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「パテントメディア」

商標登録出願のくじ引き

2017年1月
所長 弁理士 恩田 誠

10月吉日、特許庁で商標登録出願のくじ引きという大変珍しい手続に、弊所の佐久間弁理士とお客様の商標ご担当者様と共に参加しました。2015年4月1日施行の改正商標法により、音、色、位置、ホログラム、動きといった新しいタイプの商標が出願できるようになりました。今回の案件は、弊所が代理する色彩のみからなる商標です。施行日の初日に出された6件が同日出願として競合することになったのです。

商標法では、同日に2以上の出願人が同一又は類似の商標を出した場合、まずは出願人どうしで協議をするよう協議命令がされるのですが、協議が成立しない場合は、8条5項に「特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる。」とあります。「商標法のくじなんて都市伝説だ」なんて言う人もいるくらいで、めったに開催されないようです。

その「公正な方法によるくじ」が大変面白いやり方でした。特許庁16階で受付をして、控え室に通され、時間になると「くじ実施会場」に案内されます。6社のうち3社は代理人とクライアントの出席で、1社は代理人のみ、2社は欠席でしたので特許庁の職員が代理出席でした。最初に商標課長が出願人、出願番号をそれぞれ読み上げ、くじの手順を説明します。立会人が2人、記録者が1人、くじを実施する人が1人、いずれも特許庁の職員ですが、前の席にいます。
くじは最初に、全員でじゃんけんをしてサイコロをふる順番を決めます。6人もいると何度かあいこになりましたが、そこで私は1番になりました。この時点で「ついてる」と思いました。

次に、二つのサイコロをふって数の多い順に順位を決めます。私は最初でしたが、「1」と「4」、つまり合計で「5」を出してしまいました。一番低い数字でした。同じ「5」の出願人がいて5位タイとなりましたので、再度じゃんけんをしたところ、また私が勝ちました。そこで私が先にサイコロをふり、私の数の方が大きかったため、結局サイコロでの順位は5位に決定しました。

次に、サイコロでの順位に基づき、11種類の色の玉の中から好きな色を決めます。これはお客様に選んでもらいピンクとなりました。
各社の玉を集めて、商店街の福引きで使うようなあのガラガラポンとやる「くじ引き器」の中に入れます。このくじ引き器を回すのは特許庁職員で、我々は玉が出てくるのを待つだけです。

最初は残念ながらオレンジが出ました。そして次にピンクが出ました。つまり1位を逃し、我々は2位となったのです。一瞬、失敗したと思いましたが、実際には大丈夫でした。6社のすべてが相互に競合するわけではなく、弊所のお客様はA社の商標とだけ競合しているので、我々はA社にだけ勝てばよいのでした。A社の玉が出たのは我々より後でしたので、結果的に、お客様はくじ引きに勝ったというわけです。

以後、くじの順番で、商標出願の審査が行われることになります。これで自動的に登録になるのではありません。実際には色のみの商標というのは、色が独占されてしまうのですから非常に慎重に審査されていて、識別力なしとして拒絶される例がほとんどです。登録が認められるには、識別力があることを出願人が証明しなければならず、それは大変難しいだろうと思います。このくじが開催された2016年10月現在、日本では登録となった事例はありません(※)
ちなみに、お隣り韓国では、1件だけ登録になった色彩のみの商標があるそうです。それは、熊の形をしたグミのお菓子のHARIBOの金色だけだそうです。

今回初めてくじ引きに参加し、「公正な方法によるくじ」が、じゃんけん、サイコロ、ガラガラと3段階で行われるということにびっくりしました。また、弁理士として一生に一度体験できるかどうかという非常に珍しい手続きに参加できた上に、よい結果が出せたことを大変うれしく感じました。

(※) 2017年2月28日付けで特許庁は、色彩のみからなる商標について、初めて2件の登録を認める旨の判断をしました(経済産業省ホームページ参照)。

2017年1月発行 第108号

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