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判例研究/レポート

植物の品種登録における「商標」の落とし穴 −「会津のかおり」事件に学ぶ−

平成21年10月30日

平成21年3月16日福島県は、種苗法に基づいて「そば」の新品種名「会津のかおり」の品種登録を受けましたが、第三者が、平成21年8月21日「そば粉、そばがき、そばのめん等」に「会津の風香/かおり」を商標登録したことが判明し、県議会を始め関係者の間でその対応について議論が展開されていました。

福島県は、この問題について、10月15日、『「会津のかおり」を品種名や原材料等表示として使用する行為は商標権侵害にあたらない』との見解をまとめ、関係団体に対して表示方法等を指導するとしています。
事件の詳細については新聞記事等に譲るとして、当所では、本事件から得られる教訓についてまとめてみました。

【教訓1】
種苗法に基づく「品種登録」と商標法に基づく「商標登録」とはセッ トで考える。

「品種登録」と「商標登録」とは、それぞれ法律的根拠は異なりますが互いに密接な関係にあります。これらの法律では、何れか一方で登録されていれば、もう一方では登録を排除するという仕組みになっています。
この事件の場合、福島県が新開発のソバの品種を「会津のかおり」として品種登録を受けており、他人が「そば(未加工のもの),そばの種子,そばの苗」について商標「会津のかおり」を登録することは不可能と思われます。
しかしながら、品種登録によって商標登録を排除できる効果は、登録品種を原材料とする加工品までには及ばないとされています。
そのため、「そば」の加工品である「そば粉,そばがき,そばのめん」等の商品について、一個人が「会津のかおり」を商標登録できてしまったのが今回の事例です。
このように、種苗法に基づく品種登録を行う場合には、その品種を原材料とする加工品分野への展開の可能性についても十分に検討し、それらの商品分野については商標登録によって保護を図る必要があることに留意しなければなりません。

【教訓2】
「品種登録」と「商標登録」の出願手続きが完了するまでは、対外的に公表しない。

新品種を開発する目的の一つは地域産業の振興であり、そのために開発段階からマスコミや関係団体等へのPR活動が必要となるのはやむを得ないことかも知れません。
しかし、「品種登録」の手続きは、実際に新品種が開発されなければ出願できないのに対し、「商標登録」の手続きは、商品が実在しない場合でも、いつでも、誰でも出願することができます。
そのため、品種登録や商標登録の出願手続きが完了する以前に、その品種名やそれを使用した商品名等を一般に公表してしまうと、第三者がその名称を先回りして商標出願してしまうおそれが生じてきます。
このような不測の事態を回避するためには、品種の開発段階における名称は「品種の名称」ではなく簡素なもの(例えば、「福島そば1号」など)を用い、各種出願手続きが完了した時点で、正式名称を公表することが望ましいと思われます。

なお、この事件に関連して福島県が示した見解によれば、「広告、のぼり旗などに「会津のかおり」を品種名や原材料等表示として使用する行為は商標権侵害にあたらない」としています。具体的には関係団体に対し「福島県オリジナル品種 会津のかおり」を使用するよう要請した、とありますが、品種名の使い方には十分な注意が必要です。
生産者・加工者・販売者が「品種名や原材料等表示」の意図を持って使用したものであっても、例えば以下のような使い方をした場合には、商標権侵害となるおそれがあるからです。
   (1)「会津のかおり」が他の文字に比べて大きく目立つように表されている。
   (2)「会津のかおり」が他の文字とは異なる色彩で表されている。
   (3)「会津のかおり」が他の文字とは異なる書体で表されている。
このように、「会津のかおり」部分だけが際立つような使用方法を避けることが、無用な紛争を起こさないための必要条件であると思われます。

資源を投下して開発した品種の名称が、商標権との抵触問題で意図した商品分野に参入できないということがあってはなりません。
この事件は、品種開発と並行してその品種を原材料とする商品分野(この事件の焦点となった「そば粉,そばがき,そばのめん」等の他にも、例えば、「そば」を原料とする「焼酎」<この分野でも第三者が商標登録している>や「菓子・パン」など)での戦略を構築し、可能性のある商品について速やかに、商標出願しておく必要性があることを示した事件といえるでしょう。

以上

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