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ビジネス方法特許についての制限に関する米国連邦巡回控訴裁判所による判決

2009.2.5
米国特許弁護士 ブライアン P.ファー

10年前、米国連邦巡回控訴裁判所(以下、「CAFC」という)は、State Street Bank vs. Signature Financial事件(以下、「State Street事件)という)において、大法廷(en banc)による驚くべき判決を下した。この判決では、ビジネス方法に関するクレームは、他のプロセスや方法と同様に特許性についての法的要件を満たせば特許可能であるとされた。State Street事件の判決の前には、ビジネスを行う方法は特許の保護対象から除外され、ビジネス方法クレームは特許できない発明であるとされていた。

State Street事件の判決では、方法又はプロセスが米国特許において特許を付与できる発明として適格であるかどうかを決めるための基準が設定された。すなわち、方法又はプロセスが、有用かつ具体的な、目に見える結果を生じさせる場合、当該方法又はプロセスは、State Street事件の判決に基づき、適格な発明とされることになったのである。この基準は、ビジネス方法を含む全ての方法およびプロセスに適用されることとなった。

2008年10月末に、CAFCは、Bilski事件について大法廷判決を下し、「有用かつ具体的な、目に見える結果」を判断する基準は適切でなく、むしろ、方法又はプロセスが米国特許を付与できる発明として適格であるかどうかを判断するためには、machine-or-transformation test(機械の使用又は対象物の変換の有無を検討する基準)を用いることが適切であると結論づけた。

Machine-or-transformation testにおいては、方法又はプロセスクレームが特定の機械に関連しているか、あるいは対象物を変換する場合に、当該方法又はプロセスクレームは、特許できる発明として適格であると判断される。しかしながら、Bilski事件のCAFCの判断によれば、特定の機械の使用又は対象物の変換は、クレーム範囲に意味のある制限を課すものでなければならない。

この判決により、クレームの要件としてコンピュータを記載することが、当該方法又はプロセスを特定の機械に関連させ、意味のある制限をクレーム範囲に課すに十分であるかという疑問が生じる。残念なことに、CAFCはこの問題を検討することなく、将来の事件に判断を委ねるとした。

より詳細には、Bilski事件の特許出願人は、問題となったプロセスクレームにおいて、何れの工程も特定の機械又は装置に限定されないことを認めた。つまり、出願人は、クレームされたプロセスが特定の機械に関連していることを立証できなかった。このため、CAFCはその判断を下すにあたり、クレームされたプロセスが特定の機械に関連しているかどうかを検討する必要がなく、machine-or-transformation testの変換部分を焦点にして検討した。

CAFCは、machine-or-transformation testの変換部分の要件を満たすに十分な対象物の変換例を2つ挙げている。CAFCは、物理的対象物を化学的又は物理的に変換するためのプロセスであればこの基準が十分に満たされることは自明であるとしている。CAFCは、少なくとも先の一判例においては、データの視覚的描写への電子的変換も基準を十分に満たしていることにも言及した。

Bilski事件において問題となったクレームは、商品取引におけるリスクヘッジ方法に関するものであった。クレームされた方法は、

「定価にて商品供給者により販売される商品の消費リスクコストを管理するための方法であって、
(a)前記商品供給者と前記商品の消費者との間の一連の取引を開始するステップであって、前記消費者は、過去の平均に基づく定価にて前記商品を購入し、該定価は前記消費者のリスクポジションに対応する、ステップと、
(b)前記消費者に対する対抗リスクポジションを有する前記商品の市場参入者を特定するステップと、
(c)前記商品供給者と前記市場参入者との間の一連の取引を第2の定価にて開始するステップであって、これにより、前記一連の市場参入者の取引が、前記一連の消費者取引のリスクポジションのバランスをとる、ステップと
を含む方法」

である。

クレームされた方法に関し、CAFCは、当該方法が対象物を異なる状態又は物に変換していないと判断した。すなわち、法律上の義務又はビジネス上のリスクの変換は、対象物の変換要件を満たさない抽象的なものであると判断されたのである。このため、CAFCは、クレームされた方法が米国特許により保護できる発明ではないと結論づけ、クレームを拒絶すべきであるとする米国特許商標庁の判断を支持し、控訴を棄却したのである。

実は、既にBilski事件の判決を引用した特許審判インターフェアレンス部(以下、「BPAI」という)による審決が出ている。査定系審判であるHalligan審判事件において2008年11月24日になされた審決において、BPAIは、「プログラムされたコンピュータ方法」について記載したクレームについて、machine-or-transformation testを適用した。問題となったクレーム(クレーム119)を以下に示す。

「119.各々が情報を含む複数の潜在的営業秘密の中から営業秘密を特定するための、不法行為の第1の更新から営業秘密の6つの要因に基づくプログラムされたコンピュータ方法であって、該方法は、プログラムされたコンピュータによって、

a)前記プログラムされたコンピュータが、前記不法行為の第1の更新から営業秘密の6つの要因のそれぞれに基づいて、前記複数の潜在的営業秘密のうちの1つを評価するための所定の基準を提供するステップであって、前記6つの要因は、(1)当該情報が当該企業外において知られている範囲、(2)当該情報が当該業務に関与する従業員及びその他の者により知られている範囲、(3)当該情報の秘密を保護するために当該企業が講じている手段の範囲、(4)当該企業及びその競合者にとっての当該情報の価値、(5)当該情報の作成に当該企業が投じた時間、労力、費用、(6)当該情報を他者が適正に取得又は複製できる容易性又は困難性を含む、ステップと、

b)前記プログラムされたコンピュータが、前記6つの要因のそれぞれに関する前記所定の基準に基づき、前記潜在的な営業秘密についての数値スコア値を受け取るステップと、

c)前記プログラムされたコンピュータが、受け取った前記6つの要因に基づく数値スコア値から評価指標を計算するステップと、

d)前記プログラムされたコンピュータが、前記計算された評価指標が所定の閾値を超えたときに、前記潜在的な営業秘密が営業秘密であると判定するステップと

が行われるように実施される方法。」

BPAIによれば、クレーム119で争点とされたのは、プログラムされたコンピュータが、当該方法を特定の機械に十分に関連させているか否かであった。これは、Bilski事件においてCAFCが検討を避けた問題と同じ問題であった。しかしながら、BPAIは、Bilski事件の判決における、特定の機械の使用はクレーム範囲に意味のある制限を課すものでなければならないとする指針について言及した。この指針を適用し、BPAIは、クレームに記載されるコンピュータはクレーム範囲に意味のある制限を課していないと結論づけた。具体的には、コンピュータの記載は、クレームに記載される機能的ステップを実施するために、特定されていない方法でプログラムされた汎用コンピュータを使用することを単に要件としているに過ぎないとされた。BPAIの意見は、クレーム中におけるコンピュータの記載は、単に使用分野を制限するものに過ぎず、クレーム範囲に意味のある制限を課すように当該方法を特定の機械に関連させるには不十分であるというものであった。よって、BPAIは、クレームは米国特許を付与できる発明として適格ではないと判断した。

Bilski事件の判決を引用した別の審判事件についての審決が2008年11月6日、つまりBilski事件の判決から1週間足らずで出されている。この審決は、査定系審判であるBo Li審判事件であり、米国特許を付与できる発明として適格ではないとして拒絶されたクレーム42の拒絶当否の判断においてBilski事件の判決を引用している。

Bo Li審判事件のクレーム42は方法クレームであったが、「コンピュータプログラム製品」の形式で記載されていた。このタイプのクレームは、米国特許実務家の間でよく「Beauregard Claim(ボーレガード・クレーム)」と称される。これは、1995年にCAFCで判決がなされたBeauregard事件にちなんで命名されたものであり、Beauregard事件は、発明としての適格性に関してこのタイプのクレームに焦点を当てたCAFCによる最初の判決であった。

クレーム42は以下の通りである。
「42.コンピュータで読み取り可能なプログラムコードを有する媒体を使用可能なコンピュータを備え、前記コンピュータで読み取り可能なプログラムコードが、レポート生成方法を実施するために実行されるように構成されるコンピュータプログラム製品であって、前記レポート生成方法は、
個別のソフトウェアモジュールを備えるシステムを提供するステップであって、前記個別のソフトウェアモジュールは、論理処理モジュールと、構成ファイル処理モジュールと、データ編成モジュールと、日付編成モジュールとを備える、ステップと、
構成ファイルを定義データに解析するステップであって、前記定義データは、レポートのデータ編成と、レポートの表示編成と、レポートを生成するために使用されるべきレポートデータを含む少なくとも1つのデータ源とを特定し、前記解析するステップは、論理処理モジュールからの要求に応答して、構成ファイル処理モジュールにより実行される、ステップと、
前記少なくとも1つのデータ源から前記レポートデータを抽出するステップであって、該抽出するステップは、前記論理処理モジュールからの要求に応答して、前記データ編成モジュールにより実行される、ステップと、
前記構成ファイル処理モジュールからの定義データと前記データ編成モジュールからの抽出されたレポートデータとを前記論理処理モジュールにより受け取るステップと、
前記論理処理モジュールからの要求に応答して、前記データ表示編成モジュールにより前記レポートのデータ表示編成を編成するステップであって、該編成するステップは、前記論理処理モジュールが受け取った定義データと前記論理処理モジュールが受け取った抽出されたレポートデータとを利用することを含む、ステップと
を含む、コンピュータプログラム製品。」

ご覧の通り、クレーム42はレポート生成方法に関するものである。審査官は、State Street事件の判決において言及されている判断基準、すなわち、当該方法が、有用かつ具体的な、目に見える結果を生じさせるかどうかというテストを行った結果、適格な発明ではないとしてクレーム42を拒絶した。審査官は、クレームの最終ステップは、レポートを出力しておらず、単に出力のためにレポートを準備しているに過ぎず、よって、目に見える結果がないと判断した。

BPAIは、Bilski事件の判決に基づき、State Street事件の判決に基づく論拠はもはや適用できないとの意見を述べた。BPAIはさらに、「ボーレガード・クレーム」は、数年間にわたって、特許実務において製品を記載するものとみなされてきたのであり、方法又はプロセスとはみなされていなかったこと、そして、このため、このようなクレームは、方法のステップについて記載しているにもかかわらず適格な発明であることを確認した。最後にBPAIは、複数のソフトウェアコンポーネントについて記載するクレームは、コンピュータで読み取り可能な媒体に実現されることについて言及した。したがって、BPAIは、適格な発明ではないとする審査官の拒絶理由を支持しなかった。

これら2つのBilski事件後の審決から分かるように、ビジネス方法をコンピュータプログラム製品としてクレームすることは、同じ発明をプログラムされたコンピュータ方法としてクレームする場合に比較して、審査上の利益を得られるようである。すなわち、コンピュータプログラムされた方法について記載するクレームは、machine-or-transformation testの対象となるものであるが、コンピュータプログラム製品について記載するクレームはmachine-or-transformation testの対象とならないということである。何らかのやむを得ない事情がある場合を除き、ビジネス方法について米国特許を得ようとする出願人は、この利益を利用すべく、少なくとも1項はボーレガード形式でクレームしておくべきであろう。

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