日本と諸外国における画像意匠の保護|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

日本と諸外国における画像意匠の保護|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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日本と諸外国における画像意匠の保護

(パテントメディア2018年5月発行第112号掲載)
特許業務法人オンダ国際特許事務所 意匠部

近年、製品のデジタル化や、IoTが急速に進み、様々な場面で画像デザインが使用され、その重要性は日に日に高まっています。 
保護対象となる画像は国によって違いがあり、日本では意匠登録できない画像が、外国では登録できるケースもあります。
本稿では、日本における画像意匠の保護対象(保護要件)に軸足をおきつつ、米国、欧州共同体(以下、「欧州」)、中国との違いを検証し、さらに各国での登録事例を概観していきたいと思います。

1.我が国で保護される画像意匠について

【意匠法第2条第1項】
「意匠」とは、物品(物品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
【意匠法第2条第2項】
前項において、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合には、物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る)の用に供される画面であって、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示されるものが含まれるものとする。

日本においては、意匠法第2条第1項、第2項に規定されている「意匠」に該当する画像デザインが保護対象となります。そのため、まず前提として、

①画像を含む意匠に係る物品が、意匠法上の「物品」と認められるものであること
②物品の表示部に表示される画像が、その物品に記録された画像であること

を満たす必要があります(意匠法第2条1項)。
さらに、この①、②に加え、次のいずれかに該当しなければなりません(同2項)。
③物品の表示部に表示される画像が、その物品の機能を果たすために必要な表示を行う画像であること
④物品の機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像であり、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示される画像であること

簡単にまとめると、日本で画像デザインを保護するためには、
・登録を受けようとする対象が物品であること(物品性)
画像と物品の機能又は操作との関連性(機能・操作性)
当該物品またはこれと一体として用いられる物品に表示される画像であること
が必要ということになります。

以上の3点について、米国、欧州、中国との対比をまとめたのが下表1です。

表1

 
日本
米国
欧州
中国
物品性 画像が表示される物品との関連性が必要 「製造物品(又はその一部)に具現又は応用された意匠」である必要があるため、物品から切り離して登録することはできない。 画像が表示される物品との関連性は要求されない。

また、「物品の名称」は意匠の保護範囲に影響を与えない(欧州共同体意匠規則36条(6))
画像デザイン自体が保護対象となっているため、画像デザインを表示するあらゆる物品に権利が及ぶと考えられる。
e.g. 「デジタルカメラ」として登録しても、その他の物品に使用された画像にも権利が及ぶ

電子的に表示したもののみならず、製品に印刷したものに対しても権利が及ぶものと考えられる。

画像が製品との関連性を持っている必要がある。
機能・操作 ・その物品の機能を果たすために必要な表示を行う画像であること
・物品の機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像であること
どちらかが必要
物品の機能や操作との関連性は求められていない。
機能や操作と関連しない、装飾のみを目的とするデザインも保護可能。
物品の機能や操作との関連性は求められていない。
機能や操作と関連しない、装飾のみを目的とするデザインも保護可能。
機能・操作との関係が必要
・Human-computer interaction (人とコンピュータの相互作用)に関するものであること
・製品機能の実現と関連性があること
当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示される画像 当該物品の使用の際に同時に用いられる他の表示機機に表示される画像も保護が可能 一体的である必要はないと解釈される。 当該物品またはこれと一体として用いられる物品に表示される画像でなくても保護可能。
「画像」自体が保護対象
日本と同様に当該物品の使用の際に同時に用いられる他の表示機機に表示される画像も保護できる。
・テレビモニターに表示される磁気ディスクレコーダーの操作画像
・データ表示機に表示される付加機能を有する電子計算機の操作画像 など

米国と中国では、日本同様に物品性が要求されるのに対し、欧州では物品性が必要なく、画像そのものを保護対象としています。
また、機能・操作との関連性や、当該物品またはこれと一体として用いられる物品に表示される画像であるか否かについては、中国が日本とほぼ同じであるのに対し、米国、欧州は一体として用いられる物品である必要がありません。(ただし、欧州と中国では実体審査がないため、方式的要件を満たした意匠であれば原則登録になります。)

さらに、日本では上記の登録要件があるために、下表2のA~Cに該当する画像は原則として保護されません。

表2

 
日本
米国
欧州
中国
A:物品と認められない画像
(e.g. グラフィックシンボル/アイコン/タイプフェース/キャラクター)
保護されない。
ただし、物品の部分意匠としてならば保護が可能。
タイトルを「表示画面のためのアイコン」等とすることにより実質的に保護可能。 保護可能。 「アイコンのインターフェースを有する携帯情報端末」等、インターフェースとして登録できる可能性がある。
B:装飾表現のみを目的とした画像
(e.g. 壁紙)
保護されない。 タイトルを「表示画面のための画像」等とすることにより実質的に保護可能。  保護可能。 保護されない。
C:物品から独立したコンテンツの画像
(e.g. ウェブサイトの画像/ゲームの画像/インターネットを通じて表示される画像)
保護されない。 タイトルを「表示画面のためのグラフィカル・ユーザー・インターフェース」等とすることにより実質的に保護可能。  保護可能。 保護されない。

画像出典:意匠審査基準(平成29年3月31日改訂版)

A:物品と認められない画像
「物品と認められない画像」とは、表示される物品を限定していない、画像そのものを指し、例えば、アイコンやタイプフェース、キャラクター画像等が該当します。
これらの画像は日本では登録できませんが、例えば「携帯情報端末機」等の一部(部分意匠)としてなら登録できる可能性があります。

B:装飾表現のみを目的とした画像
模様や壁紙(操作用のボタン類などがないもの)のように、「装飾表現のみを目的とした画像」も、日本では登録対象とされていません。ただし、画像中に操作画像(ボタン等)を破線で示すことで登録できる可能性があります(下図1)。

図1 操作画面を破線で示した登録例 携帯情報端末(D1567880)

C:物品から独立したコンテンツの画像
日本では、登録の対象となる画像は物品に記録されている必要があるため、例えばウェブサイトの画像や映画、テレビ番組等の、「物品から独立したコンテンツの画像」は保護対象となりません。
また「キャッシュ」のように、一時的な記録装置に保存された画像も、意匠法上の「物品」に記録された画像とは認められず、保護対象にならないとされています。

2.米国、欧州、中国における 画像意匠の保護について

一方、他国に目を転じると、今回ご紹介する3か国(地域)の中では、欧州が最も保護できる範囲が広く、次いで米国も、物品の名称等に多少の制約がありますが、日本に比べると緩やかです。
日本では登録が難しい画像であっても、米国や欧州での実施(販売、使用等)が見込まれる場合は、欧米へ直接意匠出願をするというのも一つの方法です。
なお、中国では実体審査が行われていませんが、要件としては日本と同程度に厳しいものとなっています。

3.各国における画像意匠の登録事例

次に、各国における画像意匠の登録例をご紹介します。
特に米国と欧州に関しては、日本でも登録可能な事例と、日本では登録ができない事例についてもご紹介していきます。

3-1.日本の登録事例(図2)

■日本

(1)遊技機用景品交換管理機(D1553150)

(2)フィールド機器調整、設定、管理機能付き電子計算機(D1576620)

(3)貯油タンク用監視機(D1539476) : 変化の態様を一意匠として出願

(4)音響映像記録再生機 : 変化の態様を関連意匠として出願

(5)同じ画像を使用した他物品が関連意匠として登録された例

【図2】(3)(4)に示すように、日本においては、変化する画像も、一定要件下で登録可能です。
出願の方法としては、(3)のように、変化の態様を一意匠の中に含め、変化状態も特徴の一つとして出願する方法と、(4)のように、変化の態様それぞれを関連意匠として出願する方法があります。
どちらの出願方法が望ましいかはケースバイケースですが、概ね、次のようなことがいえると思います。

(3)変化の態様を「一意匠」として出願するのに適したケース
・画像自体の形状よりも、変化の態様の方に特徴がある
・画像の変化の度合いが大きい(関連意匠出願できそうにない)
・出願件数を抑えたい

(4)変化の態様を「関連意匠」として出願するのに適したケース
・変化の態様よりも、個々の画像の形状に特徴がある
・変化の前後の画像に一定の共通性が認められる(類似範囲に含まれる可能性が高い)
・個々の画像を、固定画像としても使用できる

なお、上記(3)の出願方法をとった場合、原則として、個々の画像についての権利を取得したことにはならないため、変化しない画像や、変化の態様中に出願図面とは異なる画像が含まれるものについては、権利行使できない可能性がある点に注意が必要です。

また、【図2】(5)のデジタルカメラと電子計算機の事例のように、異なる物品に応用され得る画像の場合、物品の類否を確認するために関連意匠制度を利用することも有効です。
ただし、物品があまりに違う場合は(非類似物品:電子計算機と掘削用機械等)、表示される画像が同じであっても関連として認められない可能性が高いと思われます。

3-2.米国の登録事例(図3)

■米国

(1)D0624087
ディスプレイ・スクリーンのためのカラー画像

(2)D0416242
アイコン・イメージを備えたコンピューター・スクリーンの部分

(3)D0652843
ディスプレイ・スクリーンの一部用アイコン

(4)D0578135
推移のユーザー・インタフェースを示すディスプレイ・スクリーンの部分

(5)D0599372
通信端末のディスプレイ・スクリーン用図式使用者インターフェース

【図3】(1)のディスプレイ・スクリーンの事例のように、米国においては、日本では保護されない、「装飾表現のみを目的とした画像」や、「物品から独立したコンテンツの画像」も登録されています。
また、【図3】(2)~(4)のように、コンピュータスクリーンあるいはディスプレイ・スクリーンの部分として、アイコン・イメージやユーザ・インタフェースなども登録されています。
なお、【図3】(5)の事例のようなインターネットの検索用画面については、右図4のように日本でも同様の登録例があります。

これら【図3】(2)~(5)の画像は、画像の周囲にディスプレイ(例えば四角枠)を破線で追加するなどすれば、日本においても登録できる可能性があると考えられます。

図4 インターネットの検索用画面の登録例(D1580463)

3-3.欧州共同体での登録事例(図5)

■欧州

(1)002289991-0001
グラフィックシンボル

(2)002529073-0016
アイコン

(3)002572941-0008
タイプフェイス

(4)002409003-0001
ロゴ

(5)001981184-0008
インターネット上の画面

(6)001140156-0001
ゲーム画面

【図5】(1)~(4)の事例は、日本では保護されない「物品と認められない画像」ですが、欧州においては登録されています。
また、【図5】(5)(6)に示す、インターネット上の画面やゲーム画面といった「物品から独立したコンテンツの画像」も登録されています。
欧州では、ディスプレイなどを破線で表す必要もなく、米国のように物品名を「表示画面のための○○」とする必要もありません。

3-4.中国での登録事例(図6)

■中国

(1)303605199
グラフィカル・ユーザ・インターフェイスを持つディスプレイ 
※基礎出願図面は画像図のみ。中国出願時にディスプレイ本体の図面(6面図)を追加

(2)303550973
グラフィカル・ユーザ・インターフェースを持つプログラムされたコンピュータシステムのディスプレイ
※基礎出願図面は画像図のみ。中国出願時にも画像図のみで出願

(3)303949109
グラフィカル・ユーザ・インターフェイスを持つディスプレイ
※基礎出願図面は画像図のみ。中国出願時にも画像図のみで出願

中国には部分意匠制度が導入されていないため、画像の意匠であっても、それを表示する物品の全体意匠として出願する必要があります。
原則としては図面中にディスプレイの六面図を表す必要があると考えられますが、【図6】(1)に示すように、ディスプレイ本体の形状(六面図)は簡略化した四角枠で表し、画像と簡略化した六面図で登録された事例も見受けられます。
なお、他国において画像図のみで出願したものを基礎として、中国に優先権出願を行う場合、図面中にディスプレイの六面図を追加すると優先権が認められない可能性があります。
【図6】(2)(3)の事例は、このような点を考慮し、六面図は追加せず画像を表した正面図のみで出願・登録された可能性があります。
中国における画像意匠の審査については、まだ不明確な部分も多いため、引き続き情報収集に努めるとともに、中国代理人の助言を受けながら出願方法を決めていく必要があると思います。

4.まとめ

保護対象となる画像意匠や、求められる図面表現は、国によって、かなり違いがあることを実感していただけたと思います。
貴社の製品において、画像デザインは使用されていませんか。その製品は海外でも流通していないでしょうか。
画像デザインの適切な保護のためには、各国の違いを把握し、柔軟な出願戦略を打ち立てていくことが必要です。本稿がその一助となれば幸甚です。