商標について
新しいタイプの商標

0. はじめに
1. 輪郭のない色彩商標
2. 音の商標
3. 動きの商標
4. 位置商標
5. ホログラム商標
6. まとめ
7. お問い合わせ先

0. はじめに

特許法等の一部を改正する法律が、平成26年5月14日に公布され、商標法では「新しいタイプの商標」が導入されることになりました(この部分の施行は、公布から1年以内とされており、平成27年4月1日からが有力)。
「商標」とは、事業者が自己の取り扱う商品・役務(サービス)を他人の商品・役務と識別するために使用される標識であり、需要者はこれを目印として商品・役務の出所を区別することができます。「商標」は特許庁に登録することにより、所定の商品・役務について、その登録した権利者のみが当該「商標」を日本全国で使用できるようになります。これにより、商標権者は、他人が勝手に自己の商標を使用してその信用へのただ乗り、毀損を防止することができ、安心して自らの商標を使用することができるようになります。
ところで、商標法では、「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合と規定しています。  したがって、例えば、

のような文字や図形(シンボルマーク)からなる一般的な商標は登録可能です。(なお、「TOYOTA」の文字は、ありふれた氏(及び産地?)を普通に表したにすぎないとして通常は登録されませんが、トヨタ自動車の商標として有名になっていることから登録されたものです。)
また、平成8年の商標法改正により、平成9年4月1日から、立体的形状からなる商標(立体商標)の登録が可能となっており、例えば、

のような椅子の形状や飲料容器の形状が登録されています(ただし、これらの立体的形状は、長年使用されたことにより、当該立体的形状のみで誰の商品であるか分かる状態になっていると認められて登録されています)。
このように、文字や図形といった伝統的な商標に限らず、商品・役務の出所を識別できるのであれば、人に認識可能であれば、どのようなものであっても「商標」になり得るといえます。
そこで、今回の商標法改正では、このような新しいタイプの「商標」として「輪郭のない色彩」「音」「動き」「位置」「ホログラム」の5タイプについて、商標登録が認められることになりました。としても、なかなか言葉による説明だけではイメージしづらいと思います。そこで、各タイプごとに海外での登録例を紹介してみたいと思います(海外では欧米をはじめとして多くの国で新しいタイプの商標登録が認められています)。

1. 輪郭のない色彩商標

文字や図形と組み合わされた色彩商標ではなく、イメージカラーを商標として登録して保護するものです。

米国商標登録第2359351号(右側は使用例です。)

登録例
使用例

しばしばロビンエッグブルーと称されるような、青色の色彩から成る商標で、包装箱に使用される。様々な大きさの箱に付される本商標の位置を、破線で示している。箱の形に対する主張はない。この描写の線は青色の色彩を表し、色彩に特徴を有する商標である。

日本でも有名な宝石店ティファニーが、ロビンエッグブルー(ロビンという小鳥の卵の色)という同社のイメージカラーについて、宝石等の広範な商品について登録しています(ただし、商標の説明には、「包装箱に使用される」とされています)。
また、欧州や豪州でも下記の登録があります(権利者はおそらく分かると思います)。

欧州共同体商標登録第5978283号

登録例
使用例

豪州商標登録第749403号

登録例
使用例
(使用例画像:http://www.sej.co.jp/company/index.htmlより)

欧州共同体商標登録第4376943号

登録例
使用例
(使用例画像:http://www.tombow.com/products/mono/より)

米国商標登録第2052302号

登録例
使用例

本商標は、商品のラベルに使用される橙がかった黄色から成る。この描写の線は黄色の色彩を表す。

欧州共同体商標登録第2534774号

登録例
使用例

欧州共同体商標登録第2430916号

登録例
使用例

欧州共同体商標登録第2826428号

登録例
使用例
(使用例画像:http://www.wedgwood.jp/より)

 

2. 音の商標

音楽、音声、動物の鳴き声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標。

米国商標登録第3409865号


■音声はこちら (米国特許庁のサイトへリンク)

本件は、楽譜により出願されており、商標見本だけでは、一般人にはどのような商標(音)であるのか分からないのですが、実際に音を聞けば、権利者はすぐに分かると思います(おそらくみなさま毎日少なくとも一回は耳にしているのではないかと思います)。その他、米国登録第2210506号
「有名なターザンの叫び声、叫び声はひと続きからなる10音からなる」というような説明で表現されたものや、

欧州共同体商標登録5170113号

■音声はこちら (欧州共同体商標意匠庁サイトへリンク)

のようにソノグラム( 横軸に時間、縦軸に音の周波数、音色を色で表したもの)で登録されているものがあります(これも見ただけでは音が認識不可能ですが(商標の特定としては完全かもしれないが)、ある動物の鳴き声です。映画好きの方なら想像できるかもしれません)。
いずれにしても、商標の特定や公示によって一般人が商標を容易に認識できるかに問題があることから、日本では楽譜のみの出願は認められず、必要な資料としてサウンドファイルの提出が求められるようです。

3. 動きの商標

図形等が時間によって変化して見える商標です。動く平面商標のほか、動く立体商標もあり得ます(動くかに看板などもこの範疇に入りそうです)。

欧州共同体商標第登録5910831号

いわずとしれた、○○○○○○のスタート画面です。
さらに、米国ではこんなものまで登録されています!

米国登録第2793439号

登録例
使用例

米国登録第2710415号

登録例
使用例

上は、ランボルギーニの車体と並行に上方に開くドアが、動きの商標として登録されており、ドアの開き方といった、(その是非は別として)いわば機能的な特徴が商標登録されています。
下は、カモがエレベータから噴水までレッドカーペットが敷かれた通路を行進し、噴水に飛び込んで泳ぐというピーボディホテルのアトラクションであり、当ホテルの名物行事のようです。この例にによれば、アトラクションという、いわば商業的なアイデアを動きの商標として保護できてしまいそうです。

4. 位置商標

図形等の標章と、その付される位置によって構成される商標です。標章自体に識別力がない場合であっても、標章が常に商品等の特定の位置に付されることによって、識別力を獲得するというものです。言葉で説明しても分かりにくいかもしれませんが・・・

米国商標登録第2363544号

登録例
使用例

これはIBM(現在はレノボ)のコンピュータキーボードの赤色のカーソルコントロールデバイスが登録された例です。赤色のカーソルコントロールデバイスだけでは、単に赤色の丸い図形にしかすぎず、出所識別力はないと考えられます。しかし、これがコンピュータキーボードの特定の位置に付されると、誰の商標であるかを表示する目印になり得るということです(これを見た需用者がIBM社のコンピュータキーボードと分かる)。

米国商標登録第3392817号

登録例
使用例

コルセットとうさぎの耳と尾、ボウタイ、カフスからなるバニーガールのコスチュームがプレーボーイ社により商標登録されています。衣装の意匠が商標でも保護され得る例です。

5. ホログラム商標

ホログラムに映し出される図形等が見る角度によって変化して見える商標です。
ホログラムとは、レーザー反射光の干渉縞を感光材に3次元像として記録したもので、製造に高度な技術を要することから偽造防止や製品認証等に幅広く利用されており、出所表示や品質保証機能が極めて高いといえますが、需用者が視認してホログラム自体から出所を認識できるかは疑問です(もちろん識別力を有する文字や図形をホログラムにすることも可能であり、その場合は別論)。しかし、人が視認して出所の目印と理解できる場合も考えられることから、商標登録が可能となりました。

米国商標登録第3045251号

登録例
使用例

例えば、アメリカン・エキスプレス社がクレジットカードの表面に付されたホログラムを商標登録しています。ホログラムにより、製品の真贋の判定が容易になると思われますが、ホログラムまで偽造された模倣品には、おそらく通常の商標も付されているでしょうから、ホログラムを商標登録することの有用性については、若干未知数ですが、偽造ホログラム自体を準備行為として押さえられる可能性があります(商標法37条5号〜8号)。

6. まとめ

以上のように、今回の商標法改正は、伝統的な商標の概念とは異なる新しいタイプの商標が商標登録により保護することを可能にし、多様なマーケティング・広告宣伝手法を駆使した新しい時代のブランド戦略に資することになるといえるでしょう。
それとともに、新しいタイプの商標は、機能やビジネス上のアイデアを商標登録により保護できる可能性もあり、従来、特許、意匠、著作権、不正競争防止法で保護されていたものについて、商標で保護できないかを検討してみる価値が生じてきたものと思われます。

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