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3.パテントマップの種類(後編)

前編に引き続き、様々なタイプのパテントマップを一つずつ紹介していきます。

(4)市場あるいは技術開発への参入の可能性を見るためのパテントマップ

新規事業を展開するには、市場ニーズ、技術ニーズを適格に捉え、かつ、これまでの特許出願の状況を踏まえて、参入の可能性を検討します。

図

図7は、どの応用分野において、どのような種類のICカードを使用しているのかを3D棒グラフで表示したものです。
メモリカードは「自動販売機」「バンキングシステム」「カード処理システム」で多く使用され、マイコンカードは「バンキングシステム」「自動販売機」「金融機器」での使用が多数を占めます。また、多機能カードは「電子書籍」「在庫管理」「時刻・人の登録システム(いわゆるタイムカード)」で多く使用され、非接触型カードは、非接触であるという特徴を活かして「交通制御システム」「カード処理システム」で多く使用されていることが分かります。

このパテントマップでは、特許出願が集中している部分と希薄な部分とが把握できます。
特許出願が集中している部分においては、競争が激しいことが予想されますが、逆に、その分技術的には確立され、リスクの少ない分野であると言えるかもしれません。
特許出願が少なく希薄な部分については、皆が気づいていない「すきま技術」の可能性もありますが、逆に、検討しても意味が無い技術分野のため、誰もが手を付けていない可能性もあります。

十数年前、私がまだ駆け出しのサーチャーだったころ、市販の表計算ソフトウエアを駆使してバブルチャートを作成するには多くの時間を要しました。そのため、手軽に分布状況を見たいときには、この3D棒グラフを作成していました。しかし、最近ではバブルチャートを簡単に作成できるパテントマップ作成ソフトが登場してきたため、3D棒グラフを作成する頻度はめっきり少なくなりました。

(5)特許の網を見るためのパテントマップ

ある製品について、その製品の「どの部分に」「どんな特許があるのか」を一目で把握することができるパテントマップです。

図

図8は、折りたたみ式の車椅子に関する特許について、車椅子の全体図を中央に記載し、関連する特許を引き出し線を使って、全体図の周辺にイラスト的に表現したパテントマップです。
折りたたみ式車椅子の構成部位、部品、機構に関連する特許として、「折りたたみ方式」「座席」「アームレスト」「フットレスト」「車輪」「ブレーキ」「リクライニング」などの特許の存在を瞬時に確認できます。

また、この要素別表示マップの中で、自社特許と他社特許との識別表示をすれば、自社と他社との勢力争いの様相が一目で把握することができます。さらに、各特許の生存、死滅の識別を表示することにより、注意しなければならない特許がどの部分にあるのかを識別することも可能です。
自社特許のみを掲載した要素別表示マップを作成すれば、特許網の構築状況を把握することができ、自社の強みと弱みを分析する際に用いることが可能です。某社の乾式コピー機の特許網作りには、この要素別表示マップが活用されたという話を皆様もお聞きになったことがあるのではないでしょうか。

(6)技術の発展状況を見るためのパテントマップ

ある技術分野の代表的な特許を時系列、系統的に並べて、技術の発展状況を示したパテントマップが時系列流れ図です。

図

図9は、電動ノコギリの「のこ台」「テーブル」「切断片の除去装置」の各部位に関する特許を出願年度の時系列で記載しました。さらに、各部位ごとの時系列の中では、技術の発展とともに新たに生まれてくる課題とそれに対する各社の特許出願を系統的に並べました。
「のこ台」においては、台の「傾斜調整」という課題、「テーブル」においては、ワークの「支持・位置決め」や「斜め切り」という課題に各社が取り組んでいる様子が伺えます。

このパテントマップにより、技術開発の大きな流れを把握し、技術開発の方向性を模索することができます。

(7)技術開発の課題を把握するためのパテントマップ

当該技術分野の出願に記載されている課題を整理して、時系列に並べたパテントマップです。

図

図10は、半導体レーザの技術課題の時系列での変遷を表すバブルチャートです。

半導体レーザに関する特許の技術課題を整理して縦軸にプロットし、各技術課題の出願年度別の件数をバブルの大きさで表示しています。これにより、どのような技術課題にいつ頃着目しているのかを把握することができます。

(8)スケルトンマップ

第一軸の項目と第二軸の項目との連関図をコンピュータが関係度に応じて自動作成するパテントマップです。

図

図11は、燃料電池関連特許(約2万件)のスケルトンマップです。
第一軸はFI(ファイルインデックス)のサブクラス、第二軸はキーワードです。燃料電池の関連特許上位25個のFIを抽出し、抽出されたFIとゆかりが高いキーワードがぶら下がり、繋がっています。骨組みのような連関図であることからスケルトンマップと呼ばれています。
燃料電池の関連特許の場合には「固体酸化物型、固体高分子型、溶融炭素型、リン酸型」といった、燃料電池のタイプが存在することが分かり、電極などの電池の構成要素や、燃料電池の用途などが含まれていることが把握できます。

このようなスケルトンマップを作成することにより、約2万件という大量な特許公報に基づいて素早く要素技術を把握することが可能です。そのため、新規分野に関する特許の概要を効率的に把握したい場合に、とても有用なマップといえます。

また、例えば調査漏れを極力出したくないクリアランス調査の場合には、各要素技術について更なる調査の必要性を検討する手助けにもなります。

(9)アンカーマップ

第一軸となるアンカー(いかり)項目を回りに配置し、それらのアンカー項目どうしで第二軸となる項目の引っ張り合いをした結果の構図がアンカーマップです。

図

図12は、歩行ロボット関連特許(約1.2万件)のアンカーマップです。
アンカー項目の第一軸は出願人、第二軸はキーワードです。外側に配された出願人がキーワードの引っ張り合いをした結果を表しています。出願人名の近傍に来ているキーワードは、その出願人によって使用頻度が高かったことを示しています。逆に、出願人である各社が均等に使用するキーワードは、引っ張り合いの結果、中央部分に配置されます。
このようなアンカーマップを作成することにより、約1.2万件という大量な特許公報の1件1件を読まなくても、出願人各社の特徴を推測することが可能です。

歩行ロボットの場合には、機械的なメカ構造に注力する会社と、制御的なソフトウエアに注力する会社が見られ、各社の技術開発の方向性の相違を確認できました。

(10)パイチャート

バブルチャートの各バブル内のシェアまでを表したグラフがパイチャートです。(1)縦軸項目、(2)横軸項目、(3)バブルの大きさ、(4)バブル内のシェアの4軸の情報を一つにして表示することができます。

図

図13は、歩行ロボット関連特許(約1.2万件)の課題に関するパイチャートです。縦軸にはコンピュータがテキストマイニング技術を用いて抽出した課題をプロットし、横軸には出願年をプロットしています。各課題の特許出願が何年に何件出願されたのかをバブルの大きさで表示し、さらに、バブル内の出願人別のシェアを一つ一つのバブルが表示しています。
このようなパイチャートを作成することにより、「どのような技術課題に、どこの会社が、いつ頃から着目しているのか?」ということを把握することができます。

歩行ロボットの場合には、自動車メーカーの本田技研工業が安定性を課題とする歩行ロボットの基本的な特許を1990年代から出願していることが分かります。また、ペットロボットで著名なソニーでは、「エンターテイメント性」という課題に着目していることが分かりました。

(11)引用フロー

特定の特許出願が、後願の拒絶理由として引用された系譜や、その特許出願に対する先行技術として拒絶理由に提示された先願特許の系譜をフローとしてまとめたものが引用フローです。

図

図14は、ゴルフクラブ関連特許(約8,000件)の中で、引用された回数が多い特許出願のベスト3に対する、引用、被引用の関係を時系列のフローにて表示したものです。
ゴルフクラブ関連特許の中で、引用された回数が多かった上位3件の特許出願は、「金属中空ヘッド」「打球計測技術」「異種金属製ヘッド」の3件でした。その3件の特許出願それぞれに拒絶理由として提示された被引用特許と、その3件の特許出願が拒絶理由通知として利用された引用特許の系譜をフローで表しています。
このような引用フローを作成することにより、重要特許の見極めや、技術の発展の流れを把握することができます。

 

今回は、「パテントマップの種類」の後編として前編に引き続き、各種パテントマップの紹介と読み取れる内容について解説しました。

パテントマップによって見えてくる情報が異なることがお分かりいただけたと思います。
パテントマップを作成する際には、活用目的に応じたものでなければなりません。最後に留意点をまとめておきましょう。
(@)対象とする母集団は適切か。
(A)縦軸・横軸などの表示項目は適切か。
(B)表示項目軸の範囲は適切か。

作成したパテントマップは、単独でも活用できるものですが、複数個のパテントマップを並べて比較することにより、傾向や特徴を深く把握することができます。

今回はここまでです。

次回からは、私達が使い勝手が良いと考えている、「技術系統図型パテントマップ」について、概要や作成例、活用事例をご紹介していきます。


 

 

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