中国専利出願に関するFAQ|オンダ国際特許事務所

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中国専利出願(特・実・意)FAQ

Q.中国への専利(特許、実用新案、意匠)出願のルートを教えてください。

A.

中国への特許および実用新案出願には、直接出願、パリ条約による優先権主張出願、およびPCT(特許協力条約)に基づく国際出願から中国国内段階への移行出願の三つのルートがあります。

中国への意匠出願には、直接出願、パリ条約による優先権主張出願、および意匠国際出願・登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく意匠国際出願の中国指定の三つのルートがあります。(2024.7.4更新)

Q.実用新案で保護の対象にならないものにはどんなものがありますか?電子回路は実用新案登録可能ですか?

A.

専利法2条3項では「実用新案とは製品の形状、構造、およびそれらの組み合わせに関する実用に適する新規な技術方案を指す」と規定されています。
そのため、製品の製造方法、使用方法、通信方法、処理方法、特定の用途などは保護の対象にはなりません。
また、確定的な形状を有さない気体、液体、粉末状、粒状の物質または材料も実用新案の保護対象にはなりません。
さらに、物質の分子構造、成分等は製品の構造には該当しないため、実用新案の保護対象にはなりません。
しかし、電子回路は電子部品間の確定的な連接関係を構成するものであり、製品の構造として解釈されます。そのため、電子回路は実用新案の保護対象になります。
また、複合層(浸炭層、酸化層など)は製品の構造に該当すると解釈され、実用新案の保護対象になります。(2024.7.4更新)

Q.集積回路配置設計保護条例が施行されたとのことですが、その特徴は何ですか?

A.

集積回路配置設計保護条例は2001年10月1日に施行されました。その特徴は、日本の半導体集積回路の回路配置に関する法律とほぼ同様であると言えます。
配置設計専有権を行使するためには、国家知識産権局に登録設定する必要があります。国家知識産権局は、登録申請に対して形式審査を行います。
配置設計専有権の存続期限は10年であり、登録申請日または商業利用開始日(世界中のいずれかの国ではじめて商業的に使用された日)のいずれか早い方から計算します。

保護を受ける配置設計の全部または独創的な部分を複製する行為や、商業目的で、保護を受ける配置設計、当該配置設計を含む集積回路または当該集積回路を含む物品を、輸入、販売またはその他の方法で提供する行為は、配置設計専有権の侵害行為に該当します。このような侵害行為に対しては、差止や損害賠償を請求できます。ただし、配置設計専有権の効力は特許権などのような絶対的な権利ではなく、他人が創作した配置設計の使用を制限することはできません。

配置設計の完成日から15年後には保護の対象から外れます。また、商業的使用がはじまった日から2年以内に登録申請を行わなかった場合、それ以降は登録設定をすることができなくなります。(2024.7.4更新)

Q.コンピュータソフトウェアに関する知的財産は中国でどのように保護されていますか?

A.

中国では、主に二つの法律体系によって保護されています。

第一に、著作権法に基づく「コンピュータソフトウェア保護条例」により、ソフトウェアのプログラムそのものの表現が著作権で保護されます。これにはプログラムのソースコード、ターゲットコード、設計明細書、フローチャート、マニュアルなどが含まれています。著作権の登録は国家版権局登録センターにて行われ、登録自体が権利成立の法的要件ではありませんが、登録することにより著作権の成立を証明する初歩的証拠となります。従って、重要なソフトウェアについては登録をお勧めします。中国国家知識産権局が発表した「2023年中国知識産権保護状況」によると、2023年にはコンピュータソフトウェアの著作権登録が249.52万件に達しました。

第二に、専利法により専利権として保護されます。

中国の専利法は、日本の特許法、実用新案法、意匠法とは異なり、発明、実用新案、外観設計(意匠)を一つの法律で網羅しています。

1.コンピュータソフトウェアは形状、構造的特徴を持たないため、実用新案の保護対象とはなりません。

2.ただし、コンピュータソフトウェアの実行によって示されるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に特徴がある場合は、外観設計(意匠)としての専利権を獲得するために出願することができます。

3.コンピュータソフトウェア自体に関しては、発明専利としての保護が可能です(以下、「コンピュータソフトウェア関連発明」と略称)。コンピュータソフトウェア関連発明の保護対象は、著作権で保護されるプログラムそのものの表現ではなく、コンピュータソフトウェアを実現する技術的手段です。これにより、他者による模倣をより効果的に防ぐことができるメリットがあります。
(2024.6.26更新)

Q.コンピュータソフトウェア関連発明について、どのようなカテゴリの請求項が保護されますか?

A.

コンピュータソフトウェア関連発明に関する請求項は、2017年審査指南改正により「プログラムを記録する記録媒体」が保護対象となりました。さらに、2023年審査指南改正により「プログラム製品」も保護対象に追加されました。

現在、コンピュータソフトウェア関連発明で保護される請求項のカテゴリは以下の四つです。

・方法(構成要素:ステップ)

・装置(構成要素:手段(装置、ユニット)、プログラム、プログラムモジュール)

・プログラムを記録する記録媒体

・プログラム製品

中国では、著作権で保護されるプログラムそのものと区別するために、請求項では「プログラム製品」と明確に記述する必要があります。日本から中国への出願時には、「プログラム」請求項を「プログラム製品」請求項に補正する必要があります。

また、これまでの審査指南改正は係属中の出願にも遡及して適用されることが一般的です。出願時には保護されなったものが審査時に保護されることもありますので、出願時には可能な限り多くのカテゴリの請求項で出願することを推奨します。例えば、データ構造に関する請求項は、現在の審査実務では不明瞭として拒絶されることがありますが、将来的に保護される可能性を考慮して、出願時にこれらを含めておくと良いでしょう。

(2024.6.26更新)

Q.ビジネス方法は特許の保護対象となりますか?

A.

専利法第2条第2項では「発明とは、製品、方法又はこれらの改良に関する新規な技術方案を指す」と規定されています。

請求項には解決しようとする技術的課題に対して、自然法則を利用した技術的手段を採用し、かつ、これにより自然法則に適合した技術的効果が得られる「技術的三要素」が記載されている場合、当該請求項の解決方案は専利法第2条第2項の技術方案に該当します。

ビジネス方法は「技術的三要素」の規定を満たさない場合が多いため、特許の保護対象にならないことが多いです。

(2024.7.11更新)

Q.米国の一部継続出願のような制度はありますか?

A.

ありません。

Q.香港で特許権を取得したいのですが、どのような手続きをすればいいのでしょうか?

A.

香港では、標準特許(存続期限20年)または短期特許(存続期限4年、4年の延長可)を取得することができます。

標準特許を取得したい場合、指定国出願を経由して特許を取得するルート(指定国の審査結果を利用する制度)と香港知識産権署に直接出願するルート(OGP: Original Grant Patent)があります。

指定国出願を経由して標準特許を取得する場合、以下の二つの段階の手続きを行う必要があります。

第1段階:
中国本土出願、イギリス指定の欧州出願、またはイギリス出願のいずれかで、18か月公開後6か月以内に香港知識産権署に対して記録請求手続きを行います。

第2段階:
登録日、または記録請求の公開日から6か月以内の遅い方の日までに登録請求手続きを行います。

直接出願ルートの場合、香港知識産権署が自ら実体審査を行います(2019年12月19日より)。

一方、短期特許を取得したい場合は、香港知識産権署に直接出願を行い、形式審査のみで登録されます。

(2024.7.11更新)

Q.特許と実用新案とを同時に出願することを提案されていますが、どのようなメリットがありますか?

A.

専利法実施細則第47条の規定によると、同一の発明を同一の出願人が同時に特許と実用新案の両方を出願することができます。実用新案出願は初歩的審査(保護対象となるか、明らかに新規性がないか、形式上の不備があるかの審査など)のみで登録されるため、特許出願よりも先に登録されることが一般的です。

中国において、早期に権利化したい場合、特許と実用新案の両方を同時に出願すれば、約6か月で実用新案が登録されます。

ただし、ダブルパテントにならないように、特許出願の実体審査で登録査定された場合、実用新案を放棄する必要があります。

(2024.7.11更新)

Q.実用新案、意匠の評価報告書をいつから請求できますか?だれが請求できますか?

A.

実用新案または意匠出願は中国において初歩的審査のみで登録されるため、評価報告書制度が導入されています。

実用新案または意匠出願の登録公告日から、いつでも、国家知識産権局に対して評価報告書の作成を請求できます(権利付与前に評価報告書の作成を請求することはできません)。

請求適格者は、権利者、利害関係者、および被疑侵害者に限られ、日本の制度とは異なります。

利害関係者とは、侵害訴訟を提起できる者であり、例えば、独占実施権者または実施許諾契約において侵害訴訟を提起できる権限を持つ通常実施権者を指します。

被疑侵害者には、侵害訴訟の被告以外に、権利者からの警告書(弁護士書簡)、電子商取引プラットフォームへの苦情通知書等を受け取った者が含まれます。

(2024.7.11更新)

Q.実用新案を出願してから調査報告書が交付されるまで、最短どのぐらいかかりますか?

A.

通常、実用新案出願から権利付与までは6~8か月かかります。実用新案の出願人の場合、権利付与通知を受け取った日から2か月以内に権利登録手続きを行う際に評価報告書の作成を請求できます。評価報告書はその作成の請求日から交付されるまで、おおよそ2か月かかります。

したがって、実用新案を出願してから評価報告書が交付されるまで、最短でおおよそ8か月かかります。

(2024.7.11更新)

Q.同一の内容について、特許と実用新案とを同日に出願した場合、実用新案権を行使して、その後により狭い範囲で特許権が成立したときには、すでに受け取ったライセンス料、損害賠償金は返還しなければならないでしょうか?

A.

ダブルパテント禁止の原則により、特許権と実用新案権の両方を同時に保持することはできません。特許出願は実体審査が行われるため、審査を経て権利付与されるときに審査官から実用新案権を放棄するかが聞かれます。実用新案権を放棄しない場合は、特許出願が拒絶査定となります。特許権を選択せずに実用新案権を選択して残すことは可能ですが、その場合、実用新案権に無効理由が含まれる可能性が高いです。

一方、特許権が成立し、実用新案権を放棄した場合、実用新案権者が悪意によって他人に損害を与えた場合を除き、ライセンス料等の返還の必要はありません(専利法第47条)。つまり、中国の実用新案制度には日本の実用新案法第29条の2および第29条の3に相当する規定が存在しません。

中国の実用新案権は、日本の実用新案権に比べて権利行使に対する制約がなく、立派な権利であると言えます。

(2024.7.11更新)

Q.意匠出願について、実体審査をするのでしょうか?出願書類に意匠に関する簡略説明を必ず添付しなければならないでしょうか?

A.

中国では、意匠出願に対して初歩的審査を行いますが、実体審査は行いません。

専利法第27条の規定によれば、意匠出願には、願書、意匠の図面または写真、および当該意匠に対する簡略な説明を添えて提出しなければなりません。つまり、意匠に対する「簡略な説明」の提出は、日本では要求されませんが、中国で意匠を出願する際には必要となります。

また、専利法第64条第2項の規定によれば、意匠権の保護範囲は図面または写真に示される当該製品の意匠を基準とし、「簡略な説明」は図面または写真に示される当該製品の意匠の解釈に用いることができます。「簡略な説明」は意匠権の保護範囲の解釈に用いられるため、現地代理人によって作成された「簡略な説明」を確認してから出願依頼をすることが推奨されます。

(2024.7.11更新)

Q.意匠権と著作権の保護対象にどのような違いがありますか?

A.

意匠権の保護対象は「製品の全体または部分の形状、模様、そして、色彩と形状または色彩と模様との組合せに対して行われた、美観に富みかつ工業上の応用に適した新たなデザイン」です。

一方、著作権の保護対象は作品そのものであり、必ずしも工業上の応用に適した製品が著作権の保護対象とは限りません。例えば、児童椅子のデザインは、著作権の保護対象に該当しないという、中国の法院による判決があります。

製品の製造を差し止めたい場合は、意匠権に基づく権利行使が必要です。

(2024.7.11更新)

Q.専利(特許、実用新案、意匠)権に基づく権利行使では、損害賠償請求の他に、不当利得の返還請求は可能でしょうか?

A.

専利権に基づく権利行使では、損害賠償請求と不当利得の返還請求の両方が可能です。しかし、権利者の損害が損害賠償によって完全に補填された場合、それ以上の不当利得の返還請求はできません。不当利得の返還は、権利者が被った損害の額を限度として請求することができます。通常の侵害訴訟において、損害が認定されると、それが全ての損害額とみなされるため、実務上不当利得返還請求はそれ以上認められないことが一般的です。

(2024.7.11更新)

Q.専利(特許、実用新案、意匠)侵害訴訟に要する期間はどのくらいでしょうか?

A.

通常、無効審判の請求がなければ、第一審は1年以内に決着がつくのが一般的です。しかし、無効審判が請求されると、これに約1年かかりますので、その分訴訟は遅れることになります。

(2024.7.11更新)

Q.間接侵害はどのように規定されていますか?

A.

専利法には間接侵害に関する規定がありません。しかし、ある実施行為が専利製品または専利方法を直接侵害する行為に該当しない場合でも、その実施行為が他人にその専利権の実施を教唆、誘導する行為に該当する場合、この行為に対して侵害責任を追及しないと、専利権者への十分な保護が図れません。

そのため、最高人民法院は2016年に「専利権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈(二)」を公布し(以下「司法解釈〔2016〕1号」と略称)、権利侵害責任法第9条の規定「他人に権利侵害行為の実施を教唆、助けを行った場合、行為者と連帯して責任を負わなければならない」を間接侵害の責任追及の法的根拠と規定しました。

「司法解釈20161号」第21条

・製品が専ら専利の実施に用いられる材料、設備、部品、中間物などであることを明らかに知っているにもかかわらず、専利権者の許諾を得ずに、生産・経営の目的で当該製品を第三者に提供して専利権侵害行為を実施させ、その提供者の行為が権利侵害責任法第9条に定められた、他人に権利侵害行為の実施を助けた行為に該当すると権利者が主張した場合、人民法院はその主張を支持すべきである。

・製品、方法に専利権が付与されたことを明らかに知っているにもかかわらず、専利権者の許諾を得ずに、生産・経営の目的で他人に専利権侵害行為の実施を積極的に誘導し、その誘導者の行為が権利侵害責任法第9条に定められた、他人に権利侵害行為の実施を教唆する行為に該当すると権利者が主張した場合、人民法院はその主張を支持すべきである。

(2024.7.11更新)

Q.知的財産権の裁判管轄について説明してください。

A.

中国の裁判制度は「四級二審制」が採用されています。これは四つの等級の人民法院と二審終審制を意味します。

知的財産権に関する裁判管轄は中国司法制度の特色とも言える「司法解釈」によって定められており、以下の通りです。

技術的専門性の高い特許権と実用新案権等の侵害訴訟の第一審:
・知識産権法院
・各省・自治区・直轄市の人民政府所在地の中級人民法院
・最高人民法院が指定した中級人民法院

意匠権等の侵害訴訟の第一審:
・知識産権法院
・中級人民法院
・最高人民法院が許可した基層人民法院

土地管轄:
土地管轄は、被告の所在地または侵害行為の地の人民法院が管轄します。
・侵害行為の地には、侵害行為の発生地と侵害結果の発生地が含まれます。
・複数の人民法院が管轄権を有する場合、原告はいずれか一つの人民法院に提訴することができます。
・複数の被告が存在する場合は、いずれか一つの被告の所在地または侵害行為の地の人民法院を選択して提訴することができます。
・被疑侵害品の製造者および販売者を共同被告として侵害訴訟を提起する場合、販売地の人民法院が管轄権を有することができます。

実務上の提訴戦略
地方保護主義を避けるため、製造メーカの所在地での提訴を避け、侵害行為の地(販売地)での提訴が検討されることが多いです。

(2024.7.11更新)