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判例研究/レポート

【判例研究】「平成14年(ワ)第10522号 商標専用使用権侵害差止等請求事件 (花粉のど飴)」について

2005年8月31日掲載
弁理士 木村達矢

◆平成14年(ワ)第10522号 商標専用使用権侵害差止等請求事件
(口頭弁論終結の日 平成15年4月22日)

判決

原告 X株式会社
被告 Y株式会社

論点

・普通名称が結合した商標の類否
・独占的通常使用権者の固有の損害賠償請求権が認められる場合
・独占的通常使用権に基づく請求の推定規定の適用の可否

参照条文

(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
 当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。次号において同じ。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標

(専用使用権)
第三十条 商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権については、この限りでない。
2  専用使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。

(差止請求権)
第三十六条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

(損害の額の推定等)
第三十八条  2  商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額と推定する。

特許法
(登録の効果)
第九十八条  次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。
 特許権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、放棄による消滅又は処分の制限
 専用実施権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は特許権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
 特許権又は専用実施権を目的とする質権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限

民法
第七百九条 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス

事案の概要

昭和55年12月24日 訴外株式会社Aが、 出願
昭和59年1月26日 訴外株式会社Aが、 登録(登録番号 第1650420号)
平成12年 春頃 原告X「花粉注意報キャンディ」販売
平成13年 春頃 原告X「花粉注意報キャンディ」販売
平成13年 春から夏 被告Y「花粉のど飴」(旧パッケージ)販売
平成13年7月12日 原告Yが「Kabaya/花粉のど飴」を商標登録出願
平成13年8月1日 原告Xに対して、使用商標「花粉のど飴」として平成13年12月1日から2年間の独占的通常使用権の許諾契約
平成13年11月頃  被告Yが、目録1,2を付したのど飴を宣伝
平成13年11月22日 Aから被告に警告書送付
平成13年12月頃 原告Xが「花粉注意報」の後継商品として 「花粉のど飴」(原告商品)の販売を開始被告が、「花粉のど飴」(本件パッケージ)販売
平成14年1月11日 被告が、Aに対し、被告商品における「花粉のど飴」の表示は本件商標権を侵害しない旨の回答書を送付
平成14年3月19日頃 交渉が決裂
平成14年2月27日 Aは、原告Xによる「Kabaya/花粉のど飴」の商標登録出願に対し特許庁長官あてに刊行物等提出書と共に本件登録商標の商標登録原簿及び商標公報を提出し,原告の出願に係る上記商標と本件登録商標は類似するので,商標法4条1項11号により,その出願は拒絶されるべきであると主張した。
平成14年3月6日 特許庁は「Kabaya/花粉のど飴」の商標については,この出願に係る商標が,商標構成中に「のど飴」の文字を有しており,これを本願指定商品中「のど飴」以外の商品に使用するときは,商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある(商標法4条1項16号)との理由で,「Kabaya/花粉のど飴」の商標登録出願を拒絶する旨の拒絶理由通知書を発した(本件登録商標と同一又は類似することは拒絶理由として掲げられていない。)。
平成14年 春頃 B「花粉のど飴」販売
C「花粉のど飴」販売
D「花粉/クールアップタイム/CUT」販売
平成14年4月1日  本件登録商標につき専用使用権設定
契約期間平成16年1月26日(本件商標権の存続期間満了日)まで
平成14年4月23日 登録

当裁判所の判断

1 争点1(本件登録商標と被告標章の類否)について

被告商品がのど飴であることに照らせば,被告標章のうち「のど飴」の部分は,標章の付された当該商品の内容,属性を示す普通名称であるから,自他商品識別機能を有しない部分である。

他方,被告標章のうち「花粉」の部分については,被告商品の属する,のど飴ないしキャンディーの分野において,通常,商品の原材料や効能・用途を意味する語ということはできない。
被告標章においては,「花粉」の部分をもって要部ということができる。

(本件登録商標と被告標章の類否)

平成10年ころから機能性食品として紹介する記事が掲載されているが,「花粉のど飴」の語が,「花粉症に効くのど飴」ないし「花粉症対策用のど飴」を意味する1個の独立した語として一般的に使用されていたことまでは認めることができず、「花粉のど飴」の語が「花粉症対策用のど飴」を意味するものであると一般的に認識されているとまでは認められない。

さらに,被告は,「花粉○○」の構成からなる標章で,商標登録がなされているものが存することをもって,本件登録商標と被告標章との非類似を主張しているが,被告の掲げる「花粉○○」という登録商標は,いずれも「○○」に当たる部分に,「にミント」,「の季節」,「STOP」,「ブロック」,「あめのち晴れ」,「注意報」,「警報」,「前線」という,それだけでは意味をなさず,「花粉」という語と結びついて一定の意味を生ずる語か,あるいは対象商品の内容等とは無関係な語が置かれているものである。したがって,これらの登録商標が存するとしても,「花粉」の語に続いて対象商品それ自体である「のど飴」の語が付されている被告標章について,本件登録商標と類似するとの判断が妨げられるものではない。

2 争点2(被告標章は商品の普通名称,効能,用途,使用の時期を普通に用いられる方法で表示する商標に当たるか)について

(1) 平成14年8月ころから,花粉症罹患者を対象としたウェブサイト上において,「花粉のど飴」の語が「花粉症対策用のど飴」の意味で用いられた例が存在することが認められるが,「花粉のど飴」の語が,「花粉症に効くのど飴」ないし「花粉症対策用のど飴」を意味する語として,一般的に認識され,使用されているとまでは認めることができない。

また,前記1(2)アにおいて認定した被告標章の使用態様に照らせば,被告標章1,2は,被告商品の大袋の表側中央部及び裏側上側のそれぞれ目につく部分に大書されているものであって,「普通に用いられられる方法で表示する」ものということもできない。
上記によれば,被告標章(「花粉のど飴」)ないしそのうちの「花粉」部分が,「指定商品の普通名称,効能,用途等を表示する商標」(商標法26条1項2号)に当たるとする被告の主張(抗弁)は,採用できない。

(2) 独占的通常使用権者による損害賠償請求の許否

ア 通常使用権者は,同人の登録商標の使用に対しては商標権に基づく権利行使をしない旨の合意を商標権者又は専用使用権者(以下「商標権者等」という。)との間で得て,商標権者等に対して当該合意に基づく債権的請求権を有するものであり,独占的通常実施権者は,これに加えて他者に当該登録商標の使用を許諾しない旨の合意を商標権者等との間で得ているものである。

独占的通常使用権者は,商標権者等に対して契約に基づく債権的請求権を有するにすぎないが,商標法は商標権者等に対して登録商標の専用権を保障しており(商標法25条,36条),商標権者等は,契約上独占的通常使用権者に対して当該登録商標を唯一使用し得る地位を第三者との関係でも確保すべき義務を負っているものであるから,独占的通常使用権者は,このことを通じて,当該登録商標を独占的に使用し,これを使用した商品を市場で販売することによる利益を独占的に享受し得る地位にあるものと評価することができる。

このように独占的通常使用権者が契約上の地位に基づいて登録商標の使用権を専有しているという事実状態が存在することを前提とすれば,独占的通常実施権者がこの事実状態に基づいて享受する利益についても,一定の法的保護を与えるのが相当である。すなわち,独占的通常使用権者が現に商標権者等から唯一許諾を受けた者として当該登録商標を付した商品を自ら市場において販売している場合において,無権原の第三者が当該登録商品を使用した競合商品を市場において販売しているときには,独占的通常使用権者は,固有の権利として,自ら当該第三者に対して損害賠償を請求し得るものと解するのが相当である。

しかしながら,証拠(甲8,乙44,45)及び弁論の全趣旨によれば,は,平成14年初めころから「花粉のど飴」の標章を付したのど飴(キャンディー)を販売していたところ,Aは,原告との間の上記使用許諾契約(第5条)に違反して,遅くとも平成14年4月までに,に対して,50万円の使用料で,同年8月末日まで本件登録商標の使用を許諾し(このことは,原告自身が訴状15頁において自認している。),これに基づいてBは「花粉のど飴」の標章を付したのど飴(キャンディー)を市場において販売していたことが認められる。独占的通常使用権者に固有の損害賠償請求権を認めるにしても,それは独占的通常使用権者が契約上の地位に基づいて事実上本件登録商標の使用権を専有しているという事実状態が存在することを前提とするものであるところ,本件においては,原告はこのような前提を欠くものである。したがって,このような原告が独占的通常使用権の侵害を理由として損害賠償を請求することは許されない。

エ 上記によれば,原告が本件登録商標につき独占的通常使用権者であった期間について,独占的通常使用権の侵害を理由として損害の賠償を求める請求は,理由がない。

(3) 専用使用権者としての損害賠償について

被告の行為により専用使用権を侵害されたことによって原告の被った損害は,6291円(計算式:83万8820円×0.15×0.05=6291円)と推定される(商標法38条2項)。

(4) 弁護士費用相当額について

本件においては弁護士費用のうち50万円をもって,被告の侵害行為と相当因果関係のある損害と認める。

・本件によれば、「花粉のど飴」の商標的表示が独占使用される結果になるが、このような結論ははたして正当か?
→要部認定すれば判決のとおりになると思うが・・・店頭で「花粉」と「花粉のど飴」が付されたキャンディーに接したらは何か違う感じもするが
→「花粉のど飴」の語が、「花粉症に効くのど飴」を意味する1個の独立した語として一般的に使用されていれば、全体として非類似とされる可能性もあった(その場合26条の適用も可能では)。
→「南天のど飴」「かりんのど飴」「カテキンのど飴」などが通常に使用されている証拠を提出して、「花粉のど飴」もいずれ一般的に使用されるとの主張はどうだったか

・結合商標の類否
→「KOZO」と「小僧寿し」

・識別力の弱い商標の得失は
→内容が伝わり易いが、印象が弱い
→権利行使段階で、品質表示に過ぎないとされるおそれもある
  強い商品出所識別機能を有しないので、顧客吸引力も弱く、寄与率が低く認定される

・普通名称を結合させた場合の、審査段階及び権利行使段階の得失は
  「花粉」と「花粉のど飴」
  「起上り」と「加賀八幡 起上り」
  「起上りもなか」「加賀八幡 起上りもなか」
→実際の使用態様を基準にすればよいか

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