中国知財セミナーFAQ集|パテントメディア|オンダ国際特許事務所

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中国知財セミナーFAQ集

2016年9月
中国弁理士 関 英澤

今年3月、当所主催で開催した中国知財セミナー「中国・日本の特許実務における相違点」には、東京・名古屋・大阪の3会場で150名を超える皆様にご参加いただきました。本セミナーで、参加者の皆様からお寄せいただいたご質問をFAQ集としてまとめました。

Q1.中国では同じような拒絶理由通知が何回も来る印象がありますが、いかがでしょうか。
<回答>

拒絶理由に対する出願人の応答が不十分な場合や、登録の見通しがないと判断される場合には、すぐに拒絶査定とされることもありますが、中国の審査官は、出願人に十分な反論の機会を与える傾向にあります。同じ拒絶理由が存在しても、毎回の対応時に補正、反論内容を変更すれば、審査官は拒絶査定を行わず、何度も拒絶理由を通知するケースが多いです。

Q2.中国でも、今後は判例を重んじて、各審査官の審査における判断を均一化する方針と聞きましたが、本当でしょうか?
<回答>

中国の法体系は「判例法」ではありませんが、判例を重んじて各審査官の判断を均一化することは理想的であり、大きな方針としてそのようになっているといえるでしょう。しかし、現状では審査官の経験のバラツキが大きいため、審査官の判断の均一化はすぐには実現できないでしょう。

Q3.中国語への翻訳の完成度は、日→中と、英→中と、どちらが高いでしょう?
<回答>

基礎出願が日本語の場合は、できれば日→中翻訳をした方がよいと思います。特許の翻訳において、誤訳がなかったとしても、必ずロスが生じます。和→英翻訳を行った後に、中国語に翻訳する場合、各翻訳者が技術を正確に理解していれば、完成度の高い翻訳文を作成できますが、やはり直接日本語から中国語に翻訳する場合と比べてリスクが高くなります。

例えば、以下のような事例がありました。

和英翻訳:円筒状→cylindrical
英中翻訳:cylindrical→円柱状
「cylindrical」は「円筒状」及び「円柱状」の意味を有するため、図面がない場合、英中翻訳者が「cylindrical」を「円柱状」に誤訳する可能性は十分あります。一方、直接日本語から中国語に翻訳する場合、同じ漢字「筒」が使われるため、このような誤訳が発生することはないと思われます。

Q4.数値に関する補正は、どの程度厳しいですか?例えば実施形態に「2~50」という数値範囲が記載された場合、拒絶理由応答時にこの記載に基づいて数値範囲「10~50」を請求項に追加することができますか?
<回答>

実施形態において「10」に関する記載がなければ、数値範囲「2~50」の記載に基づき「10~50」を追加する補正は、現行の基準ではできません。数値範囲「10~50」が「2~50」よりも狭い範囲になっていますが、「新たな下(中)位概念を追加する」ことになるため、この補正は認められません。

Q5.中国では請求項の数が10を超えると追加料金を払わなければならないと聞いていますが、「請求項の数」は審査請求時の数でしょうか?
<回答>

いいえ、ここの「請求項の数」は出願時の請求項の数を指しています。例えば、出願時に請求項の数が15項であるため追加料金を払った場合、実体審査の前に自発補正により請求項の数を9項に減らしても、追加料金の返金はありません。逆に、出願時に請求項の数が9項である場合、実体審査の前に自発補正により請求項の数を15項に増やしても、追加料金を払う必要はありません。

Q6.保密審査に係る「中国で完成した発明又は実用新案」とは具体的に何を指しますか? 例えばアイデアのみの発明の場合、発明者が中国にいれば対象になりますか?
<回答>

「中国で完成した発明」は、技術の実質的な内容が中国国内で完成されたものを指します。中国国内の設備などを使って実験を行うことにより発明をした場合はもちろん、アイデアのみであっても、中国の国内で生まれた場合は、中国で完成した発明になります。

なお、発明のために設備等を一切使わず、単純に頭の中で考えて発明を行った場合は、本人以外は誰も分かりませんので、特に発明者が外国人である場合は、本人が自ら主張しなければ外国で発明されたものとみなされるでしょう。一方、発明者が中国人であり、外国で発明したと主張する場合は、外国で発明したことを証明できる資料等を用意したほうがよいと思います。

Q7.中国で完成した発明、実用新案について、保密審査を経ずに外国へ出願した場合は、どのような懲罰がありますか? また、保密審査を受けて、出願が認められない結果になることがありますか?
<回答>

保密審査を経ずに外国へ出願したことが発覚した場合、出願人が中国において同じ発明、考案に係る権利を取得できなくなります。また、国家安全等に関わる内容の発明、考案の場合は、刑事責任を問われる可能性もあります。

保密審査で出願が認められない結果になるのは、国家安全又は重大な利益に関わる分野(例えば原発や武器等)のものです。従って、これらの特殊な分野でなければ、NGになることはまずないでしょう。

Q8.実用新案の権利行使について、「専利権無効宣告の決定は、…遡及力を持たないものとする。ただし、権利者の悪意により他者に損失をもたらした場合は、賠償しなければならない」との規定がありますが、ここの「悪意」は、どのように解釈すればよいでしょうか?また、権利者側、被疑侵害側のどちらが悪意の有無について、主張立証すべきでしょうか?
<回答>

ここの「悪意」については、いわゆる法律用語としての悪意ある事実を知っていること(→道徳的不誠実を含まない)と理解すればよいかと思います。悪意の有無に関する立証義務は、被疑侵害側にあります。

Q9.上記Q8の「悪意」の判断について、例えば専利権者は、権利に無効理由はないと信じていたと主張すれば、悪意がないと判断され、損害賠償請求を逃れられるのでしょうか? 例えば以下の場合は、権利者側の悪意を立証することは可能でしょうか?

①完全同一の先行技術文献を、被疑侵害側から提示され知っていたが、権利行使した。
①’ほぼ同一構成開示の先行技術文献を、被疑侵害側から提示され知っていたが、権利行使した。

②出願前の実施により公然実施技術となっていたが、それを認識して権利行使した。
②’出願前の実施により公然実施技術となっていたが、それを認識せず権利行使した。

<回答>

専利権に無効理由があるか否かに関して、専利行政部門又は裁判所以外の機構又は個人による見解には法的効果がありませんので、無効審判の決定などがなければ、専利権者が、権利に無効理由はないと信じていたと主張すれば、損害賠償請求を逃れられる可能性が非常に高いと思います。

ほぼ同一構成の先行技術が提示されたとしても、権利者は、専利権に無効理由があるか否かはその時点で判断できない(少なくとも有効の可能性がある)と主張することができますので、①’のような場合は、悪意を立証することは困難だと思います