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判例研究/レポート

【判例研究】「ずぼら焼」事件(平成17年 ( 行ケ ) 第10129号 審決取消(商標)請求事件)

2005年11月14日掲載
弁理士 木村達矢

事案の概要

本件は,原告Xと親族関係にある被告Y,Zが,原告Xを商標権者とする商標登録第4670926号の無効審判請求をしたところ,特許庁が当該商標登録を無効とする審決をしたことから,商標権者である原告Xがその取消しを求めた事案である。

事実経緯

昭和35年10月27日 X,Y,Zの父Bが本件引用商標「ずぼら焼」登録第608546号を出願
平成14年5月24日 Xが本件商標「ずぼら焼」 ( 標準文字 ) 出願
平成15年3月26日 本件登録査定
平成15年4月9日 引用商標 更新手続がされず失効
平成15年5月16日 本件登録第4670926号
平成15年11月21日  Y,Zが商標「ずぼら焼」を出願 審査継続中 (平成16年6月24日拒絶理由通知発送  第4条1項11号 )
平成15年12月8日 Y,Zが本件商標登録の無効審判請求
平成 16年2月7日 Xが商標「ずぼら焼」を再度出願 審査継続中 ( 平成17年3月4日拒絶理由通知発送  第4条1項11号 )
平成16年11月24日 無効審決

審決の内容

本件商標は,その登録査定時たる平成15年3月26日に有効に存続していたX,A,Zを権利者とする商標登録第608546号,平成15年4月9日存続期間満了により消滅,平成15年12月10日登録抹消。以下「引用商標」という。)と類似し,かつ,その指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似するものであるから,商標法4条1項11号に該当する,というものである。

争点

ア 取消事由1(手続違背)省略
イ 取消事由2(引用商標の有効性の判断の誤り)
引用商標につき昭和58年5月20日にされた商標権存続期間の更新登録は,Aが昭和57年10月28日付けでB名義で虚偽の出願を行ったことに基づいてなされたものである。そして,死者の名義でされた更新手続はそもそも存在しないから,引用商標は,商標権存続期間の満了により消滅した。
原告は単なる更新登録の無効事由を主張するのではなく,その不存在事由を主張するものであるから,除斥期間の適用を受けない。
ウ 取消事由3(登録査定日の認定の誤り)省略
エ 取消事由4(他人性の判断の誤り)
本件審決は,原告にとって引用商標は商標法4条1項11号の「他人の商標」とみるべきである旨判断するが,引用商標は,原告X,被告Z及びAが共有していたもので,その共有持分は引用商標全体に及んでいるから,原告にとって引用商標は自己の商標であり,本件審決の上記判断は誤りである。

当裁判所の判断

取消事由2(引用商標の有効性の判断の誤り)
引用商標につき昭和58年5月20日にされた商標権存続期間の更新登録に係る出願手続は,Aが,H弁理士に依頼して,昭和57年10月28日付けで,当時既に死亡していたB名義を利用して行ったことが推認されるから,上記更新登録は,「その更新登録が当該商標権者でない者の出願に対してされたとき」(旧商標法48条1項2号)に該当するというべきである。しかし,旧商標法49条により,上記更新登録の日から5年の除斥期間を経過した後(昭和63年5月21日以降)は,更新登録の有効性を争い得なくなったものというべきである。
取消事由4(他人性の判断の誤り)の有無
商標権が共有に係るときは,各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,その持分を譲渡し,又はその持分を目的として質権を設定することができないこと(商標法35条において準用する特許法73条1項),商標権存続期間の更新登録の出願人は当該商標権者に限られ(旧商標法21条1項3号),商標権が共有に係るときは,他の共有者と共同でなければ,商標権存続期間の出願をすることができないものと解されることからすれば,共有者の一部が相違するときも,商標法4条1項11号の他人の登録商標又はこれに類似する商標に該当するものと認めるのが相当である。

コメント

本件は、共有に係る商標権について、共有者の一人が当該商標の単独所有を意図して更新手続に協力せず、単独で新出願をしたものと思われます。
共有に係る商標登録の更新申請に同意書がいるか?
他の共有者の意思に反してその名義で更新申請した場合は?
→無効理由にない(平成8年改正前は「更新登録の無効の審判」の制度があった)。
→仮に無効にならないとすると、更新申請の不存在の主張は可能か?
→不存在の主張が可能とすると、共有に係る登録商標の更新申請に共有者の一部が同意しない場合どうするのか、他の共有者の救済は?

本件では、偶々新出願の登録査定が、旧出願の消滅日より前であったので、無効理由を含むことになった。→Y,Zの出願が登録されると思われる(Xの再出願は拒絶)。
本件では、何故拒絶理由通知が発されなかったか不明ですが(同一人と考えたのか?)、拒絶理由通知が発されていれば、引用商標の消滅を待って登録がされたと思われる。→これに遅れて出願されたY,Zの出願が拒絶される。

共有に係る商標権

使用は各共有者が可能(特73条2項)
譲渡、質権設定、使用許諾は同意を有する(特73条1,3項)
共有に係る商標権に対する審判は共有者全員を被請求人としなければならない(特132条2項)。
共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない(特132条3項)。
→同一の商標権についての無効審判を請求する者が二人以上ある時は、共同して審判を請求することができる(特132条1項 共同審判)。

共有者の一人が提起する無効審決取消訴訟→できる(最高裁平成14年2月22日)
〃     拒絶審決取消訴訟→できない(最高裁平成7年3月7日)
共同無効審判請求人の一部の者がする審決取消訴訟→できる(最高裁平成12年2月18日)

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