限定公開【判例研究】数値範囲を含む発明の進歩性判断(令和2年(行ケ)第10044号(令和3年8月30日判決))|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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限定公開【判例研究】数値範囲を含む発明の進歩性判断(令和2年(行ケ)第10044号(令和3年8月30日判決))

2022年11月10日掲載
弁理士 佐橋信哉

1.事例

数値範囲を含む発明の進歩性判断について、相違点である数値範囲について、課題、有利な効果、臨界的意義に言及することなく、動機付けの有無のみ判断し、進歩性ありと判断した事例

 

2.事件の概要

平成26年5月12日特許出願(特願2014—99072号)
         (特願2011-506377号の分割出願)

平成28年4月20日審判請求

平成30年4月30日審決(第1次審決)(36条6項1,2号)

平成30年8月15日出訴(第1次審決取り消し訴訟)

平成31年4月12日判決(審決取り消し)

令和元年12月2日審決(請求項19について刊行物5発明に基づく新規性・進歩性違反)

令和2年4月15日出訴

令和3年8月30日判決(審決取り消し)

令和4年1月11日登録(特許第7007010号)

 

3.数値範囲に関する審査基準(抜粋)

「6.2 進歩性の判断

請求項に数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合において,主引用発明との相違点がその数値限定のみにあるときは,通常,その請求項に係る発明は進歩性を有していない。実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは,通常,当業者の通常の創作能力の発揮といえるからである。しかし,請求項に係る発明の引用発明と比較した効果が以下の(ⅰ)から(ⅲ)までの全てを満たす場合は,審査官は,そのような数値限定の発明が進歩性を有していると判断する。

(ⅰ) その効果が限定された数値の範囲内において奏され,引用発明の示された証拠に開示されていない有利なものであること。

(ⅱ) その効果が引用発明が有する効果とは異質なもの,又は同質であるが際だって優れたものであること(すなわち,有利な効果が顕著性を有していること。)。

(ⅲ) その効果が出願時の技術水準から当業者が予測できたものでないこと。

なお,有利な効果が顕著性を有しているといえるためには,数値範囲内の全ての部分で顕著性があるといえなければならない。また,請求項に係る発明と主引用発明との相違が数値限定の有無のみで,課題が共通する場合は,いわゆる数値限定の臨界的意義として,有利な効果の顕著性が認められるためには,その数値限定の内と外のそれぞれの効果について,量的に顕著な差異がなければならない。他方,両者の相違が数値限定の有無のみで,課題が異なり,有利な効果が異質である場合には,数値限定に臨界的意義があることは求められない。」

 

4.本願発明(請求項19)

【請求項19】

異なる供給源に由来する脂質の混合物を含む脂質含有配合物であって、前記配合物は、ある用量のω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸の用量を含み、ω-6対ω-3の比が4:1以上であり:
(i)ω-3脂肪酸は、前記配合物中の総脂質の0.1~20重量%であるか;
または
(ii)ω-6脂肪酸の用量は、40g以下である、脂質含有配合物。

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