【台湾商標判例紹介】臺灣智慧財産法院103年度刑智上易字第108号刑事判決|外国知財情報|オンダ国際特許事務所

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【台湾商標判例紹介】臺灣智慧財産法院103年度刑智上易字第108号刑事判決

2015年6月1日掲載

上訴人:臺灣臺北地方法院檢察署檢察官
被告人: 盧佩娟、林宜謙
系爭商品:携帯電話保護ケース及び保護ケース商品
係争商標:「CHANEL」、「Monogram Double C Device」商標
商標権者:スイス商シャネル株式会社

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関連法条:
第95条 【商標権、団体商標権侵害の罪】
商標権者又は団体商標権者の同意を得ないで、販売の拡大を目的として次の事情の1つに該当するときは、3年以下の有期徒刑、拘役に処し又は新台湾幣20万元以下の罰金を科し又は併科する。
① 同一の商品又はサービスに登録商標又は団体商標と同一の商標を使用したとき。
② 類似の商品又はサービスに、登録商標又は団体商標と同一の商標を使用し、関連する消費者に誤認混同を引き起こす虞があるとき。
③ 同一又は類似の商品又はサービスに、登録商標又は団体商標と類似する商標を使用し、関連する消費者に誤認混同を引き起こす虞があるとき。
第97条 【侵害品販売の罪】
他人が行った前二条の行為と知りながら、係る商品を販売し、若しくは販売を意図して所持、陳列、輸出又は輸入したときは、1年以下の有期徒刑、拘役に処し又は新台湾幣5万元以下の罰金を科し又は併科する。電子媒体又はインターネットを利用して行ったときも、また同様とする。

判決要旨
  1. 本件係争商標の指定商品は第43類(現:第18類)の「各種ブリーフケース、手提げバッグ、旅行用バッグ及び財布」である。商品の用途は主に個人が持ち歩く鞄又は旅行用鞄である。しかし、本件の取締りで見つかった商品は携帯電話用革ケース及び保護ケースであって、携帯電話を汚さないように使う商品である。二者の商品の販売ルート、販売場所及び消費対象などは共通又は関連ではないため、被告が販売意図で陳列した携帯電話用革ケース及び保護ケースは、本件係争商標の指定商品とは同一類別ではないと判定した。
  2. 経済部智慧財産局(特許庁)の商品・サービス分類表は行政管理上及び商品検索のために制定したものであり、商品・サービスが類似するか否かの判断は、当該分類に制限されるべきではない。商標法第19条第6項の規定によると、「類似する商品又はサービスの認定は、前項の商品又はサービスの分類の制限を受けないものとする。」従って、同一分類の商品・サービスは必ずしも類似商品・役務には限らない。実務上においては、類似群の概念で制定された分類表は、商品・サービスの類似を判断する時に重要な参考になるが、実際の目的は検索しやすくためである。よって、個別の案件では一般社会の観念及び市場の取引状況を参酌すべきである。

備考:スイス商シャネル株式会社は2014年7月16日に「携帯電話保護ケース等」の商品を指定して、第1655650号「CHANEL」及び第1655651号「CC MONOGRAM」商標を登録した。

一、本案背景

上訴人は台湾台北地方法院103年智易字第82号判決を不服として上訴した。主旨は、被告が販売していた模倣品は本件商標の類似商品であるため、本件は商標法第95条第2項「類似の商品又はサービスに、登録商標又は団体商標と同一の商標を使用し、関連する消費者に誤認混同を引き起こす虞があるとき。」を適用すべきである。また、原審判決では前掲法条を見落とし、被告が販売意図で陳列した商品と係争商標の商品とは同一分類ではないとの判決は不適切であると主張した。

二、本案争点

1.類似商品であるかどうかについて、類似群コードだけで判断できるか否か?
2.商標法第97条の侵害品販売の罪に当たるか否か?

三、判決理由
(一)
原審判決では、被告が販売意図で陳列した携帯電話用革ケース及び保護ケースにある商標図様は本件係争商標と近似しているが、同一分類又は類似商品ではないと認定した。故に、商標法第95条の構成要件を満たさない。それに対して、検察官は原審判決の中で商標法第95条第2項の「類似の商品又はサービスに、登録商標又は団体商標と同一の商標を使用し、関連する消費者に誤認混同を引起す虞があるとき」の部分を見落としていると主張した。
(二)
商品の類似とは、二つの違う商品の機能、材料、生産者又はその他の要素が共通又は関連していることを指す。一般の社会観念及び市場の取引状況により、消費者は供給元が同じ、もしくは同じではないが関連性があると誤認する虞がある時、二つの商品に類似関係が存在することになる。

本件係争商標は第43類「各種ブリーフケース、手提げバッグ、旅行用バッグ及び財布」商品を指定している。商品の用途は主に個人の持ち歩く鞄又は旅行用鞄である。しかし、本案件の取締りで見つかったのは携帯電話用革ケース及び保護ケースで、携帯電話を汚さないように使う商品である。二つの商品の販売ルート、販売場所及び消費対象などは共通又は関連ではないため、被告が販売意図で陳列した携帯電話用革ケース及び保護ケースは、本件係争商標の指定商品と類似しない。

また、本件商標権者のスイス商シャネル株式会社の革製品、服飾等商品は有名ブランドで世界中によく知られている。なお、被告が販売する商品の材質、組み立て、出来具合等が悪く、販売価格も告訴人のものと大きく差があり、例え同一又は近似する商標を標示していても、一般の社会観念及びマーケットの取引状況から考えても、供給元が同じかもしくは関連性があることを消費者が誤認する虞はない。

係争商標の指定した第43類商品に類似群として第091703類コンピューター応用製品が含まれている。且つ類似商品はコンピューターのハードウェア、ソフトウェア及び個人デジタル機器用袋などである。なお、経済部智慧財産局(特許庁)の商品・サービス分類表は行政管理上及び商品検索のために制定したものであり、商品・サービスが類似するか否かの判断は、当該分類に制限されるべきではない。商標法第19条第6項の規定によると、「類似する商品又はサービスの認定は、前項の商品又はサービスの分類の制限を受けないものとする。」とされる。従って、同一分類の商品・サービスは必ずしも類似商品・役務には限らない。実務上、類似群の概念で制定された分類表は、商品・サービスの類似を判断する時に重要な参考になるが、実際の目的は検索しやすいためである。個別の案件では一般社会の観念及び市場の取引状況を参酌すべきである。前掲の通り、係争商標は第43類商品を指定していて、その類似商品は第091703類のコンピューター応用製品が含まれるからと言って、必ず被告の販売する商品が類似商品であり、消費者が混同誤認する虞があると認定することが難しい。 

四、判決結果

被告が販売意図で陳列した携帯用革ケース及び保護ケースは本案商標の指定商品と同一分類又は類似商品ではなく、且つ材質、組み立て、出来具合などが悪く、販売価格もシャネル正規品と大きく差があるため、消費者が混同誤認する虞はない。原審より更なる積極的な証拠がないため、商標法第97条侵害品販売の罪があると認定できない。よって上訴を却下する。

以上