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「パテントメディア」

特許の報奨金とオークション

2009年5月
米国特許弁護士 ブライアン P.ファー

米国特許システムに関わる者であれば、解決することが困難な2つの問題にしばしば直面するものです。第1の問題は、特許権者が、自己の特許について買い手やライセンシーを見つける効率的な方法がないことです。多くの発明者は、発明について特許権の取得に多大な時間を費し、特許が付与されてから、その特許を購入したい、あるいは使用許諾を受けたい者がいないことに気づくのです。  

発明者の大多数は経営上の観点から発明を実用化できないため、ほとんどの発明者にとって、特許を売ったり、又は使用許諾したりすることが困難であるのは理解できることです。とはいえ、特許の販売又は使用許諾が困難であるという事実は、実は、個人発明家のみならず、商業的に価値ある、特に注目すべき発明について特許を受けるであろう企業、大学、そして政府の研究機関にさえも当てはまるものなのです。  

第2の問題は、ある組織がある特許の侵害を回避したいが、何らかの理由(製造上の制約、設計変更のコスト等の理由)によりそれが困難であると分かった場合に生じます。この場合、適切な先行技術文献を発見して特許クレームを無効にするという別の選択肢に焦点をあてることになりますが、ここで、解決することが困難な第2の問題に直面します。すなわち、適切な先行技術文献は容易には発見できない、という問題です。  

先行技術文献の発見についての問題に対処しようとしている法律事務所があります。Article One Partners(以下、「Article One事務所」といいます)です。Article One事務所では、ウェブサイト(articleonepartners.com)にリストアップされた特許について、当該特許を無効にするために十分な先行技術文献を提出するために、最大5万USドル(以下、単に「ドル」と表記します)の報奨金をかけています。個人向けナビゲーション装置に関するある特許について、先行技術文献を組み合わせることにより当該特許を無効にするに十分であると考えられる先行技術文献の提出に関し、ある航空宇宙工学のエンジニアはつい最近35,000ドルを、匿名の情報提供者は15,000ドルを受け取っています。  

特許を無効にすることができる先行技術文献を提供するために報奨金をかける試みは、以前にもなされていました。具体的には、BountyQuest.comは、Amazon.comの創始者であるJeff Bezos氏の支援を受けて、2000年に設立されました。しかしながら、このプロジェクトは、継続的な利益を十分に生み出すことができず、消え行くこととなりました。  

Article One事務所が収入を得る方法の一つは、特許を無効にしたいスポンサーからの収入です。具体的には、スポンサーには、初期掲載費と、成功した場合には成功報酬とが請求されます。  

現在Article One事務所が無効資料を探している、日本の企業が影響を受けそうな特許は、ブルーレイディスクの技術分野に属する米国特許第5,438,560号です。この特許に関して、特許侵害訴訟がソニー社に対して提起され、現在係属中です。  

特許を回避することも、無効にすることもできない場合、当該特許を購入するか、あるいは使用許諾を得ることが可能かもしれません。しかしながら、ここでも、先程の第1の問題が生じるのです。つまり、特許が流通する市場が小さすぎるため、当該特許の購入又は使用許諾にどれほどの費用がかかるかを判断しにくくなっているのです。  

特許についてより効率的な市場を提供しようとする企業が、2003年に設立されたOcean Tomo, LLC. (以下、「Ocean Tomo社」といいます)です。Ocean Tomo社は、世界中の主要都市において、知的所有権についてのオークションを定期的に開催しています。Ocean Tomo社の代表であるJames Malackowski氏は、無形資産、特に特許は、最も商品化されていない資産であると述べています。  

最近の経済の先行きの不安にもかかわらず、Ocean Tomo社は、本年の収入が約25%増大すると予測しています。Malackowski氏によれば、この不景気にあって、企業は、自己の知的所有権ポートフォリオを再評価し、これらの資産から現金を生み出そうとしているとのことです。  

知的所有権という資産のためのより効率的な市場を提供する努力は賞賛されるべきものですが、Ocean Tomo社により提供されるサービスは決して安いものではありません。Ocean Tomo社のウェブサイト(www.oceantomo.com)によれば、オークションに出品される特許1件につき、最低でも1000ドルの料金がかかります。加えて、落札者側には手数料として最終落札価格の10%の料金が、出品者には割増料金として最終落札価格の15%の料金がかかります。例えば、ある特許がオークションで100万ドルで落札された場合、出品者は85万ドルを受け取り、落札者は110万ドルを支払います。そして、Ocean Tomo社が25万ドルを受け取るのです。したがって、実質的な委託手数料は25%となります。  

本稿執筆時においてOcean Tomo社によって最近開催されたオークションは、昨年10月29日及び30日に米国シカゴで開催されたものです。ここでは、合計約1300万ドルにわたる知的所有権がオークションにかけられました。目玉となる出品の一つが、米国航空宇宙局(「NASA」の略称の方が有名でしょう)が所有する11件の特許の出品でした。これらの特許は、信号処理技術に関するものであり、55,000ドル+継続的なロイヤルティにて落札されました。これは、米国政府所有の特許が公売にかけられた初めてのケースであろうと思われます。  

Ocean Tomo社は、本年の6月11日及び12日に、香港にてオークションの開催を予定しています。もし貴社の特許ポートフォリオの中に、使用されておらず、かつ幾分の現金と引き換えに手放してもよい特許があれば、オークションに出品するための特許をリストアップしてみられてはいかがでしょうか。

2009年5月発行 第85号

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