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弁理士コラム「化学・バイオ特許について」

2018年9月
弁理士 中村美樹

東京オフィス所属の中村と申します。平成19年にオンダ国際特許事務所に入所し、当初は岐阜オフィスで日本のお客様の国内出願を担当しておりましたが、現在では東京オフィスに異動して内外出願及び外内出願を担当しております。

私は外内出願では主に化学・バイオ分野の案件を担当しておりますが、近年、化学・バイオ分野において重要な判例が多く出されています。本コラム執筆の平成30年7月1日現在、知的財産高等裁判所の大合議事件のリストを確認すると、平成20年以降に判決が言い渡された全8件のうち、以下の5件が化学・バイオ(医薬)に関連していました。

(1) 平成28年(行ケ)第10182号、10184号 審決取消請求事件
(平成30年4月13日判決)
「ピリミジン誘導体」事件(特許番号:第2648897号)

引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」(特許法29条1項3号)であって、当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され、当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には、特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず、これを引用発明と認定することはできない、と判断した事例

(2) 平成28年(ネ)第10046号 特許権侵害差止請求控訴事件
(平成29年1月20日判決)
「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」事件
(特許番号:第3547755号)

存続期間が延長された特許権に基づく製剤の製造販売等の差止請求について、同特許権の効力が及ばないことを理由に同請求を棄却した事例 

(3) 平成27年(ネ)第10014号 特許権侵害行為差止請求控訴事件
(平成28年3月25日判決)
「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその
製造方法」事件(特許番号:第3310301号)

製剤等の製造方法について、特許発明と均等であることを理由として、特許権に基づき製剤等の輸入販売の差止請求等が認容された事例

(4) 平成25年(行ケ)第10195号〜10198号 審決取消請求事件
(平成26年5月30日判決)
「血管内皮細胞増殖因子アンタゴニスト」事件
(特許番号:第3398382号)
「抗VEGF抗体」事件(特許番号:第3957765号)

特許権の存続期間延長登録出願に係る拒絶査定不服審判請求に対し、本件処分によって可能となった「特許発明の実施」は、先行処分によって実施できるようになっており、本件特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められないとの理由により、請求不成立の審決がなされたのに対し、特許法67条の3第1項1号の定める拒絶要件があるとはいえないとして、審決が取り消された事例

(5)平成22年(ネ)第10043号 特許権侵害差止請求控訴事件
(平成24年1月27日判決)
「プラバスタチンラクトン及びエピプラバスタチンを実質的に含まないプラバスタチンナトリウム、並びにそれを含む組成物」事件(特許番号:第3737801号)

いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの技術的範囲について、物の構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在しない場合は、その技術的範囲は、クレームに記載された製造方法によって製造された物に限定されるとした事例

さらに最高裁判所においても、化学・バイオ分野に関連して、特許・実用新案審査基準の以下の記載を改訂する契機となった複数の重要な判例が出されています。

第一に、特許権の存続期間の延長についての特許・実用新案審査基準が、二度の最高裁判決を受けて、二度にわたって改訂されました。
一度目:平成21年(行ヒ)324〜326号、平成23年4月28日判決
二度目:平成26年(行ヒ)356号、平成27年11月17日判決

第二に、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの明確性要件についての特許・実用新案審査基準が、プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する最高裁判決(平成24年(受)1204号、2658号、平成27年6月5日判決)を受けて改訂されました。

このように、特許法を取り巻く環境もめまぐるしく変化しておりますが、技術水準(特にバイオ分野)も、近年急速に発展して変化し続けています。たとえば、1996年に誕生した体細胞クローン羊「ドリー」の衝撃から20年以上が経ち、今では、iPS細胞が発明されて創薬や再生医療への応用が期待されるようになりました。医薬品売上では、2000年前半までは低分子医薬品が主でしたが、2005年頃からバイオ医薬である抗体医薬の売上が増加し、今ではかなりの割合を占めるようになっています。
現在、私は幸いにも、弁理士という立場で、最先端の様々な技術に接する機会に恵まれています。そのため、常に発展し続ける技術内容を理解できるよう勉強を続けていく必要性を日々痛感しております。法律と技術の両方の知識を向上させることを通じて、お客様にとってより良い権利を取得できるよう精進する所存です。

以上

2018年9月発行 第113号

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