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知的財産トピックス

米国特許規則改正の暫定的差止請求認められる

2007.11.16

2007年8月21日に公表された米国特許規則の改正内容は、米国の特許実務に携わる者に非常に大きな影響を与えるものでした。当初の案からかなりかけ離れた改正規則は、2007年11月1日を施行日とし、主に次の3つの内容に分かれるものでした。なお、改正内容が非常に多岐にわたるため、詳細については省略しております。

1)クレーム項数の制限

一出願において独立クレーム5項、総クレーム25項を超えた場合には、審査補助書類(Examination Support Document、略称ESD)の提出が求められると規定されました。審査補助書類は、米国特許公報、外国特許公報、非特許文献をカバーする出願人による先行技術調査の結果を含まねばならず、かつその結果を踏まえて当該特許出願の各クレームが特許性を有することについて説明しなければならないという、出願人に大きな負担を課すものです。また、審査補助書類の提出義務は出願時にとどまらず、先の調査結果で抽出された公報よりも関連性の高い文献を引用する情報開示陳述書(IDS)の提出や、先の調査でカバーされない補正を行った場合には、さらなる調査を行って、補足の審査補助書類を提出しなければならないという負担もありました。
さらには、同一ではないものの、互いの出願のクレームに対して特許性を有するほどには異なっていない複数出願においては、複数出願のクレームの合計が、独立クレーム5項以内、総クレーム25項以内の要件を満たさなければ、各出願において審査補助書類の提出が求められることが規定されました。

2)継続審査請求(Request for Continued Examination、略称RCE)、継続出願、CIP出願の回数制限

一出願ファミリーにつき、RCEを2回以上行う場合、ならびに継続出願及びCIP出願を合わせて3回以上行う場合には、料金$400とともに、新たに提出する意見書、補正書、又は証拠がこれまでに提出されなかった理由を述べたpetitionの提出が求められることが規定されました。なお、米国特許商標庁(USPTO)の出したコメントから推測するに、2回目以降のRCEや3回目以降の継続出願又はCIP出願においてpetitionを提出しても、認められる可能性は比較的低いと考えられました。
また、分割出願のクレームは、限定要求で選択されず、かつ先の出願において審査もされていないクレームに限ることも規定されました。

3)関連出願・特許の開示義務の導入

少なくとも1名の発明者が共通し、かつ同一人により所有される、又は同一人に譲渡される予定であり、かつ出願日又は優先日が「同一又は2ヶ月以内」(先の米国の出願の利益の享受を請求している場合、その出願の出願日も含む)の米国出願・特許を開示することを義務付けることが規定されました。
また、少なくとも1名の発明者が共通し、かつ同一人により所有される、又は同一人に譲渡される予定であり、かつ出願日又は優先日が「同一」(先の米国の出願の利益の享受を請求している場合、その出願の出願日も含む)の米国出願・特許については、ターミナルディスクレーマーを提出するか、相手の出願又は特許のクレームに対して本願のクレームが特許性を有する理由について説明を行うことも義務付けられました。さらには、相手が特許査定発行前の出願である場合には、特許性を有するほどには異なっていないクレームが複数の出願に存在する理由について説明することが求められました。

以上の改正内容は、日本の企業のみならず、米国の企業にも大きな反響を与えました。例えば、製薬会社や関連出願を多く出す企業にとって、複数の出願において独立クレーム5項以内、総クレーム25項以内の要件を満たすことは非常に難しく、また管理も非常に煩雑になることが予想され、困惑の声が聞かれました。また、発明者、出願日、優先日等についてすべて把握しているのが出願人(又は譲受人)のみであることから、膨大な数の出願について関連出願・特許を検索することは大変な負担となるとの声も上がりました。

こうした中で、この規則改正に対して2件の訴訟が提起されました。1件は個人発明家によるもの、もう1件はGlaxoSmithKline社(以下、GSK社とする)によるものでした。GSK社は、Rocket Docketと呼ばれる迅速な審理を行うバージニア州東部地区連邦地裁に訴訟を提起しており、改正規則の発効前に規則発効の暫定的差止請求が認められるかどうかが話題となっていました。とはいえ、米国の特許実務家の多くは、暫定的差止請求が認められる可能性は低いであろうとの悲観的な予想をしていました。

当初10月26日に要求されていたヒアリングは、USPTOの要求により10月31日に変更されました。この直前に、第三者による意見書が3件提出されました。これらはすべて原告であるGSK社を支持するものばかりでした。USPTOは当初、他の出願人が改正規則を遵守すべく準備をしているのに、GSK社のみがこのことを問題にしているとの主張をしていました。しかしながら、規模の異なる複数の企業によって意見書が提出されたのみならず、米国知的財産弁護士協会(AIPLA)が提出した意見書には、25,000件を超える係属中の案件について関連出願・特許の有無を確認しなければならないことを述べたIBM社の宣誓書を含んでいました。これらにより、企業の規模を問わず、規則改正が非常に大きな影響を与えることが印象付けられました。

ヒアリング後、裁判所は、規則改正を発効させないことによってUSPTOに与える苦難がないわけではないが、規則改正が発効することによってGSK社が被り得る被害の方が重いと判断したこと、及び第三者による意見書から判断するに改正規則が公共の利益を害する可能性があり、規則の正当性についてさらなる審理を要することを理由として、暫定的差止命令を出しました。

今回の命令はあくまでも暫定的なものであり、USPTOが暫定的差止命令に対して控訴する可能性(この可能性は少ないとされています)や、今後の審理においてUSPTOが勝訴する可能性もあり、予断を許さない状況ではあります。しかしながら、規則改正に反対する議員を通じた政治的な働きかけも見られますし、第三者による意見書等において改正規則を出願済の案件にまで遡及させることは出願人に回復不可能な損害を与えるとの主張がなされていることから、過去の案件にまで改正が及ぶ可能性は少ないであろうとの専門家の意見も聞かれます。ただし、規則が最終的に発効した場合に備え、対応できるだけの準備を整えておくことは必要であると考えられます。

USPTOが審理のための準備時間を要求していることから、審理が開始されるのは2008年初頭と予想されています。今後の進展についてはまたお知らせ致します。

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