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パテントマップをつかいこなそう 「はじめに」

パテントマップは、特許情報を研究開発活動に役立てるための有用なツールです。本稿では、各種パテントマップの概要を説明するとともに、問題となる他社特許の把握から特許ポートフォリオ(自社特許網)の構築まで活用可能な技術系統図型パテントマップの作成と活用事例を中心にお話します。
競合他社より先行し優れた研究開発活動を実施するために、研究開発部門と知的財産部門とが密接に連携を図り、特許情報を有効活用することが求められています。そのためにも、戦略的な発想と意思決定に役立つツールとしてパテントマップを効果的に活用しましょう。

1. パテントマップとは

まず、「パテントマップ」について定義しておきましょう。

「パテントマップ」とは、膨大な特許情報を、特定の利用目的に応じて収集・整理・分析・加工し、かつ図面、グラフ、表などで視覚的に表現したものです。

膨大な特許情報→

特許の年間公開件数は、日本国内だけでも約40万件

利用目的に応じて→

何が見たいの? 何を知りたいの? 何に使いたいの?

視覚的に表現→

一目で分かる、全体像が見える、比較できる

パテントマップは、その利用目的、作成方法、表現方法により様々な種類が存在します。「パテントマップ」と言われて、100人が思い浮かべるパテントマップの形態は、100種類あると言っても言い過ぎではないかもしれません。

次に、パテントマップに要求される機能について考えてみましょう。

2. パテントマップに要求される機能

パテントマップは、その活用目的や活用場面に応じて、いろいろな機能が求められています。そこで、パテントマップに要求される機能を整理してみました。

図

図1に示したとおり、パテントマップが備えるべき機能として、「発明が理解できること」「技術毎にグルーピングされていること」「発明相互の関係が把握できること」「全体像を俯瞰(ふかん)できること」「技術の変化が時系列で理解できること」などが挙げられます。また、パテントマップを活用する場面で要求されることとして、「アイデアの追加更新が逐次できること」「創出活動に活用できること」「技術開発とのリンクしている状態が理解できること」などが挙げられます。
このような要求に答えるためのポイントをとしては、「技術系統図型のパテントマップを採用する」「電子化によりパソコン内で閲覧可能にする」「創出活動の補助マップを併用する」「マクロ分析した統計的マップを併用する」「パテントマップ活用事例を整備する」ことが考えられます。

パテントマップを作成する際には、これから作成するパテントマップに何を求めるのかを明確にしてから検討を始めましょう。利用目的に応じて作るべきパテントマップは異なるのです。

3. パテントマップの種類(前編)

この章の前編、後編では、様々なタイプのパテントマップを一つずつ紹介していきます。
パテントマップは、その利用目的、作成方法、表現方法により、次のように分類されます。(出展:発明協会発行「パテントマップシリーズ」)

A.利用目的による分類
・競合企業の出願動向、技術動向を探る。
・技術開発のためのヒントを得る。
・技術を体系的に把握する。
・技術開発時や製品化時において、他社の権利の状況を把握する。
・特定技術の技術開発の広がり、開発の特質を探る。
・技術予測を行なう。
・他社の利用できる技術を発見したり、その状況を見たりする。
・強い特許を取得するために利用する。

B.作成方法による分類
・特許情報の書誌情報・検索情報などを用いて、統計的手法により作成する。
・それぞれの特許文献に記載された技術内容を個別に分析し、整理して作成する。

C.表現方法による分類
・リスト形式または表形式(マトリクス表示含む)
・ダイヤグラム
・グラフ(折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフ、分布グラフ、レーダーチャートなど)
・スケルトンマップ
・アンカーマップ
・パイチャート
・イラスト的表現

このように、分類分けされた項目を羅列しただけでも、多種多様なパテントマップが存在することがお解かりいただけると思います。
では、ここからは、代表的なパテントマップをご紹介していきます。

(1)技術開発活動と参入の可能性を読むためのパテントマップ

最初にご紹介するのは、特許出願件数と出願人数を年次毎にプロットしたパテントマップです。特許出願件数(技術開発活動)と出願人数(参入企業数)との関係を見ることにより、当該技術が市場において基礎研究段階であるのか、応用研究段階であるのかを把握することができます。当該技術の開発ステージがどのような状況にあるかが把握できるため、新規参入のタイミングを検討する際の目安となります。

図

図2は、超電導技術に関する出願人数と出願件数を1971年から1995年まで5年毎にプロットしたグラフですが、2つの開発ステージの段階が見て取れます。
1971年〜1980年までは第1次発展期として、当時は目新しい技術であった超電導技術がブーム的な様相で多くの企業が研究開発を行なうことにより出願人数も出願件数も増加しています。しかし、1975年以降はブームが終わり、淘汰されて生き残った企業だけに絞られたため、出願人数が減少しています。
1985年以降の第2次発展期では、基礎研究の段階からから応用研究の段階へ移行し、それまでに確立された超電導技術を核として応用技術開発が活発となったことにより、出願人数も出願件数も再び増加しています。

超電導技術に限らず、最近では「燃料電池技術」や「ナノテクノロジー」についても同様に、基礎研究のステージから応用研究のステージへ移行しようとしていることが予想されます。

(2)市場(技術)ニーズの変化を読むためのパテントマップ

当該技術テーマについて、出願年毎の出願件数を示すことで、既に市場ニーズがなくなっている技術や、これからの技術を見出すことができる場合があります。

図

図3は、ICカードの種類別の出願件数を出願年毎に折れ線グラフでプロットしたものです。
メモリーカードの出願件数は、1987年をピークにその後は減少傾向であるのに対し、非接触型カードの出願件数は少しずつではありますが、増加傾向にあります。
このグラフの挙動からは、メモリーカードはその役目を終えて、これからは、非接触型カードの時代となることが予想されます。

図

図4は、リサイクル処理技術に関する出願年毎の棒グラフです。1991年以降、急激に出願件数が増加しています。
このような時間軸の中で出願件数が増減するという挙動の変化には、何か理由があるはずですが、グラフを眺めていただけではその理由は分かりません。そんな時には、そのテーマに関する業界トピックを時間軸に重ね合わせてみましょう。
図4では、リサイクル処理に関する法律の名称と施行時期を重ね合わせてみました。そうすると、急激に出願件数が増え始めた1991年には「リサイクル法」が、さらに、その翌年には「新廃掃法」が施行されおり、それと合わせるように出願件数が急増していることがわかります。

このように、時系列の動向を分析する際には、そのテーマに係わる業界トピックもあわせて収集しておき、パテントマップに重ね合わせることで、グラフ挙動の変化点、特徴点の原因が見えてくることがあります。ですから、特許情報だけではなく、業界動向のトピックについても、インターネットなどで収集しておくことをお勧めします。

(3)自社と他社を比較し、強み/弱みを読むためのパテントマップ

図

図5は、国際特許分類のサブクラス毎に、左側にはT社の出願件数を、右側にはP社の出願件数を棒グラフで表すことで、左右の対比ができるようにしたものです。皆様もご存知の人口ピラミッドの統計グラフと似た形態をしています。

T社に対してP社の件数が大幅に多い分野は「G11B:相対運動に基づく情報記憶」で、逆に、P社に対してT社の件数が大幅に多い分野は「H01F:磁石、変成器等」です。単純に件数だけを比較して、多い分野が強い分野であり、少ない分野が弱い分野であると断定はできませんが、その可能性を示唆する参考情報として活用することは十分可能です。

図

1枚のグラフの中で対比を行なわなくても、別々に出力したグラフを並べて比較することも可能です。図6は、独自に付与した分野別のシェアをT社、P社それぞれに3D円グラフで表しました。
図5のように、国際特許分類やFI、Fタームなどの既製品の分類を使って統計処理を行なうことも可能ですが、図6のように独自に付与した分類を活用することで、自社のテーマに即した特許分析を行なうことができます。

今回は、メルマガシーリーズ3の導入として、パテントマップの概要についてお話しました。次回も引き続き、各種パテントマップを一つずつ解説していきます。

 


 

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