬ誤解を招いたことがありました。「おしゃれ」というより――かなり硬派な仕事なのですが、知財業界の人でないとその辺りを伝えるのは難しいですね。

某月某日 金曜日  <事務所の窓から・・・>

先週メールでご相談いただいていたA社様が来所されて、面談を行いました。単なる出願の相談ではなく、他社との利害関係が直接的に絡む内容だったので、当所の会長にも同席願いました。お客様への対応に配慮する一方、意匠制度に造詣が深く、生き字引のような会長の言葉を一言も聞き漏らすまいと自ずと集中力も高まります。
相談のメインテーマは、「意匠権侵害の回避策」。お話は新製品の形状変更から今後の出願戦略、さらには審判請求まで視野に入れたものに発展しました。事前に資料をご提供いただき、検討が十分に済んでいたため、短時間で有意義な面談となりました。
ところで、当所岐阜オフィス付近は岐阜市内有数の観光名所でもあり、社屋の東向きの窓からは金華山と岐阜城をかなりの至近距離でご覧いただけます。面談が終わった後に窓の外の景色を眺めながら、ふと緊張を解いて談笑される方も多いように思います。一時ブームとなったパワースポットとも言われている金華山と岐阜城。平日の昼間に優雅に散策・・・というわけにはいかないかもしれませんが、せめて当所の窓から見える豊かな緑に癒されていただければ・・・と思いながらご案内しています。

以上、意匠担当者の日常のほんの数コマをご紹介させていただきました。これからも、慌ただしさや厳しさの中にあっても、「今日も好い日」と考えられるよう「日々是好日」をモットーに日々業務に励んでいきたいです。