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判例研究/レポート

【判例研究】ランボルミーニ事件

2014年6月16日掲載
弁理士 木村達矢

 平成24年5月31日 平成23年(行ケ)第10426号 審決取消請求事件
 原告 オートモビリ・ランボルギーニ・ソチエタ・ペル・アツィオニ
 被告 株式会社リバティーウォーク
 知財高裁3部 飯村敏明 八木貴美子 知野明

事案の概要

原告は,世界的に著名な自動車メーカーであり,欧文字「LAMBORGHINI」と牛の図形等からなる引用商標を有している。
被告は,特徴的な筆記体からなる「Lambormini」との文字部分と,全体として動物の尾のように描かれた図形部分とからなる本件商標を登録するとともに、「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して,原告の製造,販売に係る自動車を模したカスタムバギーを製造,販売している。
そこで、原告は、本件登録商標は、商標法4条1項7号,10号,15号,19号に違反して登録されたものであると主張して無効審判請求をしたところ、特許庁は本件商標と引用商標とは類似しない等として不成立審決をした。
本件は、原告が無効審判請求不成立審決の取消を求めて提訴した事案である。

本件商標 引用商標
本件商標 引用商標
登録第5256629号
登録日 平成21年(2009)年8月14日
権利者 株式会社リバティーウォーク
第12類 自動車並びにその部品及び附属品
第35類 自動車並びにその部品及び附属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
登録第1507740号
登録日 昭和57年(1982)3月31日
権利者 オートモビリ ランボルギーニ ソチエタ ペル アツィオニ
第12類 自動車並びにその部品及び附属品,…

被告商品(現在も販売中)

画像http://kw-lucifer.com/index.html

事実認定(1)

被告は,本件口頭弁論に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出しないから,請求原因事実を争うことを明らかにしないものと認め,これを自白したものとみなす。自白したものとみなされる原告の主張事実及び証拠によれば,以下の事実が認められる。

「LAMBORGHINI」との引用商標も,原告又は原告の業務に係る商品「自動車(スーパーカー)」を表示するものとして,「ランボルギーニ」と称呼され,日本国内の自動車の取引業者や愛好家の間においても広く認識されるようになった。

事実認定(2)

被告は,原告の製造,販売に係る自動車を模したカスタムバギーを,「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して,宣伝し販売している。・・・原告の製造,販売に係る自動車と,被告の製造,販売に係るカスタムバギーを横に並べた動画がアップロードされている。被告は,欧文字「Lamborghini」(先頭のLの文字が大文字,その他の文字は小文字)を筆記体(斜体)で書した商標を付したカスタムバギーも製造している。

事実認定(3)

本件商標の文字部分からは,「ランボルミニ」,「ランボルミーニ」との称呼が生じ得る。この点,審決は,本件商標からは「ランボルミニ」との称呼のみが生じると認定,判断するが,本件商標に係る商標公報には,本件商標の称呼(参考情報)として「ランボルミニ」のほか,「ランボルミーニ」が挙げられていること,上記のとおり,被告は,そのホームページ上で,「Lambormini」とのアルファベットと「ランボルミーニ」との片仮名を併用していることなどからすれば,本件商標からは「ランボルミーニ」との称呼も生じ得る。

裁判所の判断 商標の類否について

本件商標は,その文字部分が看者に対し強い印象を与える部分といえるところ,本件商標の文字部分と引用商標を対比すると,本件商標の文字部分10文字中9文字が引用商標と同一であり,引用商標の中程に位置する「GH」が「m」である点のみが相違するといえる。

そして,本件商標からは,「ランボルミニ」ないし「ランボルミーニ」との称呼が生じるのに対し,引用商標からは,「ランボルギーニ」との称呼が生じ,本件商標の「ミ」ないし「ミー」と引用商標の「ギー」の部分のみが相違し,相違する音は母音構成を共通にする近似音であることからすれば,本件商標と引用商標とは,称呼において類似する。

本件商標は,字体における特徴があり,また図形部分が付加されている点で,引用商標と外観において若干の相違があるものの,全体として類似するといえる。

 → 本件商標と引用商標は,互いに類似する

商標法4条1項10号該当性について

引用商標である「LAMBORGHINI」は,本件商標の出願以前から現在に至るまで,イタリアの高級自動車メーカーである原告又は原告の業務に係る商品「自動車(スーパーカー)」を表示するものとして,日本国内の自動車の取引業者や愛好家の間で広く知られているから,他人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標に該当するものと認められる。

また,本件商標は,引用商標に類似し,本件商標の指定商品には,「自動車」を含んでいる。そうすると,本件商標は,他人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって,その商品(自動車)に使用をするものに該当すると認められる。

 → 本件商標は,商標法4条1項10号に該当

商標法4条1項15号該当性について

原告は,本件商標の出願以前から現在に至るまで,引用商標である「LAMBORGHINI」等の商標を使用して,「自動車(スーパーカー)」を製造,販売する業務を行っていること,本件商標は,引用商標と類似する商標であり,その指定商品に引用商標が使用されているのと同一商品(自動車)を含むこと,被告は,「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して,原告の製造,販売に係る自動車を模したカスタムバギーを製造,販売していること等を総合すると,本件商標は,他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標に該当すると認められる。

 → 商標法4条1項15号に該当

商標法4条1項19号該当性について

被告は,原告が世界的に著名な自動車メーカーであり, 引用商標も原告の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることや,かかる引用商標と本件商標が類似の商標であることを認識しながら,自動車等を指定商品等とする本件商標登録を行い,実際に「Lamb ormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して,原告の製造,販売に係る自動車を模したカスタムバギーを製造,販売していることが認められる。そうすると,本件商標は,被告が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認められる。

 → 商標法4条1項19号に該当

結論

特許庁が無効2010−890092号事件について平成23年8月24日にした審決を取り消す。

実務上の指針  〜パロディ商標は認められるか〜

本判決は,世界的に著名で,日本国内の自動車取引業者や愛好家の間で広く知られている商標に類似するパロディ的な商標について,商標法4条1項10号,15号,19号該当性が肯定的に判断された事案であり,実務上参考になるものと思われる。

本件商標と引用商標とは、商標類否の一般的な基準(外観、称呼、観念及び取引実情)では、非類似と判断される。しかしながら、引用商標が著名であり、これのパロディ的な商標を登録するとともに、引用商標権者の商品を模した商品(カスタムバギー)を製造販売しているという取引実情やフリーライドの意図等が考慮され、類似との判断がされたものと考えられる。

商標法4条1項10号,19号は、いずれも商標の類似を要件とする。一般的な基準では非類似であっても、取引実情やフリーライドの意図によっては、それらの事情が斟酌され、(やや強引ではあるが)類似と判断され得ることを示した点に意義がある。

また、商標法15条は、混同を要件とする。

パロディとは、「文学などで、広く知られている既成の作品を、その特徴を巧みにとらえて、滑稽(こっけい)化・風刺化の目的で作り変えたもの」であることから、原作品との関係で出所の相違が認識されていることから、一般的には出所の混同は生じないと考えられる。

しかし、この点についても、取引実情やフリーライドの意図を考慮して、混同を生ずるおそれがあると判断されたものと思われる。

なお、本判決においては,商標法4条1項7号該当性については判断されていない。

参考 パロディ商標審判決例

パロディ商標 パロディ商標
昭和32年公告審判第179号 
4条1項11号 拒絶
平成17年 4月13日/知的財産高等裁判所/第3部/判決/平成17年(行ケ)第10230号
4条1項15号
混同のおそれあり

 

パロディ商標 パロディ商標
上記を引用4条1項11号で拒絶査定→不服審判で登録審決プーマ社による異議申立て→プーマを引用して4条1項11号で登録取消し決定
第1次判決平成20年(行ケ)第10311号 4条1項11号非該当で差し戻し
第2次決定4条1項11号(シーサーを引用)、15号、19号で再度登録取消し決定
第2次判決平成21年(行ケ)第10404号 4条1項11号、15号、19号非該当→再度差し戻し→登録維持
無効審決
平成25年6月27日知財高裁 平成24年(行ケ)第10454号
4条1項15号,7号該当

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