特許調査でCPCを使用するときの留意点|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

特許調査でCPCを使用するときの留意点|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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特許調査でCPCを使用するときの留意点

(パテントメディア2013年9月発行第98号掲載)
知財戦略支援部 調査東京グループ 中山 雄一郎
(特許検索競技大会2010準優勝 /特許検索競技大会2011入賞)

CPC(Cooperative Patent Classification)という特許分類をご存知でしょうか。2013年1月から導入された新しい特許分類です。ここでは、特許調査でCPCを使用するときの留意点などについて述べたいと思います。

1.CPCとは

CPCは、EPO(欧州特許庁)とUSPTO(米国特許商標庁)との間で合意された特許分類であり、両庁の分類付与業務を軽減することや、調査業務を効率化することなどを目的としています。
従来、EPOでは、特許文献にECLA(欧州特許分類)を付与し、USPTOでは、USC(米国特許分類)を付与してきましたが、今後は、両庁ともCPCの付与に切り替わります。
CPCは、EPOとUSPTOとの間で合意された特許分類ではあるものの、CPCの形式はECLAの形式に類似しており、イメージとしてはECLAを発展させたものという感じです。

2.公報に付与されているCPCを確認するには

CPCの内容は、技術の進歩に合わせて更新されるため、最新のCPCを確認したいときには、公報上に表示されたCPCではなく、データベース上のCPCを確認することをお勧めします。
なお、特許公報上へのCPC表示は次のように運用されます。
EP特許→公報上にはCPCが表示されない
US特許→公報上にCPCが表示される

3.CPCの内容を確認するには

CPCの分類項目の内容を確認するときには、次のサイトが参考になります。

EspacenetのCPC検索
http://worldwide.espacenet.com/classification?locale=en_EP

日本特許庁の分類対照ツール ←CPCの日本語訳(一部のみ)が確認できます。
http://www.jpo.go.jp/cgi/cgi-bin/search-portal/narabe_tool/narabe.cgi

4.CPCとIPCの比較

世界共通の特許分類としてIPC(国際特許分類)が知られています。しかし、IPCは分類項目数が約7万と特許分類として多くはなく、最も細分化された分類項目を使用しても件数が絞り込めないという課題がありました。これに対し、CPCは分類項目数が約25万と多く、件数の絞込みが比較的容易です。

例えば、ゴルフクラブ分野においてウッド型ヘッド(調整タイプは不要)に関する技術を調査したいとき、表1に示すように、IPCでは「A63B53/04(A63B53/06含まず)」を指定するのに対し、CPCでは「A63B53/04」の下層の「A63B53/0466」を指定することができます。1985年以降に発行されたEP特許及びUS特許を対象にした場合、「IPC=A63B53/04(A63B53/06含まず)」と指定すると、6,716件ヒットするのに対し、「CPC=A63B53/0466」と指定すると、2,374件に絞り込まれます。
このように、CPCの分類項目の中に、調査したい技術と合致するものがある場合には、CPCを使用した効率的な調査が可能です。

表1 ゴルフクラブ分野のIPC及びCPC

特許調査でCPCを使用するときの留意点 | 2013年

5.EP調査における留意点

図1は、EP特許を対象に、ゴルフクラブ分野における各種特許分類の付与実態(最近1年)について検索したものです(検索データベース:トムソンイノベーション)。ECLA(図中、▲印)に着目すると、2013年1月に数件付与されているものの、2月以降はゼロ件になっていることが分かります。EPOは、ECLAの付与を2012年末で停止し、2013年1月以降からCPCを付与すると発表しています。データベースによっては、2013年1月以降もECLAの検索コマンドを残しているものがありますが、ECLAのみの指定では、調査漏れが発生することにご注意ください。
図2は、EP特許を対象に、ゴルフクラブ分野における各種特許分類の付与実態(過去30年:5年おき)について検索したものです。過去のEP特許にも、CPC(図中、◆印)が付与されていることが分かります。これは、過去のEP特許に付与されていたECLAをCPCに機械的に変換した、すなわちCPCを遡及付与したためです。
EP調査においては、特許分類には、今後発行されるEP特許も、過去に発行されたEP特許もカバーできるCPCを使用することをお勧めします。なお、CPCに加えて、IPCを補足的に使用することが、調査の網羅性の観点から好ましいと思われます。

特許調査でCPCを使用するときの留意点 | 2013年

図1 EPを対象にしたゴルフクラブ分野の各特許分類の付与実態(最近1年)

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図2 EPを対象にしたゴルフクラブ分野の各特許分類の付与実態(過去30年)

6.US調査における留意点

図3は、US特許を対象に、ゴルフクラブ分野における各種特許分類の付与実態(最近1年)について検索したものです。USC(図中、×印)に着目すると、2013年1月以降も継続して付与されていることが分かります。USPTOは、2013年1月~2014年末までの移行期間を設け、移行期間中は次の対応をし、移行期間後はCPCのみを付与すると発表しています。

公開公報→USC及びCPCの両方を付与
登録公報→「USCを付与」または「USC及びCPCの両方を付与」を審査官が選択

すなわち、移行期間中は、USCは従来通り付与される一方、CPCは付与されない場合があります。
図4は、US特許を対象に、ゴルフクラブ分野における各種特許分類の付与実態(過去30年:5年おき)について検索したものです。CPC(図中、◆印)に着目すると、過去のUS特許にも付与されていることが分かります。EPOは、EP特許だけでなく、US特許にもECLAを付与しており(付与率は完全ではないようです)、過去のUS特許に付与されていたECLAをCPCに機械的に変換して付与したためと思われます。

特許調査でCPCを使用するときの留意点 | 2013年

図3 USを対象にしたゴルフクラブ分野の各特許分類の付与実態(最近1年)

US調査においては、移行期間中は、USCが付与される一方、CPCは付与されない場合があることから、CPC及びUSCの両方を使用することをお勧めします。また、EP調査と同様、IPCを補足的に使用することが、調査の網羅性の観点から好ましいと思われます。

特許調査でCPCを使用するときの留意点 | 2013年

図4 USを対象にしたゴルフクラブ分野の各特許分類の付与実態(過去30年)

7.CPCの2000シリーズ

表2をご覧ください。先に示した表1の「A63B53/*」の分類体系と類似していることがお分かりいただけると思います。ゴルフクラブ分野のCPCは、少なくとも「A63B53/*」と「A63B2053/*」とがあります。後者のCPCは、メイングループの番号が2000番台になっており、2000シリーズと呼ばれます。
表2には、表1にはない分類項目が見られます。例えば、表2の「A63B2053/0416」は、「ヘッドのフェイス面」に関する分類項目であり、表1の「A63B53/*」には相当するものがありません。
このように、CPCの2000シリーズは、CPCの主要分類(A63B53/*)にはない分類項目を有しています。CPCの2000シリーズは、ECLAに由来するものではなく、EPO審査官が任意に付加的に付与してきたICOの一部に由来する分類体系であることがその理由です。
特許調査においては、CPCの2000シリーズは、CPCの主要分類にはない技術観点で調査を行いたいときに使用するとよいと思われます。また、より広範な技術情報を得る目的で、CPCの主要分類に対して、CPCの2000シリーズを追加的に使用してもよいと思われます。ただし、CPCの2000シリーズは付加的に付与される分類項目であり、付与率が保障されたものではないことにご留意ください。

特許調査でCPCを使用するときの留意点 | 2013年

表2 ゴルフクラブ分野のCPC(2000シリーズ)

8.最後に

CPCは、EP及びUS以外にも、英国やスペインなど欧州の一部でも導入されることが決まっています。さらには、中国や韓国で発行される特許文献の一部にもCPCが付与されるとの情報もあり、今後はCPCの重要性が高まっていくことが予想されます。
今回の内容が、少しでも皆様のお役に立つことができれば幸いです。

<参考サイト及び資料>
  • CPCの公式サイト
    http://www.cooperativepatentclassification.org/index.html
  • 知的財産情報検索委員会第4小委員会、新たな特許分類CPCの概要(前編)、知財管理、Vol.62、No.12、2012、1755-1758
  • 知的財産情報検索委員会第4小委員会、新たな特許分類CPCの概要(後編)、知財管理、Vol.63、No.1、2013、133-136
  • 太田良隆、特許分類に関する国際的な動向、情報管理、Vol.56、No.3、2013、133-139