探し物はなんですか?|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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探し物はなんですか?

(パテントメディア2011年9月発行第92号掲載)
知財戦略支援部 畔上英樹

特許調査を担当している畔上(あぜがみ)と申します。
日本は、多数の技術文献を保有しています。昭和58年以降に発行された公開相当公報の累積件数は1,100万件を超えています。これほどまでの文献を相手にしていると、ときには、調査対象に関する文献が見つからずに悩むのです。

「存在していないから見つからないのか。それとも、存在しているのに見つけることができないのか。」

この問いに答えるには、発行されている全ての文献を隅々まで調査し尽くす必要があります。しかし、その答えを確かめるために、誰が1,100万件以上もの文献を全て調査しようと思うでしょうか。とても現実的ではありません。

古き名曲に「探すのをやめた時 見つかる事もよくある話で」という1フレーズがあります。
隠していたヘソクリを見つけるような「偶然的」な体験をされた方も少なくないでしょう。
しかし、特許調査は、そのような偶然に左右されて文献が見つかることはありません。膨大な文献の中から調査対象を見つけ出すには「正確性」を高める以外にはないのです。
 
ところで、ここ最近、出願前の先行技術調査のご依頼が急増しています。新規性や進歩性の有無を確かめ、事前に出願の必要性を検討することで出願経費を抑えようという動きのようですが、調査に時間をかけすぎてしまっては、新規性の喪失や先願の地位を失うことになりかねません。
つまり、出願前の先行技術調査には、まず「速さ」が要求されます。「速さ」を追求するためには、「限定した調査範囲を設定」しなければなりません。しかし、ただ限定するだけでは、「本当にないのか?」という不安を助長させるだけです。
では、不安を払拭するにはどうしたらいいのでしょうか?「正確性」を満たせばいいのです。
つまり、「速さ」と「正確性」の双方を満たすには、「適正な調査範囲を設定」すればいいのです。
「適正な調査範囲を設定」することが、いかに重要なことなのか、以下の事例を使って見ていきましょう。

ゴルフクラブを例に挙げてみます。
「ウッドクラブの金属ヘッドに中空部を形成し、中空部に発泡性樹脂を充填する」という内容を調査するとします。
 
要約文を検索範囲として、「ゴルフクラブ × ウッド × ヘッド × 中空 × 発泡 × 樹脂」 という検索を実行すると以下の特許が見つかります。


探し物はなんですか? | 2011年【公開番号】 特開平6-126002
【国際特許分類】 A63B 53/02
【発明の名称】 ゴルフクラブ

【要約】
【目的】 メタルウッド型のゴルフクラブとして、打撃性に優れ、クラブシャフトの折損を生じにくく、良好な打球感が得られ、クラブヘッドの強度を大きく向上できるものを提供する。
【構成】 クラブヘッド(10)の金属製中空シェル(11)に、上面一端側より斜め上方に突出する筒状部(14)が一体形成されると共に、底面のソール部(11b)における上記筒状部と同軸線上の位置に嵌合孔(15)が形成され、このクラブヘッド(10)にクラブシャフト(13)が筒状部(14)より中空シェル(11)内を通して嵌合孔(15)にシャフト先端が嵌合して連結固定され、中空シェル(11)内におけるクラブシャフト(13a )の周面が充填された合成樹脂発泡体(12)により直接被包されてなるゴルフクラブ。


この公報に付与されている国際特許分類を確認すると「A63B53/02」とあります。分類の内容を確認すると、「A63B53」はゴルフクラブに関する分類であることがわかります。この特許分類は、検索式に使えそうです。

しかし、この分類だけで適正な調査範囲の設定ができるでしょうか?
 
発明の本質部分が 「中空部に発泡性樹脂を充填する方法」 だったらどうでしょうか。
発泡樹脂の充填方法について、次のような特許が出願されています。


探し物はなんですか? | 2011年【公開番号】 特開平7-088874
【国際特許分類第6版】 B29C 44/00
【発明の名称】 中空構造体内部を発泡体で充填する方法

【要約】
【目的】 中空体内部を発泡体ですき間なく均一に充填された中空構造体を、幅広い条件下で製造する。
【構成】 中空体の中空部に発泡性粒子を充填後、発泡させ、中空体内部を発泡体で充填する方法において、発泡性粒子として発泡剤を均一に含有しており、発泡時に架橋構造により安定化された多泡質構造となる未発泡あるいは予備発泡した発泡性部分架橋塩化ビニリデン系樹脂粒子を使う。
【発明の詳細な説明】
・・・中空構造体としては、ゴルフクラブメタルヘッド、ゴルフクラブシャフト、・・・


この公報に付与されている国際特許分類は「B29C44/00」で、この分類の内容は「材料の中で発生した内部圧による成形,例.膨張,発泡」です。

一方、「金属ヘッドに中空部を形成する方法」に発明の本質があった場合はどうでしょうか。
次のような特許が調査範囲に含まれるように設定する必要があるのではないでしょうか。


探し物はなんですか? | 2011年【公開番号】 特開平9-174187
【国際特許分類】 B22C 9/06
【発明の名称】 金 型

【要約】
【課題】 中空部を有する成形品、例えばゴルフクラブヘッドの構成部材を成形するための金型を提供する。


この公報には国際特許分類として「B22C9/06」が付与されています。この分類の内容は「鋳型または中子における形状体鋳造品用永久鋳型」です。

上記いずれの場合も、「ゴルフクラブ」に関する分類だけで調査範囲を設定した場合は、「見つからなかった」という結論になってしまいます。

「発泡性樹脂の充填方法」に本質があるとするならば、ゴルフクラブに関する分類より、むしろ「B29C44/00」を検索式に使うべきだと思います。また、「中空構造体の製造方法」に本質があるならば「B22C9/06」を使うべきでしょう。
もちろん、網羅性を重視するうえでは、これらの特許分類を併用することが望ましいのは言うまでもありません。

いかがですか?このようなシンプルとも思える内容であっても、発明の把握が異なれば、調査範囲の設定に大きな違いが生じることをお分かりいただけたと思います。

つまり、発明の本質を捉え損なえば、調査範囲が適正なものではなくなってしまい、存在しているはずの文献が見つからなくなってしまうのです。裏を返せば、発明の本質をしっかりと把握してさえいれば、「速さ」と「正確性」をもって発明に関する文献の有無を調査することができるのです。

従いまして、特許調査をするにあたっては、発明の本質部分を把握するところから始めましょう。それが適正な調査範囲を設定する第一歩です。

「探し物はなんですか?」 
私は、自問自答を繰り返しながら調査の日々を送っています。夢の中へ行っても調査していることはそう珍しいことではありません・・・。ちなみに、夢の中では、私は探し物をすぐに見つけることができるスーパーサーチャーです。願望がそのまま夢に出ているようです。

最後に

先行技術調査の重要性と難易性に鑑み、弊社では先行技術調査の精度向上に関するQC活動を実施しています。
具体的には、拒絶確定の出願を題材にして、審査官が引用した文献を見つけるための検索式について事例研究を行っています。
「速さ」と「正確性」を心がけて先行技術サービスの向上に努めています。是非、弊社サービスの利用をご検討ください。

そして、事例研究の成果は、メールマガジンという形で配信をしています。(巻末でご案内をまとめています。)

本稿では、特許分類の使用に関してのみ言及いたしましたが、メールマガジンでは特許分類を使った具体的な検索式の事例を多数ご紹介しています。ご参考にしていただけると幸いです。

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