サブコンビネーション発明の可能性|パテントメディア|オンダ国際特許事務所

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サブコンビネーション発明の可能性

2019年9月
弁理士 岡田恭伸

国内3部の弁理士の岡田と申します。
普段は、国内の特許に関する仕事を幅広く行っています。また、昨年度まで日本弁理士会の特許委員会に所属しており、昨年度は副委員長&グループ長として判例研究等を行って参りました。
今回は、サブコンビネーション発明について私見を述べようと思います。

そもそも、サブコンビネーション発明とは、特定の表現を有する請求項等の一種であり、審査基準第II部第2章第3節や第4節に定義が記載されています。その定義によれば、サブコンビネーション発明とは、「二以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明、二以上の工程を組み合わせてなる製造方法の発明等(以上をコンビネーションという。)に対し、組み合わされる各装置の発明、各工程の発明等」とあります。

個人的には、サブコンビネーション発明には、2つの装置が対となっているタイプと、全体装置に対する一部品を構成するタイプとが存在すると思っています。2つの装置が対となっているタイプの一例としては、送信装置と受信装置とが考えられ、全体装置に対する一部品としてはプリンタとインクカートリッジとが考えられます。この場合、「送信装置」と「受信装置」又は「プリンタ」と「インクカートリッジ」という2つのカテゴリの発明を1つの出願で行うことができます。

今回なぜサブコンビネーション発明を取り上げたのかといいますと、以前からサブコンビネーション発明への注目度は高まってきており、今後更に注目度が高まってくると考えているからです。

その理由は、IoT関連技術にあります。ご存知のとおり、IoT関連技術の発展に伴って、1つの装置のみで完結する発明だけではなく、複数の装置同士で情報のやり取りを行うことによって成立する発明や、複数の装置とサーバとによって構成されるシステムに関する発明が増えています。このような発明では、全体(システム)の発明だけではなく、全体の発明の一部を構成するサブコンビネーション発明で権利化を図ることが考えられます。

また、IoT関連技術を適切に保護できるように、近年の審査基準の改訂により「構造を有するデータ」及び「データ構造」についても、データの有する構造が規定する情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている場合には「発明」に該当するようになりました。

どのような「データ構造」等が「発明」に該当するか否かについては、ここでは詳細に述べませんが、誤解を恐れずざっくり言えば、何らかの目的を持つ特定の情報処理を行うために必要な特有且つ具体的な構造を有しているデータであれば、「発明」と認定される可能性は高いと考えます。この場合、データ(データ構造)と、そのデータを用いて情報処理を実行する主体(CPU等)とが協働して全体の発明を構成していると考えれば、データと情報処理の実行主体との関係も、広義の意味ではサブコンビネーション発明の一種と言えるかもしれません。

以上のように、IoT関連技術の発展に伴って生じた発明を適切に保護するための1つの手法として、サブコンビネーション発明に注目が集まってきているのかと感じます。

また、IoT関連技術の発明では実行主体が複数になり易い所、サブコンビネーション発明であれば、実行主体が複数の場合にも対応できることが期待されます。例えば、装置とサーバとのコンビネーション発明(システム)では、原則としては装置とサーバの両方を差し押さえる必要があります。この場合、例えば装置を使用している人がお客様であったり、サーバを特定することが困難であったりして、実質的に権利行使が難しいことがあります。

この点、サブコンビネーション発明では、装置単体又はサーバ単体に対して権利行使を行うことができる可能性があります。これにより、複数の主体が関与する侵害行為に対しても適切な権利行使を行うことが期待できます。

前置きが長くなりましたが、上記事情を鑑みて、サブコンビネーション発明についての新規性/進歩性の判断及び充足論の判断について、審査基準や判決を紹介しつつ、私の私見(期待)を述べさせて頂こうと思います。

<サブコンビネーション発明の新規性/進歩性の判断について>

サブコンビネーション発明の最も特徴的な部分は、「他のサブコンビネーション」に関する事項が登場することです。例えば、審査基準には、下記の例が記載されています。

例1:検索ワードを検索サーバに送信し、検索サーバから直接受信した返信情報を復号手段で復号して検索結果を表示手段に表示するクライアント装置であって、前記検索サーバは前記返信情報を暗号化方式Aにより符号化した上で送信することを特徴とするクライアント装置。(審査基準第III部第2章第4節 特定の表現を有する請求項等についての取扱いp.9より引用)

上記例では、「クライアント装置」の発明ではありますが、「検索サーバ」に関する事項、具体的には検索サーバが返信情報を暗号化方式Aにより符号化した上で送信することが特定されています。
このようなサブコンビネーション発明では、「他のサブコンビネーション」に関する事項が、実質的な発明特定事項の一部として認定されるか否かが問題となります。つまり、「他のサブコンビネーション」に関する事項が、相違点として認定される場合と認定されない場合とがあります。

この点について、審査基準によれば、「他のサブコンビネーション」に関する事項が請求項に係るサブコンビネーション発明の構造、機能等を特定していると把握される場合には、サブコンビネーション発明の発明特定事項の一部として認定する一方、「他のサブコンビネーション」に関する事項が、「他のサブコンビネーション」のみを特定する事項であって、請求項に係るサブコンビネーション発明の構造、機能等を何ら特定していない場合には、サブコンビネーション発明の発明特定事項の一部として認定しないと考えられます。

発明特定事項の一部として認定しないということは、単なる表現上の差異に過ぎず、相違点として認定されません。このため、引用発明との対比で他の相違点がなければ、新規性は否定されることとなります。

ちなみに、上記例1は、「他のサブコンビネーション」に関する事項が請求項に係るサブコンビネーション発明の構造、機能等を特定している例となります。このため、検索サーバが返信情報を暗号化方式Aにより符号化した上で送信することを示す文献がなければ、上記例1は新規性を有しています。

一方で、下記例2は、サブコンビネーション発明の発明特定事項の一部として認定されない例として審査基準に記載されています。

例2:検索ワードを検索サーバに送信し、返信情報を受信して検索結果を表示手段に表示することができるクライアント装置であって、前記検索サーバが検索ワードの検索頻度に基づいて検索手法を変更することを特徴とするクライアント装置。(審査基準第III部第2章第4節 特定の表現を有する請求項等についての取扱いp.10より引用)

上記例2では、下線部分が「他のサブコンビネーション」に関する事項に該当します。当該事項は、「クライアント装置」と何ら関連しておらず、クライアント装置の構造、機能等を何ら特定していません。このため、下線部分は、サブコンビネーション発明の発明特定事項の一部として認定されず、上記例2は、実質的に「検索ワードを検索サーバに送信し、返信情報を受信して検索結果を表示手段に表示することができるクライアント装置。」として新規性/進歩性の判断が行われます。

なお、上記例2では、例えば検索サーバが検索結果と検索手法との双方をクライアント装置に通知し、クライアント装置が検索手法に応じて異なるレイアウトで検索結果を表示手段に表示するなどといった限定があれば、発明特定事項の一部として認定される可能性が高いと考えます。

クレームを書く際の留意点としては、基本的には「他のサブコンビネーション」に関する事項を前提として、主体となるサブコンビネーションの特徴的な構成を特定することを意識すればよいかと思います。逆にいえば、サブコンビネーションにおける特徴的な構成を特定するために必要な「他のサブコンビネーション」に関する事項を記載すればよいかと思います。

また、審査の段階では、審査官は、まず「他のサブコンビネーション」に関する事項がサブコンビネーション発明の発明特定事項の一部として認定するか否かを検討し、その上で新規性/進歩性の判断を行っています。発明特定事項の一部として認定されれば、その後は通常の審査とそれほど変わらないと考えます。

一方、仮に「他のサブコンビネーション」に関する事項が発明特定事項の一部として認定しない場合には、基本的には拒絶理由通知にその旨が記載されます。

この場合、実務上は「他のサブコンビネーション」に関する事項と主体となるサブコンビネーションの構成とが密接に関連するように補正することがメインの対応となります。補正をせず意見書にて「他のサブコンビネーション」に関する事項がサブコンビネーション発明の構造、機能等を特定しているものとして機能している旨、すなわち「他のサブコンビネーション」に関する事項とサブコンビネーションの構成との関連性を主張することも考えられますが、往々にして意見書で主張するような関連性については審査官も認識しており、その関連性が認められる程度にクレームが限定されていないと判断しているケースが多いと思います。

また、「他のサブコンビネーション」に関する事項自体が不明確、又は、当該事項によってサブコンビネーションが不明確となるようであれば、明確性違反の拒絶理由が通知されます。

なお、念のために弁明させていただきますと、クレーム作成の留意点や中間対応について「そんなの当たり前だろ」というご指摘を頂きそうなくらいに簡単に記載していますが、実際には、クレーム作成、明細書作成、及び中間対応時のそれぞれにおいて、サブコンビネーション発明特有の留意事項は沢山あると思っています。例えば、「他のサブコンビネーション」に関する事項が発明特定事項の一部として認定されなかった場合に、純粋に下位概念に落とし込んでいくことだけが正解とは限りません。本当はこの辺りの点について書ければよいのですが、テクニカル(マニアック)な話になって不特定多数の方にご覧頂くのに適さないのと、ノウハウ的な要素が多分に含まれるため、割愛します。

なお、サブコンビネーション発明を複数記載した場合に単一性違反とはならないのかという懸念を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。つまり、A装置とB装置とのコンビネーション発明において、A装置に関するサブコンビネーション発明(独立クレーム)と、B装置に関するサブコンビネーション発明(独立クレーム)とを記載した場合に、単一性は大丈夫か?という懸念です。

この点について念のために説明しますと、基本的には両者は密接に関連している可能性が高いため、単一性を満たします。そもそも関連性が薄い場合には「他のサブコンビネーション」に関する事項が発明特定事項として認定されないため、そちらの問題も生じるでしょう。したがいまして、単一性について緩やかに判断している昨今では、単一性についてはそこまで心配する必要はないと考えます。

<サブコンビネーション発明の充足論の判断について>

次に、サブコンビネーション発明の充足論の判断について、以下に私見を述べます。
サブコンビネーション発明の充足論において最も重要な点としては、「他のコンビネーション」に関する事項との関係だと思っています。

まず、サブコンビネーション発明に係る製品単体での実施行為が侵害になるか否かについて考えてみたいと思います。

例えば甲がA装置とB装置とのコンビネーション発明(システム発明)のうちA装置のサブコンビネーション発明についての特許権を有しているとします。サブコンビネーション発明には、A装置に関する構成であるaと、B装置に関する構成であるbとが特定されています。

これに対して、乙がaを備えた模倣品X単品を製造・販売しているとします。乙は、模倣品XとB装置とのセットについては製造・販売をしておりません。この場合、模倣品Xを差し止めることができるでしょうか?

これについては、差し止めが可能であると考えます。根拠となる判例としては、例えば平成21年(ワ)第3529号があります。本事件では、プリンタの構成が含まれているインクタンクのサブコンビネーション発明において、インクタンク単体を侵害するといえるかが争点となり、それについて下記のように判断しました。また、本事件は控訴されておりますが、その控訴審でも下記判断が維持されています。

「被告は,本件発明1及び本件訂正発明1は,プリンタのキャリッジ上に,複数のインクタンクが各色1個ずつ,すべて装着された構成を必須とするものであり,インクタンクだけでなく,プリンタをも必須の構成要件とするものであるから,インクタンク単体の発明ではなく,インクタンクを搭載したプリンタの発明というべきであり,被告製品2単体で本件特許権1を侵害するものではないとも主張する。
しかしながら,本件訂正前の請求項1及び本件訂正後の請求項1の記載によれば,本件発明1及び本件訂正発明1は,組み合わせる装置(本件では,インクタンクを装着するプリンタ本体。)の構成を構成要件とすることにより,組み合わされる装置(本件では,インクタンク。)の構成を特定するものであるということができるから,プリンタ側の構成に係る構成要件(構成要件1A1~1A4,同1A1’~1A5’)も,インクタンクの構成を特定するために必要なものであることが認められる。
したがって,前記のとおり,被告製品2が本件発明1の構成要件及び本件訂正発明1の構成要件をいずれも充足するものである以上,被告製品2は,単体で本件特許権1を侵害するものであると認められ,被告の主張は理由がない。」

では、模倣品XはB装置に対しても使用可能ですが、B装置だけではなく、bを有さないC装置に対しても使用することができるとします。被告側としては、模倣品XとC装置との組み合わせであれば発明の構成要件の一部を充足しないから、特許権を侵害しないという抗弁が予想されます。この場合はどうでしょうか?

この問いに対する参考判例として、平成21年(ワ)第44391号(本訴)及び平成23年(ワ)第19340号(反訴)を挙げたいと思います。この事件は、102条第2項の適用や属地主義との関係について判断を示した有名な大合議判決である平成24年(ネ)第10015号(ごみ貯蔵機器事件)の原審になります。本事件では、目立ちにくいですがサブコンビネーション発明における充足性について判断がなされており、大合議判決ではその判断が維持されています。このため、サブコンビネーション発明の充足論の判断について一定の見解が示されていると考えてもよいと考えます。

さて、本事件における本件発明1は以下のとおりです。
ごみ貯蔵機器の上部に備えられた小室に設けられたごみ貯蔵カセット回転装置に係合され回転可能に据え付けるためのごみ貯蔵カセットであって,該ごみ貯蔵カセットは,略円柱状のコアを画定する内側壁と,外側壁と,前記内側壁と前記外側壁との間に設けられたごみ貯蔵袋織りを入れる貯蔵部と,前記内側壁の上部から前記外部壁に向けて延出する延出部であって,使用時に前記ごみ貯蔵袋織りが前記延出部をこえて前記コア内へ引き出される延出部と,前記ごみ貯蔵カセットの支持・回転のために,前記ごみ貯蔵カセット回転装置と係合するように,前記外側壁から突出する構成と,を備え,前記ごみ貯蔵カセット回転装置から吊り下げられるように構成された,ごみ貯蔵カセット。」(下線は筆者が付したものです。)

本件発明1は、「ごみ貯蔵カセット回転装置」と「ごみ貯蔵カセット」とのコンビネーション発明(ごみ貯蔵機器)に対する「ごみ貯蔵カセット」についてのサブコンビネーション発明と捉えることができます。そして、サブコンビネーション発明と捉えれば、このクレーム中における下線部分が「他のコンビネーション」に関する事項に相当します。

判決では、本件発明1における「ごみ貯蔵カセット」は,ごみ貯蔵カセット回転装置に係合されて回転可能に据え付けられ,かつ,ごみ貯蔵カセット回転装置から吊り下げられるという用途に限定されるか否かが争点となりました。

この点について、結論としては、本件発明1の「ごみ貯蔵カセット」は、上記用途に限定されないと判断されました。その上で、下記に示す判示のように、上記用途にも使用されるとともに他の用途にも使用される被疑侵害品は本件発明1の技術的範囲に含まれると判断されました。

「本件発明1における『ごみ貯蔵カセット』は,ごみ貯蔵カセット回転装置に係合されて回転可能に据え付けられ,かつ,ごみ貯蔵カセット回転装置から吊り下げられる構成であることが認められるものの,特段,それ以外の用途に使用されることを排除するような記載は存在しない。また,本件特許の特許請求の範囲について,本件発明1(請求項14)以外の請求項(請求項1~13,15~20)においても,…(中略)…,特段,それ以外の用途に使用されることを排除するような記載は存在しない。
したがって,特許請求の範囲の記載からみる限り,本件発明1における『ごみ貯蔵カセット』については,上記用途等に限定されるものではないと解するのが相当である
…(中略)…
被告は,本件発明1のごみ貯蔵カセットは,ごみ貯蔵カセット回転装置と必ずしも係合させることなく,回転装置欠落ごみ貯蔵機器に取り付けて使用することが可能なものについては,明確に除外しているところ,イ号物件は,乙14文献に係る公知技術に属するものであり,回転装置を備えているMarkⅢ本体のみならず,ごみ貯蔵カセット回転装置と必ずしも係合させることなく,回転装置欠落ごみ貯蔵機器であるMarkⅡ本体にも取り付けて使用できる製品であるから,本件発明1の技術的範囲に属しないと主張する。しかしながら,前記1のとおり,本件発明1のごみ貯蔵カセットについて,上記のような用途等に限定して解するのは相当ではないから,被告の主張は本件構成要件の解釈という前提において見解を異にしており,採用することができない。」(下線は筆者が付したものです。)

なお、上記のように、本件発明1がクレームに記載された上記用途に限定されないと判断されたことを鑑みれば、私としては、本件発明1は、用途発明ではなく、サブコンビネーション発明として理解する方が自然に感じます。したがいまして、本件発明1をサブコンビネーション発明として捉えることは問題ないと考えます。

また、同様の判断をした別の判決として、薬剤分包用ロールペーパ事件(平成28年(ワ)第6494号)をご紹介いたします。
本件発明の一部抜粋を以下に示します。
「A 非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け,…(中略)…,さらに角度センサの信号とずれ検出センサの信号との不一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空軸とのずれを検出するようにした薬剤分包装置に用いられ,
B 中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成り,
C ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために,支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって,その角度センサによる検出が可能な位置に磁石を配置し,
D その磁石をロールペーパと共に回転するように配設して成る
E 薬剤分包用ロールペーパ。」(下線は筆者が付したものです。)
本件発明では、構成要件A(下線部分)が「他のサブコンビネーション」に関する事項に相当します。
本事件では、本件特許権の侵害が成立するためには、
①対象製品が、構成要件Aを充足する薬剤分包装置以外には使用されないこと、
又は、
②対象製品が、構成要件Aを充足する薬剤分包装置に実際に使用されること、
が必要か否かについて争われました。

これらの争点について判決では以下のように判断されました。
①について
「本件発明は,『薬剤分包用ロールペーパ』という物の発明であり,直接には構成要件BないしDから構成されるところ,構成要件Aの薬剤分包装置に係る特定は,本件ロールペーパ等が『用いられ』るという前提のもと,本件ロールペーパ等の構造,機能等を特定するものとして把握すべきものであり,本件ロールペーパ等の用途又は用法を定めたものと解すべきではない。」(下線は筆者が付したものです。)
つまり、構成要件Aを充足する薬剤分包装置以外に対象製品(被疑侵害品)が使用される場合であっても、特許権の侵害は成立し得ると判断しています。

②について
「本件発明に係る薬剤分包用ロールペーパの技術的範囲は,構成要件BないしDと,構成要件Aによる本件ロールペーパ等の上記特定に係る事項とから画されるものと解されるから,一体化製品が上記技術的範囲に属すれば本件発明の構成要件を充足するものであって,一体化製品が構成要件Aを充足する薬剤分包装置に実際に使用されるか否かは,上記構成要件充足の判断に影響するものではないと解される。
…(中略)…
構成要件Aを充足する薬剤分包装置に使用可能な構成を有し,その他の構成要件をも充足するものとして薬剤分包用ロールペーパが生産,譲渡されれば,その時点で本件特許権の侵害は成立するのであって,その後に構成要件Aを充足する薬剤分包装置に当該ロールペーパが使用されるか否かは,特許権侵害の成否を左右するものではない。」(下線は筆者が付したものです。)
つまり、構成要件Aを充足する薬剤分包装置に対象製品が実際に使用されるか否かは充足論の判断には関係ないと示しています。

ちなみに、この平成28年(ワ)第6494号は控訴され(平成31年(ネ)第10009号)、令和元年6月27日に棄却判決が下されております。細かい違いはありますが、基本的には控訴審でも原審の判断が維持されています。
詳細には、控訴審判決では、構成要件Aの「用いられ」とは、「用いることが可能な」を意味するものと解され、対象製品が構成要件Aを充足する薬剤分包装置に「用いることが可能な」ものであれば、対象製品は構成要件Aを充足すると判断しています。このことから、対象製品が構成要件Aを充足する薬剤分包装置以外に用いられるか否かは、本件発明の技術的範囲に属するか否かの判断に影響を及ぼさないことは明らかです。
また、控訴審でも、構成要件Aを充足する薬剤分包装置に実際に使用されるか否かは、対象製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かの判断に影響を及ぼすものではないと示されています。

判決紹介が長くなりましたが、これらの判決を踏まえて先程の問いについて考えると、模倣品Xが仮にbを有さないC装置にも使えるとしても、それをもって非侵害とはならない可能性が高いと言えます。このため、模倣品Xが単体で流通しているとしても、その模倣品Xがbを有するB装置に適用できる点(模倣品XとB装置とで本件発明の技術的思想を実現できる点)を特許権者が立証できれば、模倣品Xの流通を差し止めることができると考えます。
「模倣品XがB装置に実際に使用されている点」を立証するとなると、非常に立証が難しいものとなりますが、「模倣品XがB装置に適用できる点」であれば立証のハードルとしては下がり易くなるのではないでしょうか?
ただし、ごみ貯蔵容器事件では、上記判断をする上で、明細書の記載や被疑侵害者の実施状況なども詳細に検討しています。このため、これらの要素が重要であることも留意する必要があると思いますし、場合によっては異なる判断が出されるかもしれません。

以上、サブコンビネーション発明について簡単にご紹介と私見を述べさせていただきました。特に充足論については、慣れない方も多いと思いますし、「拡大解釈し過ぎ」などといったご意見も多々あるかと思います。もちろん、上記見解は、事務所の見解ではなく、私の私見であり、正解を示すものではありません。また、クレームの書き方、明細書の記載、実施状況等といった様々な要素によって判断が分かれると思います。このため、実際の鑑定等の場面では、より詳細な検討が必要です。特に、サーバと装置とのコンビネーション発明においては、より複雑になることが予想されます。

ただ、私としては、現行の特許法下では、サブコンビネーション発明がIoT関連技術などに代表される多様化する発明を適切に保護する手法の1つとして機能することを期待しています。

もちろん、間接侵害という手法もありますが、実施内容によっては「その物の生産に用いる物」等の要件が厳しい場合があります。実際に、ごみ貯蔵機器事件では、システムクレーム(ごみ貯蔵機器クレーム)の間接侵害は否定されました。特に、ビジネス系のIoT関連技術と「生産」とは馴染みにくい所があるのではないでしょうか?

このため、サブコンビネーション発明については、今後もその有効性について注視していきたいと思いますし、サブコンビネーション発明などを使って適切な保護を図れるように明細書作成から権利化後業務に取り組んでいきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。