南京騰亜精工科技有限公司と南通中羲機電科技有限公司 李桂雲の 発明専利権侵害紛争事件|判例研究/レポート|特許業務法人オンダ国際特許事務所

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南京騰亜精工科技有限公司と南通中羲機電科技有限公司 李桂雲の 発明専利権侵害紛争事件

2015年8月5日

事件の性質:証拠保全公証の重要性
審理法院:江蘇省南京市中級人民法院
判決日:2015年5月4日
原告:南京騰亜精工科技有限公司  (以下、「騰亜公司」という。)
第一被告:南通中羲機電科技有限公司  (以下、「中羲公司」という。)
第二被告:李桂雲
出典:(2014)寧知民初字第132号

一、事件の概要

原告である騰亜公司は、以下の2つの発明専利を保有しており、これらの二つの発明専利権は、案件受理時においては有効である。

※本件発明1
発明名称:ガス動力型ネイルガン
出願番号:ZL201010513182.4
出願日:2010年10月20日
公告番号:101961860A
授権日:2012年4月25日

※本件発明2
発明名称:燃焼動力型締結用部品駆動工具エアフィルタ装置
出願番号:ZL201010513175.4
出願日:2010年10月20日
公告番号:102008861B
授権日:2012年7月4日

原告は、被告である中羲公司と李桂雲(金物店の経営者)が原告の保有する上記二つの発明専利権を侵害したことを理由に、両被告を法院に提訴し、両被告に対し、権利侵害を停止し、かつ権利侵害により原告にもたらした経済損失100万元(約2000万円)を連帯賠償することを命じる判決を求めた。

原告は、調査により、被告である中羲公司が原告の許諾を得ず原告の保有する二つの本件発明専利権を侵害した製品を製造・販売し、また、被告である李桂雲の金物店において当該権利侵害製品を販売したことを発見した。原告は、収集してきた証拠に対して公証を行った、かつ、被告の権利侵害の事実及び結果を認定するために法院へ提出した。法院は、審理を経て、原告の訴訟請求(即ち、両被告に対し、権利侵害を停止し、かつ、経済損失100万元を賠償することを命じる判決)を支持した。

二、重要な証拠

本件において、法院は、原告の訴訟請求(即ち、権利侵害の停止及び損失の賠償)を支持した、特に、原告が請求した経済損失100万元の賠償を実質的かつ全面的に支持した。これは、民事訴訟及び知的財産権訴訟の分野においては、比較的稀である。ここで、原告が提出した証拠から、自分の訴訟主張を支持するためにどのように十分な証拠を準備するのかについて、以下のとおり検討した。

原告は、2014年1月13日、2014年1月16日に、それぞれは、被告である中羲公司のウェブサイトとアリババのウェブサイトにおける被告である中羲公司の販売用ホームページ、被告である李桂雲の金物店に対して、公証・証拠取得を行った。そのうち、2014年1月13日に、原告はウェブアドレスが「http://www.zhongxint.com」であるウェブサイト(即ち、中羲公司のウェブサイト)に対して公証を行った。当該公証書においては、中羲公司の住所、連絡方法、その製品の名称、製品の写真、製品の構造、詳細データ、製品の原理説明などについて、具体的に記載した。また、同日に、原告はウェブアドレスが「http://hop1374684933287.1688.com/tracelog=p4p」であるアリババのウェブサイトにおける中羲公司のホームページ内容に対しても公証を行った。当該公証書においては、ホームページにおける中羲公司に関する公司名称、住所、連絡方法、経営方式、主要製品の名称、価格及び販売量等の情報に対して保全と証明を行った。また、2014年1月16日に、原告は、被告である李桂雲が経営する店舗において、公証購入を行った。原告側の被委託人は、公証員の監督の下、当該店舗でガス型ネイルガン2個を購入し、その場で人民元3000元の領収書を取得した。ガス型ネイルガンを購入した後、公証封存のために、そのうちの1個に対して、現場で分解、再組み立てを行い、かつ関連プロセスの全行程を録画した。

上記の公証証拠によって、以下の事実を証明することができる。

1.中羲公司がガス型ネイルガンを生産した事実について

中羲公司のウェブサイトにおける販売用ホームページに表示された製品にはガスガン、ネイルガン、ガス型ネイルガンなどがある。製製品の名称が異なるが、原告の専利権を有したガス動力型ネイルガンと実質的に同一の製品である。

2.中羲公司が生産したネイルガン製品は、原告の保有した専利権の保護範囲に入っている

原告の本件専利の記載により、専利製品の本体蓋、頂蓋及び両部材の間のフィルタ網は、分離可能である。一方、中羲公司は、その製造・販売した関連製品において、本体蓋、頂蓋及び両部材の間のフィルタ網に対して一体化設置しており、本件専利と異なると主張した。中羲公司は、2014年1月16日の公証材料に記載された本件被疑侵害製品を製造、販売していないことを証明することを目的とした。また、法廷審理において、被疑侵害製品を分解対比した結果、被疑侵害製品における上記3つの部材の間は分離可能であり、これを除いたその他の技術特徴は、いずれも一致し、公証書に証明された事実と一致した。したがって、中羲公司が生産したネイルガン製品は原告の保有した専利権の保護範囲に入っていた。

3.損失賠償金額については、根拠となるものがある

法院は、以下の要素を参考し、賠償金額を総合的に確定した。

(1)本件専利権の数量と類別

本件被疑侵害製品は、同時に原告の保有した二つの専利権を侵害した、しかも、当該二つの専利は、発明専利に属した。

(2)被告である中羲公司の権利侵害の性質と情状

被告である中羲公司の登記設立時間は原告の二つの本件専利の授権公告の後であり、かつ、原告と同一業種に属し、原告の保有する二つの本件専利を知っておくべきである。また、公証書類においては、被告が添付のパンフレット、説明書、安全操作マニュアルなどの資料に丸写しの疑いがあったことを実証した。これによって、被告である中羲公司の権利侵害は故意が明らかであると認定した。

(3)被告である中羲公司の生産規模について

上記公証書類においては、中羲公司の規模に対して具体的な言及があった。例えば、「スタッフ数:51-100人、工場の面積:8000平方米……月間生産量:1万台、年間売上額:人民元501万元~700万元、年間輸出額:人民元101万元~200万元」、「実体加盟、招商地域は全国範囲、招商数量20個」、「ウェブサイトへの加盟を展開する、所在のウェブアドレス:タオバオ(淘宝網)、天猫Tmall(www.tmall.com)、パイパイ(www.paipai.com)、開店時間はいずれも2012年1月1日であり、招商数量は各10個、(当社は全国代理店を募集する)」等が挙げられる。以上から分かるように、被告である中羲公司の生産規模は比較的に大きい。

(4)権利侵害製品の販売方式及び範囲について

本件において、被告である中羲公司は、実店舗販売もありネットショップ販売もある。また、法廷審理において、被告である李桂雲は、被告である中羲公司が訪問セールス行為もあったと陳述した。公証書類のみに表示したアリババの販売プラットフォーム上には「2056人はすでに購入した」が表示された。よって、被告である中羲公司の販売範囲は比較的広い。

(5)被告である中羲公司の権利侵害行為が原告の製品の市場シェア及び価格に対する影響について

法廷審理において、原告は、以下のとおり陳述した。被告が権利侵害製品を多方式、多領域、広範囲で製造・販売したため、原告のクライアントを減少させ、市場シェアも減少した。また同時に、原告はその原因で、その製品の販売価格を下げた。原告のガス型ネイルガンの2011-2012年の単価は約2500元だったが、当該ガス型ネイルガンの2013-2014年の単価は約1500元まで下がった。そのため、製品の利潤も大幅に減少した。

三、知的財産権訴訟における証拠収集

上記案件から明らかになったこととしては、公証書類に基づいて証明された基本事実こそ、原告の訴訟主張、特にその主張された損害賠償はやっと法院の支持を得られた。知的財産権訴訟において、十分かつ有効な証拠を取得するのは勝訴の鍵となる。権利者が権利侵害証拠の収集に対して全面的かつ正確でかつ十分である否かについては、直接に法院の最終的な事実認定と裁判結果に関係しており、権利侵害を構成するか否かを認定する、及び損失賠償を計算する主な根拠であり、権利侵害訴訟全体において中心となる部分である。

知的財産権訴訟における証拠は、大体は権利証拠、権利侵害証拠と損害賠償の証拠の三種類に分けられる。そのうち、権利証拠の提供は基本的に問題がない。また、権利侵害証拠について、権利侵害の状況が複雑な場合は結構厄介である。しかし、最も権利者を困らせるのは、損害賠償に関する証拠である。知的財産権の関連法律は損害賠償の金額に対して対応する規定があり、権利者は、権利者が権利侵害により被った損失、権利侵害者が権利侵害により得た利益に対して確定する必要があり、又はその他の参考になる要素等に対して挙証を行う必要がある。

証拠の収集は、権利者が自ら収集することができ、また、弁護士に委託して収集することができる。必要に応じて、公証機関に依頼して証拠に対して証拠保全を行うことができる、或いは、法院又は行政機関に申請して証拠保全又は調査・証拠取得を行うことができる。そのうち、公証証拠、即ち、上記案件における重要な証拠は、事実推定の効果を有している。「中華人民共和国民事訴訟法」第69条により、「法の定める手続を経て公証証明された法律行為、法律事実及び文書については、人民法院は、事実を認定する根拠としなければならない。但し、公証証明を覆すに足りる反証のある場合は、この限りでない。」と規定された。公証機関は証拠に対して保全を行い、その効果は法院が職権により行った保全と同等である。訴訟前において、当事者がうまく公証機関を利用して証拠を収集、保全することができれば、訴訟前準備を上手に行うための有効措置になる。

公証による証拠保全は、その真実性が法院の支持を得られやすくなる。また、法院又は行政機関に申請して証拠保全又は調査・証拠取得を行うことと比較すると、敷居が比較的に低く実施しやすい。しかも、訴訟前でも訴訟中でもできる。このため、公証による証拠保全は、証拠収集中において無視できない手段である。その直接作用は、滅失可能性のある証拠又は入手しにくい証拠に対して保全を行う。一方、間接作用の方は、権利者の権利保護、及び権利の実現に寄与するだけでなく、紛争の解消、及び訴訟の防止に寄与することができる。公証による証拠保全の適時性と便利性により、当事者間の紛争がより解消しやすくなる。証拠の前では、当事者の間は、訴訟外の和解又は調停がより達成しやすくなり、訴訟の発生を防止し、紛争解決コストの減少に寄与する。訴訟はさすがコストを多くつぎ込む紛争解決手段であり、やむを得ない場合に最終救済手段として使用するべきである。この点について、公証による証拠保全は、紛争解決の代替方式の利用と実施に役立っている。

以上