商標審決レポート(BULLPULL TAPIOCA)|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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アクセス

商標審決レポート(BULLPULL TAPIOCA)

2021年6月4日
弁理士 木村達矢

審判番号 無効2017-890065(商標登録5903256号)
事案の概要 下記の構成からなる商標について、「STARBUCKS COFFEE」のブランドロゴを連想、想起させることはなく、その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれはないと判断された事例
審決/判決 審決
審決日 2019年8月21日
出願人/権利者 株式会社Bull Pulu
商標

本願商標
商標審決レポート(BULLPULL TAPIOCA) | 2021年
引用商標

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現在の使用商標
商標審決レポート(BULLPULL TAPIOCA) | 2021年

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指定商品

第29類 タピオカ入りの乳製品 第30類 タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア,タピオカ入りの菓子,タピオカ,食用タピオカ粉

審決の内容

1 請求人商標及び請求人商標中の緑色円環図形構成の周知性について

請求人商標は、1996年から2011年4月に変更されるまで、我が国でも著名なコーヒーチェーン店であって、その当時、請求人商品・役務を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたといえる。しかしながら、ハウスマークの変更から約5年後の本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点においても周知性を維持していたとまではいえない。さらに、請求人商標中の緑色円環図形構成が、単独で使用されているといった状況は見いだせない。

請求人商標及び請求人商標中の緑色円環図形構成は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、我が国における取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認められない。

2 本件商標と引用商標との類否について

本件商標と引用商標とは、いずれも緑色の二重円環図形を有する点において共通するものの、それぞれの構成態様に照らせば、当該図形部分は、いずれもそれのみが特に強調された体裁で表されてはおらず、視覚的に強い印象をもって看取、把握されるものではないというべきであり、当該図形部分が、独立して自他商品及び自他役務の識別標識として機能し、取引に資されるとはいい難い。
本件商標から生じる「ブルプルタピオカ」又は「ブルプル」の称呼と引用商標から生じる「スターバックスコーヒー」又は「スターバックス」の称呼とは、構成音、構成音数に顕著な差異を有するものであるから、称呼上、相紛れるおそれはない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

上記1のとおり、請求人商標及び請求人商標中の緑色円環図形構成は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものということはできない。
また、前記第2の2のとおり、請求人商標は引用商標と同一の構成からなるものであって、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、それと同様に、本件商標と請求人商標とは、非類似の商標であって、その類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する需要者をして、請求人商標を連想、想起させることはなく、その商品及び役務を請求人の業務に係る商品又は役務、あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

コメント

審決では、請求人商標についてハウスマークが変更されていることから(業容拡大により「COFFEE」の文字を外したようである)、過、本件査定時点で請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして周知性が認められていない。しかしながら、請求人商標は、極めて著名であったことから変更から5年後でも需要者の間に周知性が浸透、残存しており、混同することはないとしても、依拠ないし参考にしているとの印象は拭えないように感じられる(ただし、本件は対象がタピオカ関連の商品であり、「飲食物の提供」ではないことからフリーライドの意図までは認定できないであろう)。いずれにしても、本願商標と引用商標で共通するのは、緑色の二重円環図形のレイアウト及び色のみであり、これをもって全体が類似するということはできないであろう。この点は、不競法2条1項1号、2号でも同様と思われる。

としても、この後、被請求人は緑色の二重円環図形をローレル様の円環図形に変更し、中央の犬の図形を大きくし、さらに色彩もより薄い緑色のロゴに変更しており、異議申立ての効果は十分にあったといえる。